誰が?なぜ?図書館の学校史 切り取り被害の謎

誰が?なぜ?図書館の学校史 切り取り被害の謎
小中学校や高校の歴史をまとめた学校史が、自治体などの図書館で閲覧できるのを知っていますか。図書館で、母校の学校史を開くと、自分が写った懐かしい写真が出てくるかも知れません。
今、その学校史や記念誌などが切り取られる被害が全国各地で相次いでいます。しかも、なくなったページにはある共通点があります。いったい誰がなんのためにこんなことをしているのでしょうか。
発端は岐阜県図書館でした。郷土資料コーナーの本棚に並んだ本が乱れていることに職員が気付き、整理しようとたまたま本を開いてみたところ、学校史の中身が切り取られていることに気づいたのです。
調べたところ、昭和40年代からおととしにかけて、岐阜県内の小中学校や高校が発行した学校史や記念誌10冊の合わせておよそ130ページが切り取られていたほか、岐阜市立図書館でも同様の被害が見つかりました。
これを受けて各地の図書館も調査に乗り出しました。愛知県では8つの図書館で合わせて93冊の被害が見つかったのをはじめ、10日までに三重県や静岡県、富山県、石川県、福井県、それに香川県や秋田県の合わせて9県でも学校史や記念誌の一部が切り取られる被害が見つかりました。

被害は全国各地の図書館で…

発端は岐阜県図書館でした。郷土資料コーナーの本棚に並んだ本が乱れていることに職員が気付き、整理しようとたまたま本を開いてみたところ、学校史の中身が切り取られていることに気づいたのです。
調べたところ、昭和40年代からおととしにかけて、岐阜県内の小中学校や高校が発行した学校史や記念誌10冊の合わせておよそ130ページが切り取られていたほか、岐阜市立図書館でも同様の被害が見つかりました。
これを受けて各地の図書館も調査に乗り出しました。愛知県では8つの図書館で合わせて93冊の被害が見つかったのをはじめ、10日までに三重県や静岡県、富山県、石川県、福井県、それに香川県や秋田県の合わせて9県でも学校史や記念誌の一部が切り取られる被害が見つかりました。

学校史は重要な資料 全国調査へ

学校史や記念誌は地域の歴史がわかる貴重な資料で、同じものを複数手に入れることは難しく、地域の図書館としては最も大事な資料の一つと位置づけているだけに関係者は大きなショックを受けています。

全国の図書館のおよそ80%が加盟する日本図書館協会では、被害が大きく広範囲にわたっている今回の事態を重く見ておよそ3200ある全国の公立の図書館で学校史や記念誌に同様の被害がないか緊急調査を行う方針です。

誰が?なぜ? 謎の被害

それでは、いったい誰がなんのために学校史や記念誌を切り取ったのでしょうか。

被害が大きかった愛知県図書館と岐阜県図書館に取材したところ、なくなったページは刃物で切られていたり、手で破られていたりとさまざまです。
さらに被害が出ている地域が広い範囲で、年代もばらばらなことなどから、1人で行ったとは考えにくいとしています。
そして、切り取られたのは、いずれも学校のクラスの集合写真や体育祭など学校行事の写真のページが多いという共通点があります。ページの中の写真だけ切り取ったケースも目立っています。なぜ写真のページばかりが切り取られたのか関係者も首をかしげています。
「自分が写っていたので写真が欲しかったのか、もしくは写っているのが嫌で切り取ろうと思ったのか。はたまた他の人の写真が欲しかったのか、いろいろ想像してみますがわかりません。とにかく館内閲覧のみで借りられないから、ここでもらっていこうと考えたのでしょうか」(愛知県図書館・坂野久子課長)

「どういう意図かわからないが、切り取られた写真に写っていた人も、気分がよくないと思う。ほかの利用者や、将来、利用する人のことも想像していただきたい」(岐阜県図書館・渡辺基尚主査)

ネットでは、今回の謎の大きい事件に「気持ち悪い」「学校に恨みを持つ人の犯行?」とか「パスポートの偽造やネットのアカウント作りに使われるのでは」といった不安の声も投稿されています。

図書管理の課題も浮き彫りに

さらに取材を進めると、被害が確認されたのは最近ですが、実は長期間にわたっている可能性も見えてきました。
今回被害を受けた学校史や記念誌は、ほとんど館内での閲覧のみになっていました。このため館内で切り取られたと見られていますが、常に巡回しているわけでもなく、犯行に気付くのは難しいとしています。

さらに、館内のみ閲覧できる本は、貸し出している本に比べ、破損に気付きにくいと言います。被害の大きかった愛知県図書館の坂野久子課長はこう話しています。

「貸し出している本であれば、返却の際にチェックもできますが、館内閲覧の本はそれがありません。年に一度の本の総点検の日もありますが、本の有無は調べても、一つ一つめくるということはないのです。本棚もたくさんあるため死角も多く、ふだんから職員の目が届かなかったこともあると思う」

チェックする機会が少ない「館内のみ閲覧」という形を取っていることで被害が広がっていても気付かなかった可能性もあるのです。

対策にジレンマも…

日本図書館協会の西野一夫専務理事は、早急に実態を把握し、全国の図書館とも情報共有を図って取るべき対策を検討したいとしています。
「今回は警察に被害届を出す図書館も出るなど被害も大きく、大変驚いている。図書館の本は次の世代に伝えるものを共同で使っている国民の財産です。作った人の気持ちを考えると胸が張り裂ける思いで、絶対やめてほしい」

被害を受けた図書館の中には、これまで館内で自由に閲覧できていた学校史や記念誌を書庫に移し、請求があったときにのみ、本を出すよう扱いを変える対策を取るところも出てきています。
資料を保存するという観点からは安全ですが、私たち利用者は自由に手に取って見ることはできなくなります。一部の人の心ない行為のために地域の財産とも言える学校史や記念誌が図書館の本棚から消えてしまうことにもなりかねず、関係者は頭を悩ませています。