ミックスゾーンで立ち止まった則本昂大は2番手としてマウンドに上がったキューバ戦について、目尻をつりあげながら振り返った。
「収穫はあるので、どうこう言われる筋合いはないかなと思っています」
この言葉こそ、3月7日、野球日本代表「侍ジャパン」が第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で迎えた幕開けを最も象徴しているように思えた。
ミックスゾーンで立ち止まった則本昂大は2番手としてマウンドに上がったキューバ戦について、目尻をつりあげながら振り返った。
「収穫はあるので、どうこう言われる筋合いはないかなと思っています」
この言葉こそ、3月7日、野球日本代表「侍ジャパン」が第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で迎えた幕開けを最も象徴しているように思えた。
11年前、第1回大会の決勝で争ったキューバと今大会では初戦で激突し、11対6で勝利した。小久保裕紀監督が前日に「独特な緊張感がある」と話していたオープニングゲームで、第2ラウンド進出を争うと見られていた相手を初戦で下したことは何にも増して大きい。
内容的にも実りある試合だった。1回表のピンチをセカンド・菊池涼介の好守で切り抜け、直後に3番・青木宣親、4番・筒香嘉智の連打で先制。中盤に山田哲人、坂本勇人と主力のバットで勝ち越すと、指揮官がスタメンを悩んでいたというサードの松田宣浩が3ランをレフトスタンドに突き刺した。試合終盤にリードを詰められたとはいえ、キューバとの地力の差を感じられる試合だった。
だが、「世界一奪還」を掲げる侍ジャパンにとって、喜んでばかりはいられない。同時に、多くの課題も浮き彫りになった一戦だったからだ。
5回終了時点で7対1とコールド勝ちさえ見える展開になりながら、終盤は乱戦に持ち込まれた。その分岐点となったのが7回表、5回から登板して3イニング目となる則本を続投させたことだ。この日、則本は2番手として登板することは決まっていたものの、どれだけのイニングや球数を投げるかは展開次第となっていた。
「シーズンと一緒でそんなこと(どれだけのイニングを投げるかということ)は考える必要ないし、自分は与えられたところで投げるだけです」
5、6回は6人を完璧に抑えながら、7回は打者6人に5本のヒットを浴びて3失点し、このイニングを投げ切れずに降板した。冒頭のコメントは、「2回を完璧に抑えながら3イニング目に打たれたのは中継ぎの難しさか」と質問したときの回答だ。則本は“収穫”として、試合に投げられたこととチームの勝利と答えている。
「(この日のボールは)悪くはなかったけど、コントロールにばらつきがありました」
それでも5、6回は完璧に抑えた一方、7回は捕まった。
「厳しいところをカットされて、カウントが進んで、難しいところはありました。勝ち進んで行けばまた(キューバと)当たるかもしれないので、それは次回しっかり修正すればいいと思う。そこはピッチャーだけではなく、バッテリーでもう1度話し合ってやるべきだと思います」
7回表無死2、3塁で迎えた代打アービレイスに対し、フルカウントからの7、8球目はストレートを続けてファウルされた後、9球目の外角スライダーをセンター前にタイムリーとされた。ストレートで押し込んでいただけに、最後まで力勝負という選択肢もあったはずだ。
一方、先発マスクをかぶった小林誠司はこの日のリードについて、こう振り返った。
「途中から(変化球に)合い出したと思いました。点差が開いたときに、僕自身(のリード)が単調になった部分があるので、そこはしっかり反省していきたいと思います」
7回は則本の投げたい球と、捕手の要求が一致していなかった。キューバ戦ではリードを逃げ切れたから良かったものの、もっと強い相手との対戦を勝ち抜くには、バッテリーの意思を統一できるようにコミュニケーションを重ねていかなければならない。
1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。著書に『人を育てる名監督の教え すべての組織は野球に通ず』(双葉新書)。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年『中南米野球はなぜ強いのか』を上梓。
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