無期懲役を宣告された元名古屋大女子学生(21)=事件当時未成年、仙台市出身=の裁判員裁判を名古屋地裁で取材した。殺人や劇物のタリウム混入など六つの事件を次々に起こし、1人を殺害し、5人を殺そうとした。新聞の見出しだけを見れば「史上まれに見る少年凶悪犯」に違いない。ただ、約2カ月半、計22回の公判を傍聴してきた立場からすると、少し異なる所感を抱いた。
【図解】元名大女子学生事件の経過と起訴内容骨子
◎元名大生裁判を取材して 河北新報社報道部・斉藤隼人(32)
1月16日の初公判で、元名大生が裁判長から本人確認を求められた。ついに肉声を聞くことができた。「はい、間違いありません」。やや高く、幼さの残る声に思わず息をのんだ。
黒髪は目元まで伸び、マスクで顔の大部分は覆われていた。証言台でマスクを外した素顔はあどけなさを残していた。凶悪事件の数々を起こした「モンスター」のイメージは、3メートル先の小柄な女性と結び付かなかった。
法廷での所作はまるで就職の面接のようだった。渡された長文の公判資料を黙々と読み、質問にはきはきと答える。動じることなく淡々と話す一方、丁寧な言葉遣いと、節目節目にお辞儀する礼儀正しさが印象に残った。判決を含めて計22回を数えた公判は最長8時間に及んだが、最後まで疲れた様子を見せなかった。
他方で元名大生が発する一言一言は、胸をえぐられるほど衝撃的だった。
「生物学的なヒトなら誰でも良かった」
「人を殺したい気持ちは今も週1、2回生じる」
「個々がかけがえのない人だという感覚がない」
殺意の矛先は家族や親友にとどまらず、法廷の裁判官や弁護人、傍聴者にも向けられた。
異様過ぎる供述の数々を聞き、当初は、重い精神障害による無罪を主張する弁護方針に沿った「戦略」と感じた。だが、傍聴を重ねるにつれ、法廷戦略という皮相な見方を改めた。
精神鑑定をした3人の医師に共通していたのは、元名大生が広汎性発達障害で他者への共感性が欠けているという点だった。
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