命守りたい 名古屋で昨年度殺処分400匹…犬はゼロ
猫カフェ人気や関連本の出版で猫ブームが続く中、飼い主がいない猫の殺処分をどうなくしていくかが課題になっている。2015年度に全国で殺処分された猫の数は犬の4倍を超えている。名古屋市では16年度に犬の殺処分がゼロだったのに対し、猫は約400匹が命を絶たれた。収容された猫の大半が飼い主不明なうえ、不妊去勢手術も追い付いていない事情が背景にある。関係者は「安易な餌やりはやめて」などと訴えている。【横田伸治】
餌やりで繁殖、去勢手術追いつかず
名古屋市動物愛護センターによると、猫の殺処分は1000匹超だった14年度以前と比べて減っているものの、15年度も873匹が殺処分された。一方、犬は13~15年度で数十匹にとどまり、ふるさと納税による収容犬の支援が始まった16年度は初のゼロを達成した。
犬は狂犬病予防法で飼い主らによる管理が義務付けられているのに対し、猫は飼い主に結び付く「戸籍」がなく、放し飼いも禁じられていない。15年度で名古屋市に収容された犬の4割超が飼い主に返還されたが、猫の返還率は1%未満。人が安易に餌を与えることも影響し、野良猫が繁殖し続け、悲劇を生んでいる。
市は13年度、猫の繁殖抑制が殺処分の減少につながるとして、野良猫に定期的に餌を与える人に対し、不妊去勢手術費用の半額(1万~2万円)を援助する制度を始めた。ただ、16年度の利用は1037件で、センターに収容された猫の数(約1200匹)を下回った。収容された猫の6割は離乳前の子猫で、数時間おきの授乳や排せつの補助が必要。しかし、センターのスペースや人手は足りない。
市はふるさと納税による支援対象を今年度から猫にも広げ、対応を強化した。ただ、根本的な解決には市民の意識改革も必要で、センターの鳴海大助・愛護指導係長(45)は「1匹への安易な気持ちの餌やりが、数十匹の命を奪うことになる」と話す。
センターから猫を引き取り、無償で飼い主を探す市民団体「花の木シェルター」(名古屋市西区)の阪田泰志代表(33)は「民間の保護施設を増やせば殺処分をゼロにできるが、資金も人も足りない」と話す。阪田さんは「多くの人が殺処分の実態に目を向けるべきだ」と訴えた。
全国の殺処分猫は犬の4倍
環境省によると、殺処分された犬と猫は2015年度に全国で計8万2902匹。犬の1万5811匹に対し、猫は4.2倍の6万7091匹に上る。13年9月施行の改正動物愛護法は、自治体が業者や飼い主の身勝手な理由で犬猫の引き取りを求められても拒否できると明記した。殺処分はここ10年間で4分の1に減った。