すべての業者が上限価格を提示した大阪府柏原市発注工事の異常な入札で、大阪地検特捜部が4日、関係業者の聴取に乗り出した。予定価格の公表を逆手に取られた形の岡本泰明市長は記者会見し、「なめられた」と憤りをみせた。一方で参加業者は「これは一揆」と窮状を訴えた。
「えらいなめたことをしてくれる。捜査の進展を見て行政処分を検討したい」。4日午前、岡本市長は問題の入札参加業者への不快感をあらわにした。市は02年度から、上限価格にあたる予定価格と最低制限価格を事前に公表してきた。業者が担当職員らと癒着し、入札情報を聞き出そうとする動きを封じる目的だった。近年はほとんどの工事で、旧来の談合が成立しない「たたきあい」が生じ、最低制限価格を示した業者間でのくじ引きになっていた。ところが、今度は一転して上限価格の同額入札が相次ぎ、今年度からは予定価格を事後公表にした。
「予定価格で受注しても、利益は工事金額の5%程度。市の価格設定が低すぎる」。問題の入札の3件に参加した市内の業者はこう話した。資材や原油高騰の影響で、金属製の水道管や車のガソリン代といった工事コストが上がり続け、利益を圧迫しているという。別の参加業者は「工事金額が安すぎて、息もできへん。予定価格通りの入札は『やってられへん』という業者の一揆では」とこぼした。
だが、予定価格通りの落札だと税金がより多く使われる。別の工事1件を含め、市が公正取引委員会に「不正の疑いがある」と報告した11件では予定価格と最低制限価格の差額が計3335万6千円にのぼった。
談合事件が相次ぎ、予定価格の事前公表制を導入する自治体が急増したのは00年ごろから。鈴木満・桐蔭横浜大学法科大学院教授が人口10万人以上の自治体を対象に04年に実施したアンケートでは、61%が予定価格を事前に公表していると回答した。柏原市のケースについて、鈴木教授は「もうけを1円たりとも減らさず、業者間で仕事を分け合うことで利益を確保しようという構図ではないか」と指摘。参加業者がいずれも市内の業者だったことを挙げ、「市外の業者も広く参加させ、競争原理が働く入札制度にしていなかったことが最大の問題」と話した。