トランプ大統領が5月10日にホワイトハウスでロシア外相らと会談した際、過激派組織「イスラム国」に関する機密情報を漏らしていたことがわかった。ワシントンポスト紙が伝え、BuzzFeed Newsの取材に政府関係者2人が事実だと認めた。
ロシアのラブロフ外相(左)とキスリャク駐米大使(右)と会談するトランプ大統領=5月10日、ホワイトハウス AP
ワシントンポスト紙によると、トランプ大統領は、同盟国から提供された機密情報をその国の同意を得ないまま漏らした。国名は明らかになっていない。対イスラム国作戦を巡って、この同盟国との連携に支障を来す可能性がある。
情報を漏らした相手は、ロシアのラブロフ外相とキスリャク駐米大使。会談にはその側近らも同席していた。
大統領は「同盟国とも共有していない情報をロシア大使に明らかにした」といい、米情報機関の分類で最高レベルの機密も含まれる。
会談で、大統領は予定されていた内容から離れ、機内持ち込みのノートパソコンによるイスラム国の攻撃の危険性について詳細を説明したという。
機密情報の取り扱いやその漏洩が重大な結果を及ぼす可能性について大統領は考えが至らないのではないかとする当局者の懸念も伝える。
その内容は衝撃的だ。
会話を知る当局者によると、トランプ大統領は、迫り来る脅威について内部情報を持っていることを自慢しているようであり「私には素晴らしい情報機関がある。毎日、私に機密情報を説明してくれる人たちがいる」と話したという。
ボサート大統領補佐官(国土安全保障・テロ対策担当)は、ことの重大性を理解したとみられ、中央情報局(CIA)長官らに連絡をとったという。
政府当局者はBuzzFeed Newsの取材にこう答えた。「すでに報じられている内容よりも、はるかに状況は悪い」
怒号が
報道を受けて、政権幹部らはホワイトハウスに集まった。バノン首席戦略官、スパイサー報道官、サンダース副報道官らがいる部屋からは、記者に聞こえるほどの怒号が流れた。ホワイトハウスのスタッフはテレビ音量をあげ、怒号が聞こえないようにした。
WH comms staffers just put the TVs on super loud after we could hear yelling coming from room w/ Bannon, Spicer, Sanders
— Adrian Carrasquillo (@Carrasquillo)
BuzzFeed Newsの取材に対して、CIAはコメントせず、国家安全保障会議(NSC)からは返答がなかった。
政権は反論
報道を受けて、ティラーソン国務長官は声明を発表。会談では「テロ対策を巡る共通の取り組みや脅威」など「広い議題」を取り扱ったが、「情報源や方法、軍事作戦については話していない」と述べた。
マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も声明で「これまで公になっていない情報源や情報収集の方法、軍事作戦については一切明かさなかった」と反論した。
会談に同席していた同補佐官。ホワイトハウスの外で記者団に対し「情報源も情報収集の方法も話されていない」と再び強調した。
パウエル大統領副補佐官(国家安全保障担当)は「記事は誤りだ」とする声明を発表。「大統領は両国が直面する共通の脅威についてだけ話した」と反論した。
つまり、誰かが嘘をついている。
反応は
報道を受け、共和党のコーカー上院議員(上院外交委員会委員長)は記者団に対し「間違いなく悪循環にある。起きていることを把握する方法を見つけなければらない。規律を守らないことから生まれるカオスによって、懸念される状況が作られている」などと話した。
共和党のライアン下院議長のアンドレス広報担当は「話された内容を知るすべはない。だが、国家の安全を守ることが第一だ。議長は政権から事実の十分な説明を求める」と話した。
共和党のグラハム上院議員は「事実ならば、厄介だ…言えるのはそれだけだ」と懸念を表している。
民主党のウォーナー上院議員は「事実なら情報機関への侮辱だ。情報源や方法を危険にさらすことは許されない。特にロシア側とは」とツイートした。
If true, this is a slap in the face to the intel community. Risking sources & methods is inexcusable, particularly… https://t.co/pheWzFNv4a
— Mark Warner (@MarkWarner)
米国科学者連盟(FAS)で国家機密に関するプロジェクトを率いるスティーブン・アフターグッド氏はBuzzFeed Newsの取材に、トランプ大統領の漏洩が事実だったとしても、違法ではないだろうと指摘する。その理由は皮肉だ。
「おそらく法的な問題はないだろう。というのも大統領が機密情報を管理するのであり、根本的には、機密情報を開示したり、機密解除したりする無制限の権限を持つのだから」
この記事は英語から編集しました。