トランプ政権による温暖化研究への戦争が始まった

科学を信じるなら、誰もが戦わなくてはいけない

冗談のように思えますが、これは本当に起こっていることです。就任式の人数の話題で騒いでいる場合じゃありません。トランプ政権による、これまでの温暖化防止政策と環境保護の流れへの戦争が始まったのです。

[追記あり:ひとまず、EPAサイトの気候変動ページの削除は留保されていると報道がありました。ひとまずは]

最初はこちら、EPA(環境保護局)の交付金が凍結され、職員は情報をブログでも、ソーシャルメディアでもアップデートすることが禁じられました。

そして職員に対して沈黙を強いる背後で、気候変動についての情報ページを削除するように圧力が始まっているとの情報が入ってきます。

そのページとは、EPAのClimate Changeにまつわるこちらのページ。EPAは、DoEやNOAA、NASAとともに、温暖化研究や、緩和策についての研究の交付金も行っています。先日のNOAAによる「2016年は3年連続で全球平均気温の記録が更新された」というプレスリリースへのリンクもみられますね。

この情報が、もう来週にはすべて消えているかもしれません。何年もの研究と政策の結果の情報の集積が、一瞬で消えるのです。

トランプの攻撃はEPAだけではなく、USDA(農業省)の科学者にも行われているという情報もありますが、なにぶんメディアに対する緘口令が敷かれた状態での話なので詳細は匿名の通報からしかわかりません。

こうした状態に対抗して、先日の大統領就任式の人数を何倍も上回った Women’s March にならって、Scientist’s March が計画されています。

また、トランプが就任する前から、科学者たちは膨大なデータを国外にコピーする活動を行っています。

関係ないと思われるかもしれませんが、日本の気候学の研究者も米国から提供される無料のデータのおかげで研究ができているという背景があります。

これが削除されるか、あるいはほんの少しでも有料になるだけで、日本中の大学で研究が阻害されてしまうのです。また、彼らのサーバーを経由して日本の気象庁のデータなども配布されているケースもあります。

トランプ政権は「アメリカで職を生み出すため」を口実に、オバマ政権で停止していたダコタアクセスパイプライン(DAPL)や、キーストーンパイプライン計画を推し進めるように命令をしています。

そして、EPA長官には、長年EPAと争い、法廷闘争までしかけ、温暖化は「科学者の間でコンセンサスはない」と嘘をつき、懐疑論者として有名なScott Pruitt氏を推薦し、これを止める方法はなさそうです。

この一連の流れは、長年の気候変動研究の成果を、そしてもう科学者の間では異論がない人為起源の温暖化に対してとるべき行動を阻害し、将来の緩和策が効果をあげるために重要な時期において決定的な悪影響を与えかねません。

できることは少ないかもしれませんが、いまこそ科学者も、一般の市民も、日本政府も、こうした動きに対して抗議の声を上げるべきときがきていると思います。

私はできるかぎりこうしたニュース、気候変動についてのニュースなどについてMediumでまとめていきたいと思います。

この状況をみていて、私の脳裏には、トールキンの指輪物語の冒頭、滅びの指輪の秘密が魔法使いのガンダルフから語られたときに、使命におののくホビットのフロドとのやりとりが思い出されます。

「なんでこんなものがわたしのところにきたんでしょう? なぜこのわたしが選ばれたんでしょう?」
「そのような問いは誰にも答えられん」と、ガンダルフはいいました。(中略)「しかしすでにあんたは選ばれてしまった。そこであんたは、持てる限りの力と勇気と知力をふるいたてなければならんのじゃ」

そう、私たちの出番がやってきたのです。いざや進め、破滅へ!

p.s.

やるなあ、グリーンピース。効果はないけど象徴的ではある。