なぜBABYMETALは世界を熱狂させたのか
坂本九以来、53年ぶりの快挙──。
2016年春、そんなニュースが世を賑わした。
4月1日に世界同時リリースされたメタルダンスユニット・BABYMETALのセカンドアルバム『METAL RESISTANCE』が、米ビルボードのアルバムチャートで初登場39位を記録したのである。
日本人アーティストのアルバムが同チャートのTOP40にランクインするのは、1963年に坂本九のアルバム『スキヤキ・アンド・アザー・ジャパニーズ・ヒッツ』が14位となって以来のことだ。
イギリスでの反響はさらに大きかった。アルバムがリリースされた翌日の4月2日には、BABYMETALはロンドンのウェンブリー・アリーナで日本人初のワンマン公演を行っている。収容人数は1万2000人、これまでボブ・ディランやU2など数々の大物がライブを行ってきた場所だ。
アリーナは超満員。ライブは大きな反響を呼び、アルバムは全英15位を記録。日本のアーティストとしては史上最高位となった。
2013年1月に、BABYMETALはシングル「イジメ、ダメ、ゼッタイ」でメジャーデビューを果たしている。その時点でメンバー3人は目標に「世界征服」を掲げていたが、もちろん、最初は誰もそんなことは本気にしていなかった。冗談や絵空事だと受け止めていた。
しかしそこから3年で、その言葉は現実のものとなりつつある。アメリカ、イギリス、カナダ、メキシコ、フランス、ドイツなど、各地のフェスで数万人のファンを沸かせ、ワールドツアーも各地で盛況を呈している。
なぜBABYMETALはここまで海外のファンを熱狂させたのか?
その理由の筆頭には、やはりその存在が世界的にもワン・アンド・オンリーのものだったことが挙げられるだろう。10代の少女3人が凄腕のバンドをバックにドラマティックな歌声を響かせ、キュートなダンスを魅せる。可愛い女の子が本格派のメタルを歌う。
しかも、単に物珍しいだけではない。楽曲やパフォーマンスに、海外の大物バンドやコアなメタルファンを魅了するだけの説得力が宿っていた。
最初のきっかけを生み出したのは2013年のサマーソニックだった。この年に初めて本格的なフェス出演を果たした彼女たちのステージを、その年のヘッドライナーをつとめた世界的なメタルバンド、メタリカのメンバーやスタッフが偶然に目撃する。そこで彼らに与えたインパクトが翌年以降の海外フェス出演につながった。
そして2014年夏にはイギリスにて同じくメタリカがヘッドライナーをつとめる世界最大級のメタルフェス「ソニスフィア・フェスティバルUK」に出演。6万人を前に見せた圧倒的なパフォーマンスが現地のファンの度肝を抜いた。
プロデューサーのKOBAMETALは後日に行われたインタビューで、当時をこう振り返っている。
セッティングしてるときは全然人がいなかったんですけど、1曲目が始まったらぞろぞろ集まってきて、気がついたら全部埋まってて。びっくりしましたね。主催の人もいってましたけど、BABYMETALは実質2番目で、昼の12時からこんなに埋まってるのは初めてだって。その年のソニスフィアのベストアクトのトップ10にも選ばれて。いや、あれは本当びっくりでした。(『音楽主義』68号)
単なる話題性ではなく、あくまで現場で見せたライブパフォーマンスの説得力で、メタリカのような大物バンドや、目の肥えたヨーロッパのメタルファンを魅了した。それがBABYMETALが海外で支持を拡大した最大の理由と言っていいだろう。
「カレーうどん」としての発想
「もしBABYMETALがアメリカのバンドだったら、賭けてもいいが、一笑に付されて終わりだ。しかしそこには日本のエンタテインメントの、単に滑稽だとかバカバカしいと切って捨てるわけにはいかない、真にユニークな何かがある」
英『ガーディアン』紙に掲載された記事にて、カルチャー誌『ビザール』の編集者スティーブン・ダルトリーは、こう語っている。
BABYMETALが持つユニークさとは何か。それは「異種混交」の発想にある。もともと全くの別ジャンルだった「ダンスポップ」と「ヘヴィメタル」を融合させた。しかも、細分化した様々なヘヴィメタルのサブジャンルや他ジャンルの音楽性も取り入れ、1曲の中に過剰に混在させた。
J-POPの常識からもヘヴィメタルの伝統からも異端だが、だからこそ、そのユニークさが海外にも受け入れられた。KOBAMETALはグループのコンセプトをこのように語っている。
BABYMETALってカレーうどんみたいな発想なんですよ。誰があれを発明したのか分かんないですけど、カレーとうどんっていう全く別のものを合わせたら意外と美味しかった。ああいう偶然の産物みたいな、いい意味での日本文化のストレンジ感があると思う。(『ミュージック・マガジン』2014年3月号、取材は筆者)
「全く別のものを合わせたら意外と美味しい」という発想は、コンセプトだけのものではない。作曲家たちもそれを音楽的に実践している。その代表が、BABYMETALの名を一躍海外に知らしめた「ギミチョコ!!」を作曲した上田剛士だ。
彼は、かつてザ・マッド・カプセル・マーケッツのメンバーとして、バンド時代にも海外進出を果たしている。その音楽性も、ハードコアパンクにテクノやインダストリアルメタルの要素を融合させたものだった。
自身の音楽の作り方について、「ブロックを組み合わせるような作業」と、彼はザ・マッド・カプセル・マーケッツ時代のインタビュー(『ロッキング・オン・ジャパン』2001年8月号)で語っている。
まるでブロックを組み合わせるかのように、様々なジャンルの音楽を「足し算」して合体させる発想が、BABYMETALのユニークな音楽性に活かされている。
次回につづく!