文科省「確認できない」崩さず 前文科次官発言
野党、一斉に反発 改めて調査要求
安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人加計(かけ)学園(岡山市)が国家戦略特区で獣医学部を新設する計画を巡り、文部科学省が内閣府から「総理のご意向」と早期開学を促されていたことが記された文書について、前川喜平前事務次官が「文書は本物だ」と発言したとの報道を受け、その存在を改めて調査するよう求める声が強まっている。25日の国会審議で、「確認できない」との立場を崩さない文科省に野党が一斉に反発した。
「辞職された方の発言なのでコメントする立場にない」。25日午前の参院文教科学委員会。前川氏の発言への見解を問われ松野博一文科相は突き放した。
質問に立った民進党の斎藤嘉隆氏は、前川氏が文科省と内閣府が特区認定を巡るやり取りをしていた際の現職の事務次官だった点に触れ「もはや『怪文書』として無視できる代物ではなくなっている」とし、改めて文書の再調査を求めた。だが、松野氏は「調査した結果、確認できなかった」と従来の答弁を繰り返した。
共産党の小池晃氏は、国家戦略特区諮問会議が昨年11月に獣医学部の新設を認める規制改革を決定する前日、文科省が学園の計画は「不十分」と省内でやり取りしていたことを示す新文書について「調査すべきだ」と追及。これにも松野氏は「一般的に(学部)設置に関する相談は受け付けているが、内容を公表しているわけではない。改めて調査する必要はないと考えている」と応じなかった。
同委員会に先立つ理事会では、民進党が前川氏を参考人招致するよう求めたが、与党側が反対している。
かつての事務方トップの発言を受け、文科省では困惑の色が広がっている。ある幹部は「(前川氏の)真意が分からないし、かつて事務方のトップにいた人間の行動とは思えない。古巣を揺さぶって楽しいのか」と吐き捨てた。
別の職員は「部下思いで尊敬できる上司だった。後輩を困らせるようなことをするような人ではないので驚いているが、何か信念があってやっているのだろう」とおもんぱかった。【伊澤拓也】