コラム

佐藤琢磨選手のインディ500優勝は大変な快挙

2017年05月30日(火)16時10分
佐藤琢磨選手のインディ500優勝は大変な快挙

佐藤琢磨選手は世界三大レースと言われるインディ500で日本人として初めて優勝した Mark J. Rebilas-USA TODAY Sports-REUTERS

<白人保守層を象徴するカーレースで日本人選手が優勝を成し遂げたことは、「クールジャパン」の多様性を示す意味でも大きな功績>

インディ500優勝というのは大変な快挙です。何しろ時速350キロ以上の超高速で約3時間、全部で500マイル(約800キロ)にわたって接近戦を続ける過酷な自動車耐久レースで頂点に立ったのですから、これは大変な快挙です。

何といってもアメリカ人の大好きなモータースポーツの最高峰で、それがどのぐらいのインパクトがあるのかというと、野球ならワールド・シリーズ、NFLならスーパーボールのレベルでしょう。個人技で言うならゴルフのマスターズかもしれませんが、むしろそれを越えています。何しろ「インディ」の場合は収容人員35万人という巨大スタジアムで開催されますから規模が違います。

それにインディアナ州といえば「インディ500」というくらいの名物イベントで、5月のメモリアルデーの連休といえば「インディ」がアメリカのメインイベントになっています。

ただ、こうしたモータースポーツが好きなのは、アメリカの「白人貧困層=草の根保守=トランプ支持層」だけという側面もあります。このインディよりもう少し市販車に近い車両を使った「NASCAR」というカテゴリのレースも人気があり、全国にピラミッド構造のリーグがあって転戦する形態になっています。

この NASCAR はある種「保守的な白人層を象徴する」と言われ、反対に、東西の沿岸に住むリベラルには全く無関係なカルチャーと言っても良いわけです。プリウスに乗っている人には完全に「別の国の話」です。インディの場合は、規模もスピードも大会の権威も NASCAR とは桁が違うわけで、やはりそこで優勝するインパクトは大きいのです。

【参考記事】世界最高峰に立つ日本人女性冒険家の戦い

では、そんな「白人保守派の聖域」で日本人が勝ってしまったことで、何かリアクションがあったのかということですが、確かにデンバーの新聞「デンバー・ポスト」の記者が「日本人の優勝は不愉快」というツイートをして即クビになる事件が起きています。

ちなみに、この記者は父親が第二次大戦で日本と戦ったので、感情的になったと釈明していますが、SNSの世界で「レイシスト(人種差別主義者)」と言われて大炎上、新聞社は即刻「この人物は当社の人間ではなくなりました」と告知と同時に謝罪しています。デンバーといえば、中西部の中心都市ですが、今回の事例はあくまで個別の問題であり、あまり気にする必要はないと思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)、『アメリカモデルの終焉』(東洋経済新報社)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

ニュース速報

ビジネス

焦点:小池百合子は何を目指す、都議選乗り越えたその

ビジネス

インタビュー:都議選で改革加速に必要な議席欲しい、

ワールド

温暖化対策費用、ヒートアイランド現象で2.6倍増=

ワールド

豪政府、新銀行課税の支払い期日を3カ月延期

MAGAZINE

特集:得する中国、損する日米

2017-6・ 6号(5/30発売)

北朝鮮問題で習近平を「忖度」するトランプ。世界はますます中国のペースに?

グローバル人材を目指す

人気ランキング

  • 1

    なぜか再びアメリカで銀行がつぶれ始めた

  • 2

    駐米中国大使とも密通していたクシュナー氏

  • 3

    フィリピンが東南アジアにおけるISISの拠点になる?

  • 4

    内向型人間が自覚すべき、ストレスを感じる10のポイ…

  • 5

    トランプ政権がルクセンブルク首相のゲイ・ハズバン…

  • 6

    アルツハイマー病による死亡率がアメリカで急増

  • 7

    ネガティブになりがちな内向型人間にも、10の強みが…

  • 8

    北朝鮮問題で安倍首相「対話の試みは時間稼ぎに利用…

  • 9

    イギリス自爆テロで犠牲になった人びと 8歳少女や3…

  • 10

    1人の時間が必要な内向型、人と会って元気になる外向型

  • 1

    ヤマト値上げが裏目に? 運送会社化するアマゾン

  • 2

    メラニア夫人が手つなぎ「拒否」、トランプは弱っている?

  • 3

    「パスワードは定期的に変更してはいけない」--米政府

  • 4

    アリアナコンサートで容疑者拘束、死者22人で不明者…

  • 5

    なぜか再びアメリカで銀行がつぶれ始めた

  • 6

    北朝鮮危機が招いた米中接近、「台湾化」する日本の…

  • 7

    最凶な露フーリガン対策でロシアが用意した切り札と…

  • 8

    1人の時間が必要な内向型、人と会って元気になる外向型

  • 9

    ドイツが独自の「EU軍」を作り始めた チェコやルー…

  • 10

    駐米中国大使とも密通していたクシュナー氏

  • 1

    ディズニーランド「ファストパス」で待ち時間は短くならない

  • 2

    ヤマト値上げが裏目に? 運送会社化するアマゾン

  • 3

    性的欲望をかきたてるものは人によってこんなに違う

  • 4

    北朝鮮をかばい続けてきた中国が今、態度を急変させ…

  • 5

    シャチがホホジロザメを餌にし始めた

  • 6

    性科学は1886年に誕生したが、今でもセックスは謎だ…

  • 7

    ニクソンより深刻な罪を犯したトランプは辞任する

  • 8

    「男と女のどちらを好きになるか」は育つ環境で決ま…

  • 9

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 10

    習近平の顔に泥!--北朝鮮ミサイル、どの国への挑戦…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

日本再発見 「外国人から見たニッポンの不思議」
ニューズウィーク試写会「しあわせな人生の選択」
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 別冊

0歳からの教育 知育諞

絶賛発売中!