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 ぬかみそといえばキュウリやナスなど野菜を漬けるもの。そう思っている人は多いだろうが、北九州ではぬかみそ自体を食べる料理がある。イワシやサバなどの青魚と煮込む「ぬか炊き」だ。

 調理方法はシンプル。しょうゆやみりんで魚を煮込む際、野菜を漬けているぬか床からぬかみそをひとつかみ加える。ぬかが魚の生臭さを消し、甘辛さの中にぬかの風味や香辛料がほんのり漂う。

 家庭によってぬか床の味は様々だ。北九州市のぬか床専門店「槇乃家(まきのや)」の波多野淳子さん(73)のぬか床には唐辛子やショウガ、サンショウの実など6種類の香辛料が入り、甘酸っぱい乳酸菌とスパイスが混ざったさわやかな香り。「昔はどの家庭にもぬか床があった。毎日ぬか漬けを食べ、魚が手に入ったらぬか炊きを作ったの」。ぬか床とぬか炊きの食文化は、親から子へ引き継がれてきた。

 JR小倉駅北側にあるぬか炊き定食が人気の「味処(あじどころ) 矢野」。ここのぬか床は女将(おかみ)の矢野寿美子さん(66)が母から引き継いだもので、そこには波多野さんや、別の知り合いから分けてもらった300年前のぬか床も入っている。

 定食を注文した客は大抵、残った汁をご飯にかけて食べる。西南女学院大学の近江雅代教授(45)は「ぬか炊きの煮汁には青魚の栄養分が溶け出している」と、煮汁ごと摂取することを推奨。矢野さんは「家でも作って」と、客にぬか床のアドバイスもしている。

 ぬか炊きはいつ生まれたのか。…

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