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「のび太はいいヤツ」は勘違い!? 30~40代男性に多い「のび太系男子」とは?
ああ、我が家にも「 ドラえもん」がいてくれたら……。ピンチに直面した時、そんな考えが頭をよぎったことがある人は多いだろう。1969年から27年間連載され、作者逝去後もアニメや映画が製作され続けている『ドラえもん』。子供からお年寄りまでその存在を知らない人がいない、まさに日本を代表する国民的マンガだ。しかし私たちは、“ドラえもんの世界”のほんの一部しか見ていないのかもしれない。
『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(稲田豊史/PLANETS) は、私たちに「ドラえもん」の新たな側面を見せてくれる一冊だ。批評誌『PLANETS』のメールマガジンに、2015年8月から16年9月まで月1回のペース で連載した原稿を加筆・修正したものが書籍化された。著者は本書を「正攻法の作品評論ではない」と述べつつも、作中で「ドラえもん」を材料に社会論や世代論にまで言及している。軸となるのは、1980年代『ドラえもん』絶頂期に原作を読み、アニメを見て育った現在30~40代の“のび太系男子”。のび太の“がむしゃらに頑張らず「ありのまま」の自分を全肯定するスタンス”は、そのままのび太系男子に受け継がれているという。
驚くのは、本書の冒頭から「残念だけど優しくていいヤツ」だったのび太の黒い部分に論がフォーカスされていることだ。小学館のてんとう虫コミックス(以下、てんコミ)18巻「ガールフレンドカタログ」では、のび太が現在~25歳くらいに出会う女の子をドラえもんの道具で閲覧して、その質に文句をつけたり、てんコミ23巻の「ぼくよりダメなやつがきた」では自分がいちばんダメでなくなったことを喜び、積極的に友人になろうとしたり。冷静に考えると、のび太って本当にいいヤツなの?と思ってしまうエピソードが紹介されている。
黒いのび太エピソードは興味深いが、そこから私たちが当たり前に持っていた「ドラえもん」のイメージが、どんどん崩される新事実が次々と明かされていく。
いじめの対象であるジャイ子
皆のマドンナ的な存在のしずかちゃんと対照的なのが、ジャイアンの妹・ジャイ子。リアルタイムで『ドラえもん』を読んでいた頃はその扱いの酷さになんの疑問も抱かなかったが、著者曰くジャイ子は、「『ブス』『いじめっ子の妹』という、本人がどう努力しても変更できない属性のせいで、トランプで言うところのババ扱いされる」存在らしい。ジャイ子に同情しながら『ドラえもん』を読むと、彼女の漫画家クリスチーネ剛田としての成功には“マイナスの存在からの脱却”という特別な意味があるように感じられる。
「ドラえもん」は過去の名作の集大成
歴史的名作である『ドラえもん』は、意外なことに著者藤子・F・不二雄のゼロからの創作ではない。著者に言わせると、『21エモン』『ウメ星デンカ』『モジャ公』などの過去の作品を「老若男女誰の口にも合うよう、イージーモードにチューニングを施した」もの。過去作品は『ドラえもん』よりブラックだが革新的な面白さを含んでおり、それらが好きだった人は『ドラえもん』を物足りないと思うのかもしれない。
のび太の性格が悪くても、エピソードが万人受けに薄められたものでも、やっぱり私は「ドラえもん」が好きだ。ただ、あなたはどうだろうか。夢いっぱいの「ドラえもん」が好きな人は本書を読んでショックを受ける可能性も高い。明かされる『ドラえもん』の新事実をあなた自身がどう受け止めるか、ぜひ体験してほしい。
文=佐藤結衣
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