「四季島」は観光振興の起爆剤 5月1日発車
上野駅から3泊4日の旅程で東北・北海道などを周遊
JR東日本の豪華寝台列車「トランスイート四季島」が5月1日、東京の北の玄関口・上野駅から3泊4日の旅程で東北・北海道などを周遊する旅の運行を始める。1人あたり最高95万円を払う乗客は1編成34人だけで、「豪華列車が停車する」というPR効果をてこにした沿線の観光振興の起爆剤としての狙いがある。下車駅ごとに、名所や名産品を堪能できる特別なプログラムが用意され、列車の到着を待ちわびる関係者も少なくない。
本州から北海道に渡る唯一の寝台列車となる四季島。東北線をひた走り、青函トンネルをくぐり、1泊後、北海道で最初に停車するのは函館だ。料亭での朝食後、函館市北方民族資料館で、アイヌ民族などの文化資料を見学。貸し切り路面電車で朝市に向かうなど、北の大地の奥深さに触れる旅が始まる。
本州に戻った3日目は、従来の縄文時代のイメージを覆した国内最大級の縄文集落跡「三内丸山遺跡」をめぐるツアーがある。こちらでも、非公開の収蔵庫で数千の土器を見学する特別待遇があり、貴重な出土品を自由に触れ、記念写真も可能。同遺跡保存活用推進室の岩田安之さん(45)は「土器に直接触れることで、探求心がくすぐられるはず」と話す。
ゆらゆら、ふらふらと世界最大級の専用水槽を5000匹のクラゲたちが漂う。山形県鶴岡市立加茂水族館は、鶴岡駅到着は4日目の早朝午前5時20分だが、9時の開館前に乗客を受け入れる。昨年度の入館者は約55万人。「いやしの空間で、ぜいたくな時間を堪能して」。奥泉和也館長(52)はそう語る。
豪華列車として先行するJR九州の「ななつ星in九州」は、地域ごとの特色あるプログラムが訪日客の心をつかみ、海外で九州観光全体のブランドイメージを向上させた。6月から運行開始のJR西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風」も同様の沿線めぐりを組み込み、周遊する中国地方のPRをもくろむ。関西などに比べ、訪日客誘致では発展途上にある東北地方など沿線の知名度向上は、JR東日本の経営課題。冨田哲郎社長は「四季島が地方の観光のけん引車となり、地域をより元気にしたい」と話している。
四季島の初列車は1日午前11時40分、上野駅を出発する予定だ。最もグレードの高い「四季島スイート」は1日出発が最高の76倍の抽選倍率という人気ぶり。12月からは北海道に渡らず、東北地方中心の2泊3日コースに切り替わるが、チケットは来年の3月運行分まで完売している。
四季島スイートの料金は3泊4日をペアで利用すると190万円。最も安価なのは、1泊2日を「スイート」で一人旅する場合だが、それでも、48万円かかるという。【深尾昭寛、北山夏帆、山田泰雄】