■デヴィッド・ボウイ展に行ってきました。
これがすごい楽しい。演出がいい。会場が五階なんですけど、ゴッテゴテに装飾された貨物エレベーターで行くだけでもう楽しいのに、五階入ったら基本、暗い。スポットライトがぽつぽつ照らされてこちらへお進みくださいみたいになってるの。
入り口でヘッドホン渡されるんですけど、展示物に近づくと曲が流れたりインタビュー音声が流れたりしてアガる。初っぱなから『アラジン・セイン』の衣装飾られてるし。デビッド・ボウイって結構、僕は後から聞き始めた人なんですけど。僕の周囲にはそもそもあの人、俳優じゃなかったの? レベルの人までいたぐらい何でもやるし、何やってもうまく結果出しちゃうちょっと選ばれし逸材というか、そういう人。そもそも顔が二枚目だしズルいですよね。
■先輩がもったいぶって貸してくれなかったデヴィッド・ボウイ
なんでデヴィッド・ボウイ聴くの遅くなったかというと、僕が若い頃の音楽経験なんてのは「貸してもらう」から始まるんですけど、僕の地元ド田舎なんで、先輩とかがもったいぶって貸してくれないの。それファンとしてどうなの、普通、布教しません? みたいな。逆に言うと「なかなか貸して貰えないアーティスト」って格付けがうまれてしまう面もあります。
だから名前だけは知ってたし、最初に聴いたの『スターマン』だった。しかも布袋寅泰のカバーで知るって言うね。スゲーいい曲だな~と思ってたらカバー。地元の先輩が親切に布教してくれた布袋寅泰。そこからじわじわ広げていった感じで、デヴィッド・ボウイ本人についてはそんなに身を入れて知ろうとしなくてもグイグイ出てきますからね。そのあたりの自己プロデュース力というか主張してくる感じが、天然なのか計算なのか誰かの仕込みなのかまではわからなかったんですけど。
今回行って確認したら、めちゃくちゃ計算する天然、っていう一番強いパターンでした。元々恵まれてるのに更に考えるから、常人じゃ出てこない発想のオンパレード。デザイナーとプランナーとアーティストのいいとこどり。ユニオンフラッグのロングコートとか生で見ましたけど感動しましたからね。アレクサンダー・マックイーンとか友達にも恵まれてたっていう運まで持ち合わせている。
■「出火吐暴威」って書かれた特攻服みたいな衣装もカッコイイ
本当にまだ無名の頃のインタビューで「当時は場違い感がハンパなくて居心地悪かった」って語ってましたけど、そりゃそうですよ。人間、そこまで逸脱されると訳わかんなくなりますもん。どんな奇抜なことをしても当ててくる、ってのがまたすごくて。まず失敗しない。その上、成功しても同じことやらずに更に違うこと始めてまた当てる。ちょっとチート過ぎる存在がデヴィッド・ボウイ。
何やらせてもカッコイイし、世界観をガッチリ固めて入り込んでくるから、奇抜な衣装とかも似合う。そこに更に奇抜な山本寛斎入って着た日には「出火吐暴威」なんて漢字書かれた特攻服みたいな衣装も着ちゃいますよね。あれも飾られてましたけど偉い速度出てましたよ。一気に気持ち持って行かれる。
■一人で行って大正解だったかも
一人で行ったんですけど、正解でしたね。インタビューとか展示物の説明文とか入り込んで読み聴きしちゃえるから。みんな展示物の前で固まったまま動かないの。説明文読んでるとかじゃなくて、自筆のメモとか小道具とかにずーっと見惚れてるの。僕もそんな感じになってました。デヴィッド・ボウイが出た映画のちょっとしたシーンを繰り返し流すブースで、久しぶりに『ラビリンス』とか見てしまった。あのダーク・シュナイダーみたいな髪型とカッコしたデヴィッド・ボウイの魔王感すごい。
ベルリン三部作辺りのブースになると、ちょっと精神的に不安定な時期の展示物になるから芸術家寄りになってくる。「自分はロックをロールし終えた」みたいなことを言い出してもうやめちまおうっかなってなってた時期。絵とかたくさん描いてた時期の不安定さ。確かにちょっと引退ムード漂ってた。「復帰した」って案内文には書いてあるんですけど、そんな一言で片付けていいのかなってはちょっと思いました。相当苦悩してた時期だと思うんですよね。基本、天然なんですけど考え過ぎるくらい考えてからでないとその天然を出せない上に同じことはしたくない、ってこだわりの人なので。
■「納得するまでの時間」を買うためにはお金大事
終わりかな~、俺、もう終わりっぽいな~って真剣に考えていたと思う。これで売れてなかったら本当に終わりにしていたとも思う。結局、支持して期待してくれてるファンというのがいてそこを切り抜けたような。そこから復帰するからには更に違うことを、って地獄みたいなプレッシャーを勝手に自分にかけていたんじゃーないかと。どんなにファンとかプロデューサーが「大丈夫だよ」って言っても自分が納得してなかった時期のような気がする。お金なかったら、納得してなくてもやってたかやめてしまっていただろうから、そういう時、お金って大事ですね。「納得するまでの時間」が買えるから。
日本展示だからか、戦場のメリークリスマスだけ別ブースになってましたけど、当時の映画ポスターが荒々しくして好き。大島渚がまた何かやった! みたいな体育会系のポスター。ちょっと悪乗りしてる感じの中で生真面目に自分の役をこなすデヴィッド・ボウイが絶妙でいい。俳優としてデヴィッド・ボウイを採用していて、音楽は坂本龍一ってのもコンセプトに山盛り感があってかつ媚びてないみたいな鋼の魂感じる。
■スゲエなあ……スゲエなあ……
話変わりますけど、僕は昔、南青山を歩いてて「ものすごく慌てて走ってタクシーに飛び乗る坂本龍一」を見たことがあります。すごい絵面だな、と思いました。いや普通に急いでただけだと思うんですけど。何か人間味があるというか。あんな神様みたいな人でも走ってタクシー乗ることあるんだな、っていうおかしさが。
デヴィッド・ボウイも走ってタクシー乗ったりしたことあるのかなって。そりゃあると思いますけど。坂本龍一の時も「……今の本当に坂本龍一だったか?」って何回も確認して首ひねってたくらいですからね。いやタクシーくらい走って乗ってもいいだろ、ってのはわかってるんですが。なんか無意味にとことん神格化して崇拝してみたい気もします。そういうのが全世界から向けられたら、地獄みたいなプレッシャーな訳で。多少の奇行も許してあげてはどうかということを訴えかけていきたい。別に急いでタクシー乗るのは奇行でも何でも無いですが。
んで最後にプロジェクターで大写しされてるライブが映るブースで終わるんですけど、聴きたい曲が流れるまでずーっと足止め。ヘッドセット返して帰るの惜しい気がしてくる。たくさん飾られてる衣装とか見ながらスゲエなあ……スゲエなあ……ってぶつぶつ言ってました。
■ボストンバッグ12万円買いそうになったよ(売切れてた)
さすがに帰ろうと思って外出たら、唯一撮影可能な展示物があって、それが「お誕生日おめでとう」ってデヴィッド・ボウイがメッセージ流してる動画。365日流し続ければそのうち当たる、って本人が言ってた。デヴィッドおじさんが祝ってくれたよ~って気持ちになってくださいね、という趣旨の。みんなメチャクチャ写真撮ってた。
楽しかったので多少高くてもグッズとか買っちゃおうかな~って思ったんですけど、ボストンバッグ12万円とか本気の値段でちょっとビックリした。ボウイグッズじゃなくて山本寛斎デザインの本気のやつなので仕方ないですが(しかも完売してたし)。四万円のTシャツは残ってましたけど、ちょっとおかしなスイッチ入ってたら買っていた可能性がある。入ってなかったのでキーホルダーとステッカーにしておきましたが。あそこだけチケットいらないからまた行くかも分からない。
とにかく遊園地感がすごいので、機会があったら皆様も是非。全然知らなくても楽しめると思います。俺はカリスマだぞ、というのがビシビシ伝わってくるしまったく空回りしてないから安心して楽しめます。展示物眺めてる時に『スペース・オディティ』とか流れると脳から変な汁が出る仕組みになっているので出来ればハマっていただきたい。よろしくお願い致します。
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