「働かないママ」の味方はどこにいるのか

ネットの子育て関連の話題を見ていると、みんな未就学児を保育園に入れて共働きしているかのように感じられる昨今だが、私のように専業主婦で未就学児を育てている人のどのくらいが働いているのか調べてみた。

平成24年(2012年)とやや古い東京都のデータだが、子育て世帯全体の共働き率は53.8%と半数を超え、6歳未満だと50%をやや下回る感じだ。子どもが1歳未満でも43%が働いている。有名な話だが、子どもが0歳のときから保育園に入れないと、枠がいっぱいになってしまうからだ。1歳以上から入れるのはきわめて難しい。保育園はどんどん増えているから、いま現在の数値はもっと多いのだろうが、それでも4割くらいは片働き家庭なのではないか。ネットなどでは「専業主婦は絶滅危惧種」のように言われたりもするが、減っているとはいえそこまでではない。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kiban/chosa_tokei/zenbun/heisei24/24gaiyo.html

私は上の子が1歳半のとき、夫の仕事の関係で東京都外から23区内に引っ越してきて、昨年もうひとり産んだので、私自身は保育園はもうあきらめている。上の息子は4月から幼稚園に通う。個人的にはメンタル不調で正社員を諦めたこともあり、子どもがいるかいないかは関係なく、正社員で働き続けている人たちは私などは足元にも及ばない優秀な人たちだと思っている。

一旦正社員のレールから外れるともう戻れない社会である。認可保育園はポイント制になっており、フルタイムの人、戻る職場がある人が優先、つまり正社員が有利だ。この人の労働は子どもを預かって助ける優先度が高い人、でもこれから仕事を探す人は優先しません、そういう人の子どもは待機児童にも数えませんとか、たとえ保育園が足りなくても、行政が優先して援助する労働とそうではない労働をランク分けするのも本来おかしいと思う。さらに保育園を必要とする理由としては親の仕事以外にもあり、病気や妊娠・出産などもあるが、これらは優先順位が低く、正社員(の親を持つ子)が全員保育園に入れたら、その後に配慮してくれるというレベルである。

「保育園落ちた日本死ね」ブログの人もインタビューで夫婦とも正社員だと書いていたし、現在は「正社員なのに保育園に入れなかった」という声がネットに溢れていて、それ以外の人は幼稚園コースに乗るしかない状況だ。それ以前にいくらかでも家にお金を入れようと思うなら、子どもを寝かしつけたあとに「1円ライター」のようなデジタル内職をするしかない。

保育園に入るのは難しいけど幼稚園は簡単かというと、全くそんなことはない。くじ引きのところもあるし、面接でもけっこう落とされる。幼稚園に入ることの大変さは報道されないので、私が調べたり体験したことをいくつか書く。

・23区の多くでは、公立の幼稚園を廃止し、子ども園に置き換えている。子ども園では幼稚園に相当する短時間保育と保育園のような長時間保育を一つの園のだが、募集人数が、短時間保育9人、長時間保育14人などで、長時間の方に偏っている。また園バスはないが、徒歩圏にくまなくあるほど多くはない
・私の住む区でも私立の幼稚園は私立しかないが、少子化と保育園人気もあり徐々に閉園したり保育園に転換している。最近近所では、ひとつ閉園、ひとつ保育園になった
・人気の幼稚園はプレに通っていないと事実上入ることができないところもある。プレというのは年少の1年前からお金を払って幼稚園に通うことで、要は幼稚園経営のための囲い込みなのだが、昨年は妊娠中ということもありぼんやりしていてそういう情報収集があまりできなかった。気付いたときには近所の人気のある幼稚園のプレはもう締め切っていたし、プレすら希望者が全員入れるわけではなく、選抜がある
・プレがない別の園は教育方針が厳しく、見学に行ったり実際に子どもを通わせている人の意見を聞いて、ここに子どもを通わせたくないと夫婦で話し合ったが、この園は預かり保育が充実しているなどで人気があり、受けても全員入れるというわけではない
・また別の園は11月の面接時点でおむつがとれていないと難しいとのことだったので、諦めた(去年の夏に出産したので、トイレトレーニングに時間とエネルギーを割けなかった)
・すべての幼稚園は併願されないために面接は同じ日にぶつけてくるので、1園かせいぜい2園しか受けられない。2園受けるためには、面接時間をずらすため、最初の園は早い時間をとるため前夜から行列に並ぶなどする(早く面接を受けた人から順番に入園させるので、前夜からの行列が必要な園もある)

下の子もおり、今年4月から上の子が行く幼稚園がないという事態は避けたかったので、教育方針が気に入って、かつ面接を受ければ(早い者順でもなく)100%入れるという園に決めて、その近くに引っ越すことにした。ベネッセのウィメンズパークという掲示板などを見るとわかるのだが、幼稚園にも激戦地域がある。私が住んでいるあたりは保育園でも激戦地域なのだが、幼稚園もそうだった。引っ越しにはコストがかかるし、いま賃貸で住んでいる場所も環境がよくて気に入っているので残念だ。

未就学児を片働きで育てるか共働きで育てるかに対して、政策は中立であってほしい。小学校以降は義務教育なので、公立であれ私立であれ小学校と名のつくところに子どもを入れなくてはならず、うちの子は家庭で教育しますというのは認められない。しかし未就学児はそうではないのだから、片働きを選びおもに家庭で子育てしたときに、政策的に著しく不利になるのはやめてほしい。

いま、正社員夫婦が認可保育園に入れて共働きをするとものすごくお得だ。特に子持ち女性が正社員のレールをいったん降りたら復帰するのはきわめて難しい。正社員だと産休育休なども充実しているし、認可保育園の保育料は、収入によって違うが、上限でも月8〜10万程度で、特に0~2歳の場合、保育士をたくさんつける必要があるので大変得である。

これは私のように(まだ幼稚園に入らない)3歳児と0歳児を育てていると特に感じることで、先日、正社員で子ども2人とも同じ年齢の人と話したのだが、彼女に「日中もずっと子ども2人と一緒なんてすごいですね」と言われた。彼女のような人は、仕事があるから3歳の上の子は保育園に預かってもらえる。でも育休中だから会社には行かなくてよく、日中は0歳児の育児だけに集中できる。うちの下の子は、生後3ヶ月から調子を崩し、深刻な症状ではないがちょくちょく小児科に行っているのだが、体調が悪いときくらい家で静かに寝かせてあげたいと思っても、上の子が遊びたがるので寒い中でも連れ出したりしなければいけない。月10日しか取れない一時保育に連日必死に電話し、予約がとれたりとれなかったりし、予約がとれると「今日は下の子をゆっくり寝かせてあげられるし、その間私は休める」とホッとするのだが、こんな苦労をしなくても平日は毎日上の子を預かってもらえる人が羨ましい。

もちろん正社員で認可保育園に落ちる人もいるが、認可保育園を利用できる人とできない人との不平等が大きすぎる。これを平等にするために、公立であれ保育園は実費(つまり大幅値上げ)にして、すべての子育て世帯にバウチャーを配るという案を池田信夫氏をはじめ多くの人が唱えているが、これが政策として検討された形跡はない。相変わらず入れる人にだけきわめてお得な認可保育園やその他公的補助がたっぷり入った保育園を増やすだけだ。これによって優先順位の高い共働き家庭には徐々に入りやすくなっていくだろうが、これから働きたい人は待っているうちに子どもが小学生になってしまうだろう。

今保育園に子どもを入れて共働きしている人だって、まだ予防接種もろくに終わっていない0歳からはできれば預けたくない人も多いだろう。正社員であること、子どもが早生まれでないこと、0歳から入れることなどといった、保育園に入れるための諸々のハードルを越えなければ共働きは難しい。そうせずに一旦仕事を休んで幼稚園ルートだと、よほど手に職などがない限り、年齢的にも微妙だしブランクもあり、仕事はパートしかなく女性が経済的に自立するというほどの収入は見込めないという現状だ。メンバーシップ型雇用を主とする日本のビジネス社会が、「いったんメンバーではなくなった人」を再度受け入れたがらないこともあるだろう。しかし共働きの場合の時間のやりくりや体力的な厳しさも多く報道されている。もう少し長く子どもと一緒にいて、その後またそれなりに働くというルートはないのだろうか。

以前、駅前で「私も働くママです!」的なバッジをつけた女性議員が演説していた。私のような「働かないママ」は誰が味方してくれるのかな、と思いながら通り過ぎた。曾野綾子とか竹田恒泰みたいな頭にカビが生えたような保守派だろうか。勘弁してください。