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「実は少年」見た目での判断難しく

警視庁がホームページで公開している特殊詐欺事件の容疑者に関する情報(画像の一部を加工しています)

 警察が事件解決のために情報提供を呼びかける公開捜査で、20歳未満の少年の顔写真や動画が特殊詐欺事件の容疑者としてホームページ(HP)で掲載されたり、マスメディアに提供されたりするケースが起きている。罪を犯した少年の名前や容姿が分かる情報の公開を禁じる少年法がある中、警察庁は2003年に殺人などの凶悪事件に限って少年の公開捜査を認めた。しかし、特殊詐欺の「出し子」役の少年の写真がインターネットで拡散した事例もあり、識者から捜査手法のあり方を問う声も上がる。

 今月12日、警視庁は特殊詐欺事件に関わった容疑者として、現金自動受払機(ATM)から現金を引き出した「出し子」の写真をインターネットで公開した。髪形や目鼻立ちがわかる写真を使用し、「茶色のロングヘア」「20歳代くらい」と特徴を明記。メディアに情報提供し、警視庁のHPやツイッターにも掲載した。

 しかし、出頭したのは事件当時、中学1年の13歳の女子生徒。刑事罰の対象にならない触法少年だった。警視庁はHPの画像を削除したが、ネットには既に拡散していた。

 警視庁は「20代と思った」と釈明したが、こうした事例は初めてではない。千葉県警も15年2月、特殊詐欺事件で現金を受け取った18歳の無職少年の動画を「20~25歳の男、身長約170センチの中肉」と特徴を記して公開捜査していた。

 公開捜査について、警察庁は16年3月にも原則として「成人の容疑者」とした通達を出した。例外として少年の公開捜査ができるのは、殺人や強盗など凶悪事件で、特に悪質で逃走中に再犯の可能性が高いケースなどとした。年齢が分からない場合も「少年である可能性にも十分な配慮が必要」としている。

 だが、公開の可否は「見た目で判断するしかない」(ある県警幹部)のが実情だ。別の捜査関係者は「特殊詐欺では有効な捜査手段。慎重に運用すべきだが、公開にちゅうちょすることがあってもいけない」と言う。

 通達では、ネットの普及に伴い捜査当局のHPやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)での公開捜査について認める一方、第三者による複製でネット上に資料が残ることに配慮するよう求めた。特に容疑者が少年やその可能性がある場合については、どのような媒体を使うか「十分に検討すること」とした。

 少年事件では、茨城県警が04年5月、強盗致死事件の容疑者として加害少年の似顔絵を公開。06年9月には山口県警が、逃走していた殺人容疑の19歳の少年について、公開捜査を見送ったことがある。【川名壮志、山本有紀】

十分な配慮を

 インターネットの問題に詳しい清水陽平弁護士の話 従来のポスターなどを利用した手法に比べてインターネットを活用した公開捜査は情報が集まりやすく、早期解決につながる利点がある。一方でネット媒体は複製がしやすく、捜査当局が削除しても複製が出回ってしまう恐れがある。今回のように公開されたのが少年だったり、または無実の人だったりする可能性はあり、十分な配慮が求められる。

見直す必要も

 少年法に詳しい武内謙治・九大教授の話 警察庁通達は容疑者が少年の公開捜査は、殺人など凶悪犯罪で更に被害が拡大する恐れがある際に検討すべきだとしている。今回の警視庁の事例は特殊詐欺であり、容疑者も「20歳代くらい」としている。未成年の可能性も十分に考えられるケースであり、慎重な対応がされたか疑問が残る。少年が「出し子」役に使われることも多く、公開捜査のあり方を見直す必要がある。

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