ビール専門店でおいしいビールが飲めるのは当たり前。でも、それ以外の飲食店でもいろいろとおいしいビールが飲めるようになったらいいのに、とよく思うのです。
その理由は、この連載を読んでいただいていればわかると思います。ビールは多彩な味わいが魅力のお酒で、どんな料理にも合うスタイルがあるからです。寿司屋で、ラーメン屋で、ピルスナー以外のビールがあればペアリングがいろいろ楽しめるのに……と。しかし、大手ビールのピルスナーはともかく、いわゆるクラフトビールを扱っている飲食店はまだまだ少ないのが現状です。
それでも、クラフトビールをメニューに取り入れている、ビール専門店ではない飲食店があります。この連載の第1回、「『とりあえずビール派』のビール観を変える6つのビール専門店」で紹介したビール専門店とは違った意味で、最先端を行っているお店かもしれません。東京、神奈川、埼玉エリアのみになるのですが、機会があればぜひ訪れてみてください。
あじわい回転寿司 禅
小田原駅からバス10分、山王バス停下車徒歩2分
(神奈川県小田原市東町2-1-29)
小田原にある回転寿司屋です。最初に言っておきましょう。この店のためだけに小田原に行っても損はないと思います。というか、行ってください。私もcakesで紹介するにはまた訪れないと……と思い再訪しました(という理由を見つけて単に行きたかっただけ)。
土日はかなり混み合うので、平日の昼過ぎを狙って行けばいいだろうと思い、15時に着いたら「本日は17時からの営業となります」の張り紙。こんなこともあるので、事前に電話で確認しておきましょう(予約は不可)。まわりに時間をつぶせるようなところはないので、小田原駅に戻ってコーヒーを飲みながら開店時間を待ちました。
そして17時。小田原駅からはバスで10分弱。西湘バイパスの横で、海もすぐそこです。
一見普通の寿司屋のようにも見えても、入口横にはベルギービールやワインの大瓶が。
実はこの店、ただの寿司屋ではありません。国内外のクラフトビールやワイン、日本酒をそろえているだけでなく、フォアグラのソテー、マグロのテールステーキ、イベリコ豚の生ハムなど、寿司屋とは思えないメニューを提供しているのです。お店の外壁には「Bistro回転寿司」とも書いてあり、回転寿司屋というよりもまさにビストロ。
一部からは「変態回転寿司」などと敬意を込めて言われているようですが、決して奇をてらっただけの店ではありません。寿司はもちろんのこと、厳選された素材を使った料理はすべてハイレベル。店の見た目が回転寿司屋というだけなのです。
ここでその写真を紹介したいところですが、他のお客様に迷惑がかかるので店内での写真撮影はNG。一応、店員さんに料理だけでも撮影してもいいか交渉してみたのですが、ダメでした。ということで、想像しながら読んでください。
この日はあまり混んでいないようで、10数席のカウンターは3名だけ。4人席のテーブルは4つがすべて埋まっていました。今日の樽生は7種類で、まずはホワイトビールの「ヒューガルデン・ホワイト」を注文。
以前から、このヒューガルデン・ホワイトとえんがわのペアリングを試したかったのです。白い色で合わせた上に、ビールのオレンジ感がえんがわに合うだろうと思っていましたが、実際試してみたらその通り。えんがわにレモンが乗っていることがありますが、それと同じ効用があります。さわやかさがプラスされます。最初にこの組み合わせはぴったりです。
さらに、パウエルクワックと穴子の天ぷらを。パウエルクワックとはこんなビールです。
寿司屋でこのグラスが出てくること自体、普通は考えられません。他のお客さんもグラスが気になるようで、このグラスで飲んでいる私をチラチラ見ています。
一口飲んでみると、うまい。ふわっと柑橘の香りが立ち、モルトの甘味も感じます。しみじみ飲んでいると店長さんが「どうですか? 今回のパウエルクワックの状態はすごくいいんですよ!」と。寿司屋でこんな話をするとは思いませんでした。天つゆで食べる揚げたての穴子の天ぷらはなかなかの好相性でした。
さらに、テリーヌを注文。どちらかといえば、パウエルクワックは穴子よりもテリーヌなどの肉料理のほうがいいでしょう。肉とモルトの旨味がよく合います。繰り返しますが、寿司屋です。
今回は一人で訪れたので、寿司を5皿とこれだけでもう満腹。試したいペアリングがまだまだあったのですが、それはまたの機会に。一人よりも数名で訪れたほうがより楽しめます。ただ、土日は行列になりますので、皆さん、有給休暇を取得して平日昼間に行ってみてください。
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