別荘10億円高騰する市場
ニセコエリアを訪れる外国人観光客は年々増え、昨年度(平成27年度)合わせて19万人余りと3年前の2倍に達しました。一方、客層にはある変化が出ています。これまで主流だったオーストラリア人に代わり、中国やシンガポール、タイなど経済成長を続けるアジアからの観光客が急増しているのです。
こうした中、ニセコエリアにはかつてないほどの不動産投資の波が押し寄せています。地元の不動産会社によりますと、投資が過熱し始めたのはおととしから去年にかけてで、コンドミニアムや別荘など数億円の物件が相次いで売りに出されているといいます。
私たちが取材した中で最も高額だったのが、去年12月に売り出されたばかりのニセコ町にある別荘です。650平方メートルの広さにバーカウンターやプライベートシアター、それに700万円近くする調理器具などを完備。価格はなんと10億円余りです。
売り主はオーストラリア人で、すでに香港とマレーシアの資産家が関心を示しているといいます。不動産仲介会社のロス・カーティー取締役は「アジアの人からの問い合わせがすごく多い。『雪を初めて見た』という人も何人もいて、スキーよりも投資目的の買い主が増えている。不動産の価格もリーマンショック前の2倍ほどに高騰している」と話していました。
2倍近くで転売のケースも
アジアからの投資が集まるのはなぜなのか。倶知安町にある、ホテル型コンドミニアムの部屋のオーナーが取材に応じました。
夫とともに服飾メーカーを経営するシンガポール人のリン・シーさん(34)は、2部屋を所有。毎年、冬は家族で滞在し、残りの期間は宿泊施設として貸し出しています。部屋を購入した理由としてリンさんは、ハイシーズンは部屋が宿泊の予約で埋まってしまうため所有していれば安心であること、そして投資先として魅力的であることを挙げました。
このコンドミニアムでは、アジアからの客が増えて宿泊費が上昇。宿泊による売り上げの半分近くがオーナーに入る仕組みで、利回りは年5%ほどになるといいます。このタイプの部屋の当初の販売価格は5000万円余りでしたが、その後、およそ9000万円で転売されるケースもあったといいます。大きな転売益も見込めるのです。
リンさん夫妻は「資産価値がこんなに早く上がるなんて驚きました。富裕層が豊かなのは、賢い資産管理の方法を知っているからです。ニセコは投資先というだけでなく、休日を楽しむ別荘までもてるのがすばらしい。正しい選択でした」と話していました。
外資が主導する投資の波
ニセコエリアを席けんするアジアマネー。取材を進めると、このエリアの不動産市場のある特殊性が見えてきました。コンドミニアムなどの物件を扱う不動産会社の多くが外国資本なのです。私たちが取材した倶知安町の不動産会社も、社長はニュージーランド人でした。独自のネットワークで、外国人向けに特化した市場が作られているといいます。
取材中、この会社の仲介で去年、不動産を購入したという中国・上海の40代の男性が現れました。1200人の社員を抱える会社の経営者だという男性は、投資用の物件を買い増そうと、3億円以上するコンドミニアムの部屋の下見にやってきました。
男性を案内したのは香港のスタッフです。この不動産会社では、母国語での対応はもちろん、一緒に食事に行ったり車で送り迎えしたりと、顧客のニーズにきめ細かく応えています。富裕層は、パーティーやSNSで、所有する物件を友人に自慢することが多く、1人の富裕層を取り込めば口コミのネットワークで顧客を次々に獲得できるというのです。
上海の男性は取材に対し、「契約書にサインすれば物件の管理はしてくれるし、すべて面倒を見てくれるので楽です。友人が物件を買うならもちろんこの不動産会社を紹介します」と話していました。また、不動産会社のグラント・ミッチェル社長は「富裕層との信頼関係を築くには長年の経験とセンスが必要だ」と話します。
波に乗り遅れまいと日本企業も
外国資本が主導する不動産投資の波に乗り遅れまいと、今シーズン初めて、この市場に参入した日本の企業もあります。
札幌市に支店をもつ東京の不動産会社は去年12月、ニセコ町にコンドミニアムを建設しました。外国の町のような光景を目の当たりにして参入を決めたということですが、独特な市場の動向がつかめず、最終的な決断までに3年近くかかったといいます。シンガポールに設立した現地法人を拠点に、海外の投資家にアピールするつもりです。
不動産会社の長谷川進一副社長は「ほとんどと言っていいほど外国人が不動産を買っているので、販路をどのように確立するかが日系企業としては難しいところですが、一生懸命やるしかない」と話していました。
雄大な風景やパウダースノーが多くの外国人を引きつけるニセコエリア。人気の高まりとともに地価の高騰は続き、すでに1坪300万円以上で取引されている場所もあります。外国資本が主導する特殊な状況がどこまで続き、地元に何をもたらすのか。注目していきたいと思います。
- 札幌放送局
- 藤本智充 記者
-
平成14年入局
新潟局、社会部などで
事件や災害を中心に取材
去年から札幌局
- 札幌放送局小樽支局
- 川口朋晃 記者
-
平成25年入局
ニセコエリアを担当
第1管区海上保安本部
なども取材