今回は僕自身が使い込んでいるサービス、『タイムズカープラス』について取り上げてみたいと思う。
唐突だが、以下のようなユースケースにはタイムズをおすすめできる。
- 週末に車を半日ほど使いたい
- 旅行先で車を使う
- 都心に住んでいて車の維持費は払いたくないがそこそこの頻度で使いたい
この記事ではパーク24グループの2016年10月期 決算資料および個人の体験から、タイムズカープラスの概要・シェア・戦略・UXについてまとめてみる。
パーク24グループとは?
1997年に創業。以来、主に駐車場事業を主軸に成長してきた企業だ。街中で「タイムス」という目印のコインパーキングを見かけることは少なくないだろう。その他2009年よりカーレンタル事業、そして2011年より今回取り上げるカーシェア事業を開始している。
堅調な”駐車場” + 次の柱の”モビリティ”
16年10月期の売上は1,943億円(+YoY 8.2%)、営業利益214億円(YoY +14.5%)と堅調に成長し続けている。パーク24のビジネスは実物である土地や車両をアセットに収益を積み上げるモデルのため、アセットの価値が急激に既存されない限り、基本的には堅調な推移が期待できる。
中でも目を引くのがモビリティ(=カーレンタルとカーシェア)事業の急成長だ。営業利益ベースでYoY+156.8%と急激に伸ばしている。その成長を大きく牽引しているのがカーシェア事業、タイムズカープラスだ。売上、営業利益ともに大きな成長を見せている。
YoY +200%超の営業利益成長を見せるカーシェア事業
推定80%の圧倒的なマーケットシェア
国内B2Cカーシェアのプレイヤーは『タイムズカープラス』のほか、オリックスが手がける『オリックスカーシェア』、三井不動産リアルティが手がける『カレコ』を含めた3つが主要なプレイヤーとなっている*1。中でもオリックスはこちらのプレスリリースによると2002年よりカーシェア事業を開始しており、当時からするとかなりの先鋭的なチャレンジだったように思える(力を入れ始めたのは最近のようだが)。
まずは各社が公開している最新の資料より主要な情報をまとめてみた。ただしオリックス、三井はいずれもカーシェアセグメントにおける主要な指標を部分的にしか公表していないため、推測値(グレー)となる。
項目 | タイムズカープラス*2 | オリックスカーシェア*3 | カレコ*4 |
---|---|---|---|
運営 | パーク24 | オリックス自動車 | 三井不動産リアルティ |
開始年 | 2011 | 2002 | 2011 |
エリア | 全国 | 関東・東海・近畿 | 東京都心 |
ステーション数 | 8,591 | 1,444 | 1,100 |
車両台数 | 16,252 | 2,300 | 1,500 |
会員数 | 約72万 | 約15万 | ??? |
会員数/車両 | 44.3 | 65.2 | ??? |
月次売上/車両 | ¥95,475 | ??? | ??? |
年間売上[億円] | 186 | 26 | 17 |
推定シェア | 81% | 11.5% | 7.5% |
カーシェアをビジネス的に「車両を人口密度に応じて配置し、一台あたりの収益性(回転数↑とメンテコスト↓)をどこまで高められるか?」という勝負かなと思っており、初めのボトルネックは「車両を配置できる駐車スペース」となる。駐車場事業でトップティアのパーク24は全国に15,000件ほどのスペースを保有しており、圧倒的なシナジーでシェア拡大を進めている(ここまでシナジーがある事業も珍しい)。競合他社との車両台数を比較しマーケットシェアを概算するとの80%程をタイムズカープラスが占めているのが現状のようだ。
またFY2016時点でのカーシェア業界の市場規模は230億円規模と見積もられる。YoYで30~40%ずつ成長しているタイムズを筆頭にどこまで成長するか?
タイムズのUX
僕自身、オリックス・カレコやAnycaを含めたカーシェアサービスを一通りテストしており、その上で現在はタイムズ一本+長時間利用したいケースのみAnycaという使い分けをしている。中でもタイムズカープラスについては 1~2回/week 利用しているが、車を探す〜返却するまでのトータルのUXが圧倒的に良いと感じている。その要素を分解してみる。
圧倒的ステーション数
項目 | タイムズ | オリックス | カレコ |
---|---|---|---|
ステーション数 | 8,591 | 1,444 | 1,100 |
前述の比較であったとおり、カーシェアの車両数・ステーション数共にタイムズカープラスが圧倒的なシェアを誇っている。このため自宅・職場・お出かけ先、旅行先など、大体どこに行っても利用ができるというのがタイムズの体験の強みだ。仙台に行った時は東京よりもステーションがアチコチにあったため、大変重宝した。
慣れない旅先で、いつもと同じ装備のクルマがさくっと使える、というのは新しい体験で素晴らしかった。
2タップで予約完了できるモバイルアプリ
タイムズが提供しているモバイルアプリ『クイック検索』は借りたい時間にあわせて、availableな車両を地図上に表示してくれる。もちろん借りたい場所、時間、定員、車種などでの絞込も可能。現在地からどのくらいの距離にステーションがあるのかが直感的にわかるUIはかなり使いやすい。
また車両の予約は
- 地図から車両を選ぶ
- 確認画面で確定する
のたった2タップで完了する。
オンデマンドに「今使える車両」を探すにも、「今週末使いたい車を抑えておく」にも、この予約のハードルが低いことはサービスを使い続ける理由になる*5。
細かいことを言えば、キャンセルがアプリで完結できない、 予約時間に通知が欲しい、お気に入り車両やステーションの登録がしたい、などプロダクトとして研ぎたい箇所は多いが、それでも予約体験は非常に高い(特にレンタカーと比べれば…)。
細かな”乗車体験”の設計
タイムズカープラスは『月額+15分毎に206円~』という課金の仕組みを取っている。月額1,030円はそのまま無料利用料金として利用できるため、75分ほどは月額の範囲内で利用できる。レンタカーと異なり、ガソリン+保険について考える必要ないというのは非常に体験が良い。
また全車両に給油用のクレジットカードがついており、シェア時間中にそのカードを利用して給油や洗車を行った場合は利用時間が割引される。3歳児以上が利用できるブースターシートがついているのも子連れには嬉しい。
カーシェアは見知らぬ誰か(それも大体は近所の)とクルマを共有する仕組みだ。そのため『車を借りて返す』という行動の体験自体も重要だが、クリーンに使い続けるための仕組みがインセンティブ込みで設計されているというのは非常に使い心地が良い。
タイムズの成長戦略
最後にタイムズのIR資料の中から成長戦略を読み取ってみよう。
- 車体あたりの売上を伸ばす
- メンテコスト抑制(事故を避ける・CS負担を減らす)
- ”Ha:mo乗り捨て”
車体あたりの売上を伸ばす
レンタルやシェアリングにとって最も機会損失になるのは資産が寝ている時間だ。特にタイムズは車両数をYoY +20%超のペースで急増させているため、この休眠時間を減らす施策へ同時に力を入れないとコストばかりが膨らむ。
そこでタイムズが力を入れているのが平日利用を埋めてくれる法人アカウントの増加だ。YoY +7.5%と堅実ながら法人アカウント増設により、平日の休眠時間を減らす施策を実施している。
この他、一般利用者の利用時間を高める方法として、
- 送客連携 : 車があれば脚が届く施設と連携し、タイムズ向けのクーポンを発行するというよくある連携だ。
- ナイトパック : 車体が寝やすい時間帯の割引
などが設計されている。
メンテコストの抑制
『資産が寝ている時間を増やしてしまう要因』としては事故が一番怖い。タイムズは事故防止のための投資を積極的に行っており、全車両へバックモニターが設置された。
バックモニターの設置により事故率が25%減と、非常に効果が高かった(バックする時に事故る人が多いんですね)。
また直近ではアラウンドビューモニターを装備した日産「ノート」を1,000台導入するという施策を実施している*6。
アラウンドビューモニターは、駐車時などに車両を上から見下ろす視点で周囲を表示します。さらに周囲の移動物を検知し、アラウンドビューモニターのディスプレイ上の表示と音でドライバーの注意を喚起する機能があり、ドライバーの方がいつでも安心して運転できるようサポートします。
一件コストが嵩むように見える高機能装備を広く導入することで、利用者の体験をできるだけ統一し、利用者全体のヒューマンエラー率を下げるということも期待できそうだ。
カスタマーサポートへの入電が抑えられるように自社のヘルプページも充実させており、車体あたりのコストを抑えるために着実に施策を実施していることが伺える。
”Ha:mo乗り捨て”
乗り捨てはカーシェアを使っていて最もほしいサービスの一つ。都内を中心に乗り捨てサービスの実証実験が行われている。
2015年4月から展開しているトヨタ自動車との実証実験。東京都心部を中心にステーションを設置し、超小型EVによるワンウェイトリップ方式(乗り捨て型)のシェアリングサービスの有用性を検証する。
『タイムズカーシェアであればどこのタイムズ駐車場に停めても良い、近くが空いていなければ、最近順にサジェストされる』といった機能が実現すると体験が大きく変わるはず(例えば行きは電車で、帰りは荷物を積んでクルマで、などが可能に)。
まとめ
ここまで、タイムズカープラスの概要について、IRとUXの両輪からまとめて見てきた。
現在は「12時間以上の予約」などのケースでは他社のほうが安く済む場合もある。しかしこの点についても圧倒的シェアをもつタイムズが最終的には優位になっていくのではないかなーと思っている。事業的にも既存事業とシナジーが出る、という美しい設計(なかなかシナジーというものは存在しないのが世の常)。
タイムズはモバイルアプリでの予約からオフラインでの利用体験まで、本当に細かく最適化されている。このUXから学ぶことも多く、ぜひいろんな方にサービスを実験してほしいなと思う。
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