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  3. サイボウズ ✕ リブセンス ~ デザイナーがデザインだけしてちゃいけない理由、これからのデザイナー像について ~ 転職ドラフトビールを片手に語りあうシリーズ vol.1

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(写真上左から サイボウズ 柴田哲史氏、サイボウズ樋田勇也氏、リブセンス永尾謙明氏、
写真下左から リブセンス渕上航氏、サイボウズ篠原愛美氏)

第1回「デザイナードラフト」を前に、サイボウズ、リブセンス両社のデザイナーによる座談会を開催。転職ドラフトビールを手土産にサイボウズのオフィスにお邪魔し、デザイナーの働き方やキャリアについて、赤裸々に語り合った。

結局、デザイナーは事業部に属するべきなのか?専門部署に属するべきなのか?

渕上: 本日はよろしくお願いします!まずは自己紹介から。リブセンスで転職ドラフトとデザイナードラフトのデザイン担当しています渕上です。

永尾: 同じくリブセンスの不動産ユニットでDOOR賃貸とIESHILのデザインを担当してます永尾です。

篠原: サイボウズで主にワークショップを担当しています篠原です。新しい製品のアイデア出しなどを行っています。

樋田: サイボウズでkintoneのデザイナーをしてます樋田です。篠原と僕は2人とも約1年前に転職した中途社員です。

柴田: サイボウズでデザイングループのマネージャーをしています柴田です。転職してほぼ2年ですね。やっていることのメインは野球です。

一同: (笑)

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渕上: ではさっそくですが、サイボウズのデザイナーさんはどんな体制で仕事しているんですか?リブセンスにはデザイン部がなく、各事業部にデザイナーが所属しています。

樋田: サイボウズにはデザイングループという横串の組織がありますが、デザイナーは各製品のチームの中にアサインされます。だから席もバラバラですね。

渕上: リブセンスと似ていますね。

柴田: 体制って日本も海外もだいたい同じなんですよ。それぞれの事業部に分かれて数年やるとデザイナーでまとまる。それで数年やって、また分かれる。その繰り返しが典型です。MicrosoftやAdobeもそうですしね。事業部に分かれると、知見がバラバラになってしまうので、あるタイミングでまとめる力が働くんだと思います。

渕上: リブセンスも以前はデザイナーの組織があったんですが、もっと事業にコミットしたいという理由から、事業部配属に変わりましたね。知見のまとまりとそういう意志の繰り返しが起こるんですね。

樋田: 今デザイナーは何人くらいいらっしゃるんですか?

渕上: 10人くらいですね。事業部の規模によって2人入っているところもありますが、新規や規模が小さいところは1人で回しています。

柴田: サイボウズも10人くらいです。製品ごとにカラーがあって、歴史があります。正直、変な伝統もあります(笑)。

永尾: どの会社でもありますよね(笑)

柴田: そのため今は「新しいやり方をどう取り入れて開発していくか」が一番のポイントなんです。古いやり方のままだと、世の中の新しい流れについていけないじゃないですか。だから新しいスタイルを探しつつ、どれが一番サイボウズらしいのかを模索している最中です。篠原がその模索担当としてワークショップを開き、新しい製品のアイデア出しをしてくれています。

渕上: ワークショップはどういう経緯で始めることになったんですか?

篠原: 最初は「Garoon」という製品の改善のために、「営業さんの声を幅広く聴いてみたらどう?」という意見が出たので、ワークショップを大々的にやってみることにしたんです。すると新しい課題の発見があり、営業サイドからも「こういうワークショップいいね!」という声があがって大成功!「だったら他の製品でもやってみようか」と広がっていきました。

柴田: それまではモノづくりは開発の中で閉じていたんですよ。営業や販売系の人たちがなかなかモノづくりに参加できなかったので、それに門戸を開きました。ちなみにそのさらに前で言えば、サイボウズのデザイングループは、3〜4年くらい前までは下請け作業だったんですよ。

渕上: 社内受託的な?

柴田: そうです。「アイコン作って」とか「ボタン作って」とか。僕が入社した時にそれを見て、これじゃダメだ、と感じました。だから「これからはプランニングにシフトしよう」提案しました。そのやり方の一つがワークショップです。

渕上: なるほど。ワークショップで開発の仕方も変わったんですか?

柴田: コアな部分は、PM(Product Manager)、デザイナー、エンジニアが固めるのは変わらないですが、アイデアからプロトタイプを作るスピードが格段にアップしましたね。今はそれをさらに洗練させている段階です。先月はサンフランシスコのオフィスでもワークショップをやりました。

永尾: PMの方はどういう関わり方をしてるんですか? 例えば何か施策をやるって時に、誰が企画をまとめてドライブさせていくのかとか。デザイナーがやるのか、それともPMがやるのか、で言うと?

樋田: 製品については責任者はPMなので、基本PMがやります。ただ、PMのアイデアの見える化やタネ集めをデザイナーが一緒にしている感じです。

柴田: デザイナーはPMに付いてサポートして、PMがやりたいことをガーっと社内・世の中に広げる、というイメージです。PMって見せ方がちょっと下手じゃないですか。一般的に。

一同: (笑)

柴田: それを絵的に、分かりやすく、しかも魅力的に見せる役割をデザイナーが担っているんです。

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サイボウズの評価基準と、正当に評価されるための社内ドヤリング

渕上: サイボウズさんといえば評価が優れているイメージがありますが、デザイナーの評価ってどうしているんですか?

柴田: 基本的にマネージャーが半年ごとに評価をします。毎週面談をしているので、そこで話を聞きつつ、半年に1度ちゃんと評価します。そのときに、給料やキャリアの話もしていますね。

渕上: リブセンスは、事業部で評価されているんですよ。だから他のデザイナーの評価もあまり把握してないし、全社でバランスが取れているかというと正直不明です。

柴田: 一般的にデザイナーってなかなか良い評価を受けづらいですよね。 サイボウズは「社外の市場価値を基準に給料を決める」ってのが大前提なんです。それは、世の中で通用する人になって欲しいという想いからです。サイボウズだから評価される、サイボウズだから評価されない、はおかしいと思うんです。でも、日本のデザイナーの一般的な給料ってかなり低いんですよね。だからそれをあんまり持ち込むと給料が下がっちゃうので、成果をアピールするようにしています。

永尾: アピールとはどういう風にですか?

柴田: やったことを半年ごとにプレゼンして、見せびらかすんです。それで自分で自分の価値を上げるんですよ。

永尾: プレゼンか、いいですね。ポートフォリオみたいな形でまとめるんですか?

柴田: パワポのスライドを作って、グダグダ説明は書かずに、写真と、何を何回やったか、どれだけ成果を出したかをドーンと出す感じですね。緊張をぐっとこらえて、ドヤ感を出しながら(笑)

永尾: ドヤ感….なかなか難しいですね(笑)

柴田: 一般的なデザイナーって、絵的に表現するのは得意なんだけど、自分をアピールするのって下手じゃないですか。しかも金額交渉は特に。そこは今後生き残るスキルとして身につけた方がいいかな、と僕は思っています。

渕上: 例えば施策で、数字が出ていたら交渉しやすいですが、受託系の会社の人って、言えることが「作りました」ってだけのパターンが多いじゃないですか。あれだと評価を上げにくいですよね。

永尾: 僕はその辺を気にして今は、自分で企画を考えてABテストして、これだけ数値が上がったぞって出すところまでしています。リブセンスはそれができる会社ですしね。その方が、これだけ売上が上がりました、事業に貢献しましたってしっかり伝わるんじゃないかなと思うんです。

柴田: その方が絶対いいと思います。サイボウズでも、製品の画面を改善しました、成長が何割です、作る時間がこんなに減りました、と伝えています。ユーザビリティテストの結果も使えますしね。

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重要なのは、デザイン能力だけでなく「デザイン」・「リサーチ」・「プロトタイプ」の3本柱

渕上: みなさんは今後身につけたいスキルはありますか?

篠原: 私は画面を作るスキルはある程度持っていると思っているんです。だからそれ以外のスキルを身に着けたいですね。例えばワークショップ、プレゼンスキル、プロトタイプ作成スキル。あとはアジャイルのスクラムマスターも興味があります。今までやったことないものを積極的にかじってみて、自分に合いそうだったら磨いていきたいなと思っています。

樋田: 僕は前職でデザインとコーディングとディレクションをやっていました。サイボウズではプロトタイピングをやっているので、次はストーリーテリングを身に着けたいですね。それと、コーディングの経験があるし、世の中的にもコードからデザインを作る流れが海外を中心に来ているので、その辺を追っていこうかなと思っています。

永尾: 僕は元々Webデザイナーなんですけど、コーディングしてこなかったタイプなんです。リブセンスに入って、今はフロントエンドもやっています。結構楽しいんで、その技術を磨いていこうかな、と。それと企画力も上げて、数値に強いデザイナーになりたいなと思っていますね。SQLもそろそろやらないとなと。

一同: SQL!

永尾: リブセンスが面白いのは、僕の上司は営業なんですけど、SQL書けるんですよ。他にもエンジニアじゃなくても書ける人が何人もいます。越境の文化が根付いているので、他の職種のスキルも身に付けやすいんです。

渕上: 確かに、リブセンスではSQL一般的ですよね。僕も1回開きましたもん。開いてすぐ閉じましたけど(笑)。

一同: (笑)

柴田: サイボウズとしては、ここ2年の大きな流れとして、「デザイン」と「リサーチ」と「プロトタイプ」、この3つのスキルをちゃんと磨いていきましょうという方針でやってきました。

永尾: 「デザイン」と「リサーチ」と「プロトタイプ」ですか。

柴田: これからはデザインだけじゃだめだと思っています。ちゃんとユーザーリサーチをして、その結果を見て反映しないと。最近はプロトタイプを作り、リサーチをするというサイクルが上手く回るようになってきたので、今後はそのプラスアルファも大切ですね。動画や、グローバル展開とか。でも基本は「デザイン」と「リサーチ」と「プロトタイプ」です。

永尾: どんなリサーチ手法やツールを使っているんですか?

柴田: リサーチは、大きく分けて「プランニングのためのリサーチ」と「製品検証のためのリサーチ」を行っています。例えば、ワークショップやヒアリングをして新しい機能やアイデアを創り出すのが、プランニングのためのリサーチ。一方、製品検証のためのリサーチは、主にユーザビリティテストです。何回も繰り返し、製品の良い点・悪い点を洗い出して、改善していく活動です。

プロトタイピングのためにツールは、今はいろいろ使っています。Prott、Flinto、Sketch、InVision、Adobe XDなど。まだいろいろなプロトタイプツールが進化しているフェーズなので、すべて使いこなして、良し悪しをわかった上で、だんだんと絞り込んでいこうと考えています。

渕上: リサーチに力を入れるようになって、何が変わりました?

樋田: ユーザビリティテストの結果から、こういう機能を作りましょう、改善をしましょうって話をするようになりましたね。ちゃんと根拠立てて説明ができるようになりました。

柴田: サイボウズにはユーザビリティテストのためのラボもあるんですよ。マジック・ミラー越しに観察もできます。また、ラボを使うと時間がかかるので、もっと早くできる、「ちょっと2、3人捕まえてヒアリングして」という形も推進しています。これは習慣としてだいぶ定着してきましたね。

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デザイナーが歩む、これからのキャリアパスについて。

樋田: デザイナーのキャリアパスはありますか?

渕上: リブセンスは人数が2人からようやく10人になった段階なので、正直なところまだないですね。人数が増えてくると色々と課題が出て、キャリアパスもできていくと思いますが。現状では事業部でキャリアを考えていくしかないって感じですね。 サイボウズさんだとその辺はどうなんですか?キャリアプランやロールモデルはありますか?

樋田: うちもデザイナー自体そんなにまだ層がいないので。

柴田: でも2年前まではそんな概念すらなかったんです。そこに僕が入ってきて、「それじゃあ給料上がらないよ」って話をしたんです。理想的なキャリアプランとしては、デザイナーからPMってのがいちばんよいと思っています。あとはプランナー。そして、そのために必要なのがリサーチやプロトタイプ作成能力、周りを説得するプレゼン能力。これを身につけるといいよって話はよくします。

渕上: エンジニアだとどんどん需要が高まって年収も上がっているイメージあるんですけど、デザイナーはあまり上がっていない気がしていて。その辺ってどう思いますか?

柴田: 世の中のデザイナーと同じことをやっていたらダメですよね。同じ評価になっちゃう。「それとは違いますよ」というのを売りにしつつ、いかにそれを製品に反映させ、それを周りにアピールするかが大事かなと。自分の価値を自分で上げていく意識が必要だと思います。

樋田: 海外だとUXデザイナーの評価や需要って上がってますよね。それは上流から入って、ビジョンを共有するところからやっているからなのかな、と思っています。

柴田: 例えば今から30年くらい前に、MicrosoftではすでにデザイナーやリサーチャーがPMやエンジニアと同等にリスペクトされていました。プランニングの段階からPMといっしょにリサーチをしたり、プロトタイプを作ったりしていました。それくらいデザイナーやリサーチャーがしっかりとした価値として認められていたんです。でも、当時の日本の企業の実情を聞くと、それとは全然違って、すでに仕様が固まってからデザインの依頼が来たり、リサーチで悪い評価が出ても、もう修正できるタイミングじゃないから2年後に改善しようといった感じでした。組織として、10年以上の開きを感じましたね。で最近、なんとか数年くらいまで縮めたと感じています。だけどなかなか、エンジニアと比べると雲泥の差じゃないですか。

渕上: そうですね、それはデザイナードラフトを作っていても感じます。

柴田: だからもっと大きな流れを作らないといけないと僕は感じています。あるものを磨くだけではなく、新しいものをどんどん作っていくべきだと。デザイナーの力で、今までゼロだったものをイチにしていくことができてくると、ちゃんと認められていくと思います。

永尾: デザイナーの給料って今後上がっていくと思います?

柴田: 上げないといけないと思います。サイボウズでは今後エンジニアに負けないくらい成果をアピールして、上げていきたいですね。それでいい人をどんどん雇い、海外にどんどん進出します。新卒にも市場評価を取り入れていますしね。

永尾: サイボウズのみなさんは自分の年収に満足していますか?

篠原: 個人的にも今の年収に満足しないようにしています。満足してしまうと、そこで自分の成長が止まっちゃう気がするので。

柴田: 倍くらいを目指すのが大事だと思います。それを目指してスキルを磨きながら実績を積み上げていくことが年収を押し上げていくと思いますよ。

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サイボウズが取り入れる「複業」。社外では、よりデザイナーとは違う世界に挑戦できる。

渕上: みなさんはずっとプレイヤーでやっていこうという気持ちなんですか?

樋田: いや、やりたいと思った時にやりたいことをできればいいな、と。

篠原: いろんな縁もあったり、突発的なこともあったりして、なかなか思うようにいかないことも多いと思うんです。それを「なんで思う通りにいかないんだ」って思うんじゃなくて、楽しんで自分の幅を広げられればいいかなというスタンスがいいのではと最近は思うようになりました。

渕上: 僕も「転職ドラフト」チームに入るまでは、こんなキャラクターとか作るとは思ってなかったですからね(笑)

柴田: 自分の歩んできた道を、何かしら見える形に残せばいいんじゃないかと思います。ただいろんなことをやってるだけだと何も残らないから。

樋田: その意味では、サイボウズのデザイングループは、最近、社外アピールに力を入れています。ブログや外部LTもやるようにしていますよ。

柴田: 自分の名前で売り出すことが大事です。例えば「どこどこの会社の誰々です」で今まで通用してきたけど、会社の名前がなくなると途端に相手にされなくなる人も多いですよね。だから「会社にいるうちに自分の名前を売れ」とメンバーには言っています。「サイボウズの樋田さん」じゃなくて、「樋田さんにお願いしたい」と言われるようになれと。これができれば、生き残っていける。「自分」をいかに売り込むかが大事です。

渕上: みなさん次転職するとしたらどんなことやりたいですか?どこを重視して転職します?

樋田: 前は「この会社にいるのもう限界だな」って感じで転職したんですが、次転職するとしたら、現状に不満があって転職するというよりは、能力を認められる形で転職したいです。

篠原: 私は複業したいです。サイボウズでは副業ではなく「複業」と呼んでいるんです。小遣い稼ぎのためというよりも、自分の持っているスキルを活かして、様々なコミュニティにコミットして、視野やネットワークを広げるとか、そういうことをしようという意味で「複業」なんですね。私はこれにとても共感していて、転職より、複業を何個かやって、デザイナーとは違う世界にちょっと足を踏み入れてみたいな、と思っています。

渕上: いいですね、そういう働き方の幅!

篠原: あ、そういう意味では私、LINEスタンプも作っていて。よかったら使ってください。ちなみに先月の売り上げは89円です(笑)。
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永尾: なかなか厳しい!(笑)

渕上: いいですね!ちなみに複業しようと思ったきっかけは?スキルを伸ばしたくてですか?

樋田: 僕は一人で受託していますが、「自分のコーディングスキルを忘れない」とか、「お客様との折衝を忘れない」とか、そういう理由でやっています。これって本業の方にもつながるので。機会が生きれば、と。

渕上: たしかに、複業から得られる開発スキルやクライアント折衝など経験も、サービスに還元できそうですね!

本日はありがとうございました!

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