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- ・既存資産のシェアリングが価値を生み出している
- ・FinTechの盛り上がりはマイナス金利が引き金
- ・オンライン決済は日本が絶対に取られてはいけない領域
AnyPay木村代表インタビュー後半。前半はこちら「ネット業界は行き詰まっている、AnyPay木村代表が語る"次にやるべきこと"」
既存資産のシェアリングが価値を生み出している
ーーグローバルな観点で今の日本をどのように捉えているかお伺いしたいのですが、金融やITで世界の覇者とは言えない日本が、今後どのような戦略を取っていくべきなのでしょう?
金融は勝てなかったし、製造業からなかなか抜け出せなかったのが日本。金融とITに産業が移っていたら、今の若者にももっと仕事があったはず。製造のところは韓国、中国、東南アジアに取られ、仕事がほとんどない状況です。
とはいえ今まで貯めたお金が日本にはあって、それが年金として支払われて、仕事のない若者にも新しく介護の仕事が生まれたりしていますが、国の未来を作るような仕事をもっと生み出さなければいけないですよね。
この国ってこれ以上モノは必要ないし、不動産も必要ないのですが、すでに作ったものを効率的につなぎ合わせること、コネクティビティを作ることで、既存のアセット(資産)が収益化し始めてるっていうのが、今起こっていることなんです。
Airbnbでも資産として価値がないと思っていたものに価値が生まれているし、Uberでも個人の車でちゃんと稼げることが証明されました。
メルカリもそうですけど、メルカリ以前って、二束三文で買い取られてたと思うんですよね。だけどメルカリで売るとそれまででは信じられないような高い値段で売れて、こんな価格で売れるんだと気付いた人も多いんです。iPhoneだって数万円で売られていたり。
これは眠っていたニーズのマッチングで、まだまだ出来ることが実はあります。
この国ではモノが溢れてデフレになっていますが、こうやって既存のアセットを収益化する仕組みを作っていけば、次にまた生産ができる流れにもなっていくと思います。
FinTechの盛り上がりはマイナス金利が引き金
ーーそのような流れの中でなぜ今「FinTech」が注目されるのでしょう?
やっぱりここですごく動き出したのは「マイナス金利」だと思います。
ーーマイナス金利が引き金になった?
はい、お金を銀行に預けることには限界がある。とはいえ、送金やローンをやるにも、今までの手法ではダメで。なぜかというと、送金でいえばお互いに口座情報なんか知らないわけですし、やっぱりそれをつなげていく必要があるんですよね。
そこでちょうど、ソーシャルができた、スマートフォンを持っている、人工知能・ディープラーニングも進化した。そして国はマイナス金利で「お前ら頑張れ」と(笑)。
なのでこういうパーツを組み合わせてテクノロジーで乗り越えていくタイミングなのでしょう。
オンライン決済は日本が絶対に取られてはいけない領域
ーー最後にお聞きしたいのですが、グリーへの売却、グノシーの上場と、シリアルアントレプレナーとして数々の実績を残されてきた木村さんが、AnyPayを創業してさらなる挑戦をするというのは、どのような思いからなのでしょう?
ホントだったら引退したらよかった(笑)
ただ、ちょっとほっとけない部分があって。
(オンライン決済の分野で)WeChatはすごいし、Alipay(アリペイ)もすごい。訪日中国人用にコンビニやデバートなどすでにいろんなところで普及しています。一方で日本のサービスが普及しているかというと、ほぼ無い状態。
利益のある中国企業が数百億円規模のプロモーションをかけてきたら、日本のオンライン決済を店舗でもユーザー間でも全て持っていかれる可能性があって、それを黙って見ているわけにはいかない。
特に個人が現金で商売する市場は300兆円とも言われていますが、それを全部(外国のサービスに)持っていかれたとしたら、この国として大丈夫なのかと。別にナショナリストでも無いんですけど、取られちゃいけないところはあるだろうって思うんですよね。
ーー社会的使命感?
そうですね、使命感といいますか、このまま放っておくとヤバイでしょうと。
ただ、上場企業にとってはお金がかかる事業なので業績も痛むし、日本企業は足踏みをしている。ちょうど今我々は上場している訳ではないので、非上場企業としてやれることがあると思っています。
こう言ってしまって良いかわからないですが、たとえ僕らが成功しなくても、誰かがやらなきゃいけない。誰かがこの市場に関しては日本に留めなければいけないと思ってやっています。(了)
インタビュー前半はこちら「ネット業界は行き詰まっている、AnyPay木村代表が語る"次にやるべきこと"」