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僕らは「80歳まで働く」世代に!? 人生100年時代『LIFE SHIFT』を読み解く

特集「『人生100年時代』のサバイバル術」第1回

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Apr 03, 2017 by editors room Reporter

3 Lines Summary

  • ・2007年生まれの半数の平均寿命が107歳に達する“長寿化時代”に
  • ・キーワードは「無形資産」と「マルチステージ」
  • ・日本でも社会制度改革が動き出している

“252人と6万5692人”――これが何を意味するかわかるだろうか。1966年と2016年の100歳以上の高齢者人口だ。平均寿命は毎年更新され、今年3月の発表では男性は80.75歳、女性は86.99歳。国連の推計によれば2050年には100歳以上の人口が100万人を越えるとされている。

このような現実を背景に、一冊の本が注目を浴びている。イギリス人のビジネス理論家、リンダ・グラットン氏が著した『LIFE SHIFT』(東洋経済、2016年)だ。

長寿化する時代をどのように生き抜くべきか、本の内容を紹介しながら、自分の今後の人生について考えてみてほしい。

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厚生労働省「百歳高齢者表彰の対象者は31,747人 Press Release」より一部抜粋

押さえておきたい、ベストセラー『LIFE SHIFT』の要点

この本は、年代別のロールモデルを提示しながら、どのようにすれば、“長寿化の恩恵”を最大限に享受できるかを描いている。ザックリと概略をまとめると以下のとおりだ。

2007年生まれの半数の平均寿命が107歳に達する“長寿化時代”。これまで一般的に考えられてきた、“10〜20代前半は教育を受け、60歳過ぎまで働き、引退して余生を過ごす”という3ステージの人生モデルは崩壊。仕事の期間の長期化により、ステージの移行を多く経験するマルチステージになり、働き方のほか、健康・スキル等の“無形資産”に積極的に目を向けなければいけない。そして、それに応える教育・企業・政府による取り組みと改革が必要となる」

キーワードは「無形資産」と「マルチステージ」

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より具体的な内容に触れていこう。平均寿命が延び、現在40代の男性さえも85歳まで生きるとされる。では、長い人生を健康・健全に過ごすため、何を意識して生き抜くべきなのだろうか?

長寿化時代、まず心配事となるのは「老後資産」だろう。これまでは、仕事を行う勤労期間に対して、引退期間が短かったため、勤労期間の貯蓄と社会保障で賄うことが可能だった。しかし、たとえば100歳まで生きるとしたら、65歳で仕事を辞めると引退期間は35年。明らかに老後資金がもたない。本書は80代まで働くのが適当とさえ告げている。

そこで必要なのが、金銭以外の「無形資産」の重要性の認識と、「マルチステージ」の考え方の獲得だ。

勤労期間が長期化した場合、仕事への活力や仕事のスキルといった「無形資産」が期間の経過とともに劣化。また、新しいテクノロジーが登場する可能性は高まり、新しい職種が既存の職種に取って代わることになる。この環境・労働市場の変化に対応するには、時間を割いて新しいスキルの習得や活力増進に投資し、新しいテクノロジーを受け入れる必要がある。

そこで、「マルチステージ」という考え方を獲得することになる。これまでは1つの職業への帰属で人生を過ごす場合が多かったが、これからは生涯を通じて柔軟性を持ち、マルチキャリアを経験する必要があるというのだ。

「マルチステージ」の人生では、教育・仕事・引退以外に新たな3つのステージが登場する。1つめは旅や探検などを通じて自分の進路を検討する「エクスプローラー」、2つめは帰属する組織を持たずに小さなビジネスを起こしながらスキルを高める「インディペンデント・プロデューサー」、3つめは複数の仕事や活動を並行して行う「ポートフォリオ・ワーカー」である。

これらのステージを年齢に関わりなく移行することで、仕事への活力やスキルなどを高めて、長い現役生活を過ごすというわけだ。しかし、これらの移行期間中は金銭が減少することが避けられないため、教育機関、企業、政府(社会保障制度など)の変革が求められる。


日本でも動き出した人生100年時代への社会制度改革

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…と、ここまでが同書の大まかな内容だ。長寿化時代に向けて、個々人の意識改革と準備が必要になることが理解できたことだろう。

なお、社会保障制度については、実際に日本でも動き始めている。その代表例が小泉進次郎氏を中心とした若手議員が2016年11月に発表した「人生100年時代の社会保障へ」という社会保障制度改革への提言だ。

提言内容は大きく3つ。1つめは、雇用形態を問わず勤労者全体のセーフティネットを張り巡らせる「勤労者皆社会保険制度」、2つめは長く働くほど得をする「年金制度改革」、そして3つめは健康管理に努力した(医療費削減に貢献した)人に診察料の自己負担が一部軽減される「健康ゴールド免許」である。

今後、この提言が実現するかはわからないが、長寿化する社会を踏まえた議論が活発になることは確実だろう。個々人の準備は必要だが、それだけでは人生100年時代には対応できない。長寿化を“災厄”にしないためにも、自分の将来とともに、社会変革にも目を向ける必要があるともいえそうだ。

文=向川 毅



(関連リンク)
リンダ・グラットン『LIFE SHIFT』(東洋経済)
https://store.toyokeizai.net/books/9784492533871/
百歳高齢者表彰の対象者は31,747人 — 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12304250-Roukenkyoku-Koureishashienka/0000136883.pdf
人生100年時代の社会保障へ(メッセージ)
http://shinjiro.info/20161026message.pdf

【特集「「人生100年時代」のサバイバル術」】

第1回  「人生100年時代」リタイア後35年間“お金で困らない”戦術

第2回  僕らは「80歳まで働く」世代に!? 人生100年時代『LIFE SHIFT』を読み解く(この記事)

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ホウドウキョク編集部
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