3 Lines Summary
- ・一冊の本が出家に駆り立てた
- ・広告塔としてすでに活躍している
- ・スマホが新興宗教をつぶす
女優の清水富美加さんが芸能界を事実上引退し、宗教団体「幸福の科学」の活動に専念する意向を示していることが分かった。清水さんは両親と共に幼い頃から教団の信者で、芸能活動では仕事や待遇面で不満があっという。この騒動は、芸能界や教団、清水さんのファンなど若者世代にどんな影響を与えるのだろうか。
古市憲寿の目線
ビックリしましたね。ただ事務所を辞めるニュースかなと思ったら、そうじゃなくて「幸福の科学」も関わっていたという事です。会社がブラックだから仕事が辛くて、辞めて宗教に行ったっていうなら、ありふれた話にも見えるんですけど。
「霊言シリーズ」でしたっけ?映画「君の名は。」の新海誠監督とか、ドラマで注目された星野源さんとか、トランプ大統領とか、とにかく流行ってる名前をどんどん使ってきたアグレッシブな宗教ですよね。
「霊言シリーズ」とは、様々な人物の『守護霊にインタビュー』したという内容をまとめた書籍群。
客観的に見ると、もうちょっと頼れる大人が、芸能界でもなく、宗教でもなく、ちょっと離れたところに誰がいればよかったのかなって思います。とはいっても、どんな宗教を信じるのも自由ですから、別にとがめられることは何もないと思います。ただもうビックリするニュースでした。
一冊の本が清水富美加を出家に駆り立てた
ジャーナリスト 江川紹子さん
宗教に専念するというのは、ありだと思います。でも今回は、何でこんなに急なのか、ということにみんながビックリしたということではないでしょうか。
教祖である大川さんはこのあいだ、タイトルの清水さんの名前を入れた本を出しました。その中には、清水さん可能性などか書かれていました。信者である清水さんからすると、教祖が書いた本は経典になるわけですから、使命を与えられたように思って、今すぐ出家だと気持ちが駆り立てられたのではないでしょうか。
私が記者会見で引っかかったのは、教団は「大きな善」と「小さな善」という言葉を挙げたようなんです。「大きな善」とは教団が考えていることやっていることです。つまり自分たちのやっていることが「大きな善」であって、それ以外の「小さな善」はどうでもいい。私は、そういう決めつけ方にカルト性を感じるんですよね。いわゆる伝統宗教は、社会となるべく調和して、だんだん認知されていったと思うんですが、新興宗教は教団の独善的な価値観が最優先なんだと言っちゃうんです。
二世信者に信仰の自由はない
清水さんの家が、どうだったかは分からないんですが、両親が教団信者だったということは、親の愛情と信仰がセットになる場合があるんですね。親が一生懸命信じていることは、否定するわけにはいきません。自分もそれを受け入れることが、親の愛情を受けられることにもなるんです。もちろん、これは必ずしも悪いことではないと思います。しかし、独善的な価値観があったり、あるいは辞めると大変なことが起きると信じていたりすると問題です。
「オウム」の場合は、まさに地獄の恐怖を叩きこんでいたわけです。「幸福の科学」も教義で、離れるっていう事や反教団的な活動をすると地獄行き、というようなことを言っているようなので、二世の人たちも、本当に「信仰の自由・選択」があるのかどうか問われているという気がします。
広告塔として活躍する清水富美加
こういう宗教団体の広告塔は、大きく二つの役割があります。一つは教団の外に向けた発信で、彼女が出た教団の映画などを一般公開して人を勧誘したり、イメージアップを狙います。もう一つは、教団の内向けの発信で、信者の人たちに向けて有名人が話をしたりします。
例えば、統一教会で言うと桜田淳子さんは今テレビにもほとんど出ないので外向きの広告塔にはなれないわけです。でも教団の中で信者の人たちに色んな物売ったり、PRする時はずいぶん活躍されているという話を聞きます。清水さんがこれからどういう役割を果たすかは分かりませんけど、大川さんが書いた彼女に関する本は、もう結構売れているようです。Amazonなどのコメントを見ていると、信者じゃなさそうな人が「興味を持って読んだ」など書いていて、すでに外向きの広告塔になっている感じがします。
新興宗教を奇異の目で見てはいけない
ライター 中川淳一郎さん
人の信仰の自由をここまで叩く必要があるのかなと思いました。
大川総裁は、あの小保方さんの霊言とかもやってるわけです。「あー、あー、あー、英語でしゃべってください」とか言って。霊言は本当にあるのか、恐山のいたこと同じようなことで本当に信頼感を得ているのか、そういうところが、なんとなく胡散臭い目で見られているところかなと思います。
今の報道は、清水さんが、なんとなく洗脳されてるんじゃないのかという向きがすごく多いわけですが、私はそれにはすごく反対です。多分「オウム真理教」が悪いと思うんですけど、我々がもうちょっと新興宗教を理解しないといけないと思うんですよ。創価学会に関して言うと、選挙の時はすごくウザイんですけど、好戦的でもないし良い人たちなんです。だから、新興宗教っていうだけで偏見の目で見るのはおかしい。清水さんに対しても、奇異の目で見るのはやめて、もうちょっと彼女の考えを聞いた方がいいんじゃないのかって思います。
以前、私がコラムの編集を担当していた女性のタレントさんがいるんですが、彼女のインタビューが創価学会と関係の深い「第三文明」っていう雑誌に出ることになったんです。そしたら発行前日にマネージャーが血相変えた様子で電話してきて「コラムに創価学会と関係ないって書いた方がいいですか?」って言うんです。これは10年ぐらい前の話なんですけど、そのぐらい芸能事務所とかは、創価学会と関わる事はヤバイんじゃないかと思っていたんです。新興宗教のことを極度に怖がってるというか、胡散臭いと思っているので、信仰をカミングアウトしたら『色』がすごいついちゃって、芸能界で仕事を続けるのは難しいでしょう。
スマホが新興宗教をつぶす
なんで新興宗教が、ここまで忌み嫌われるのか。イスラム教徒とかヒンズー教徒とかって、あんまり誘ってこないんですよ。でも新興宗教の人って誘ってくるんですよね。
信者の方々は、多分 親切心から誘ってくださってると思うんです。でも、今やスマホがあれば、心が痛いときは友達にLINEを送れば返事がすぐ来るし、いろんな情報も分かる。メールやスマホとかが発達したおかげで、宗教にすがる必要がない時代が来ちゃったと思います。多くの新興宗教は信者が減ってるという事は言いたくないと思うんですけど、明らかに減っていることは間違いありません。
死んだ彼女が「あの世で幸せ」
私には以前、婚約者がいたんですが彼女は自殺してしまいました。その母親と母親の姉が新興宗教に入っていて、まだ自殺直後だったんですが「中川さん、あなたを救ってあげる」と言われて新興宗教の寺みたいなところに行かされたんです。そうしたら、僧侶みたいな人に死んだ彼女が乗り移ったと言って「私はあの世で幸せに暮らしてます」とか話すんですよ。その後、母親とその姉から入信を進められたんですが、さっきの彼女の霊が乗り移ったっていうのはどう考えてもあり得ないと断ったんですね。ボクは、そういう新興宗教の考え方っていうものが本当に分かんないんですよ。
「統一教会」の合同結婚式に出席した桜田淳子さんは、すごい批判されて未だにそのことは語らないんですが、なんで言わないんですかね。「私の結婚式はいっぱいの人で祝ったのよ」とか、楽しそうに話してもいいのにって思います。もっと信者じゃない人でも共感できる新興宗教もあると思うんですよ。
古市憲寿の論点のまとめ
お二人とも信仰の自由があるとおっしゃってました。江川さんは「幸福の科学」にちょっとカルト性を感じるという話でしたが、中川さんは日本は宗教に対してアレルギーがあるので過剰なバッシングが起こっているのではないかという事でした。
若者と宗教ってオウム真理教が起こった20年前に注目されたテーマですね。事件を起こす前までは、テレビや雑誌がオウム真理教を好意的に取り上げていた時期もありました。でも、ああいう大事件起こして、宗教アレルギーがすごい強まった。その流れが続く中で今回のニュースがあったので、「幸福の科学」に対するバッシングもいろいろ起こってはいるんですけど、何にすがるか、何を信じるかは自由だと思います。
2月14日放送「あしたのコンパス」より
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