ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
田中均の「世界を見る眼」

日米首脳会談、異例の厚遇の後に問われる日本の振るまい方

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
【第64回】 2017年2月15日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

揺れる世界
首相訪米で異例の厚遇の思惑

 トランプ大統領が就任してからの一ヵ月、世界は揺れた。メキシコとの国境の壁建設の大統領令やTPPからの離脱表明、そしてイスラム7ヵ国からの入国の禁止の大統領令。イスラム諸国からの入国禁止については連邦裁判所の判決により効力が停止されるに至った。

 そのトランプ大統領を最初に訪問したのは、英国のメイ首相。メイ首相は訪米から帰国後、なぜトランプ大統領の訪英を招請したのか、と激しい批判にさらされる。トランプ大統領は豪州のターンブル首相の電話会談を途中で打ち切ったと伝えられる。

 そして安倍首相の訪米。安倍首相は別荘でのゴルフや何度にもわたる食事などといった異例の厚遇を受けた。首脳会談についても日米同盟関係の重要性を再確認し、トランプ大統領は尖閣諸島を含め日本への防衛義務は確固としていると明言し、通商関係についても事前の批判とはうって変わり、日本を困らせるような言動はなかった。トランプ大統領は四面楚歌的な雰囲気の中で、安倍首相との緊密な関係を演出することが好ましいと考えたのであろう。

 安倍首相にとってもトランプ大統領の思惑に乗って懐に飛び込むことが日本の利益に資すると考えたのだろう。日米同盟関係を軸に米国の東アジアにおける関与を確保するのは日本の国益のみならず地域の利益であり、日本にとって今回の安倍首相の訪米は目的を達成したと評価されると思われる。しかしこれからの課題も多く、緻密にトランプ大統領の米国との向き合い方を考えるべきなのだろう。

 筆者はこの間、英国の王立国際問題研究所(チャタムハウス)並びにシンガポールのS.ラジャラトナム国際関係学院(RSIS)の招きに応じ、ロンドン及びシンガポールで「東アジアの地政学展望と日本の対応」について講演を行った。講演後に色々な質問を受け、また、各地で知的指導者と意見交換を行ったが、やはりトランプ大統領の米国とどう向き合って行くのか、日本がどう向き合おうとしているのかは大きな関心事であった。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

 


田中均の「世界を見る眼」

西側先進国の衰退や新興国の台頭など、従来とは異なるフェーズに入った世界情勢。とりわけ中国が発言力を増すアジアにおいて、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長が、来るべき国際社会のあり方と日本が進むべき道について提言する。

「田中均の「世界を見る眼」」

⇒バックナンバー一覧