カツセ マサヒコ さんが 2017/01/23 に更新
「わたしたち、結婚するのかなあ」の一言から考えるべきこと【カツセマサヒコ 連載 #3】

「わたしたち、結婚するのかなあ」の一言から考えるべきこと【カツセマサヒコ 連載 #3】

素敵な異性と出会うこともあれば、長く付き合っていた人と別れることもある。仕事で大きなプロジェクトが成功することもあれば、入社以来一番大きなミスをしてしまうこともある。ライターのカツセマサヒコさんが、生きていくうえで訪れるたくさんの喜びや悲しみにそっと寄り添うエッセイ、第3回。

結婚

 
 

「わたしたち、結婚するのかなあ」
 

プレッシャーを極力感じさせないトーンで、彼女はボールを投げた。

 
「ああ、うーん、どうだろうね……?」

 
配慮も虚しく、彼は視線を落として、その球を見逃す。

 

普段の何気ない会話は、これでもかというぐらい波長が合うのに、こと結婚の話になると、彼は、どうしても話題を変えたがった。
 

とはいえ彼女自身も、焦ってはいるものの、なぜか彼と生涯を共にするイメージが沸かなくて、「ムードが壊れるくらいなら」と、一度出したボールを引っ込めることが続いていた。
 
 

「まだ30歳だよ」と彼は言い、

「もう30歳だよ」と彼女は言った。

 

 
そんなカップルが、知人にいる。
 

「男女の脳の作りは違うのだ」と思うことばかりだが、

「恋人」と「結婚相手」は、求めるべき性質が異なる点が多いことも、

彼らを観察していると見えてくる。

 

 
僕は両者の違いを、よくマクドナルドのポテトに例える。
 
 

恋人でいう相性の良さは、

「ちょっとしなしなしたやつがふたりとも好き!」

くらいが、丁度いい。
 

でも、結婚相手でいう相性の良さは、

「彼は固いやつが好きで、彼女はしなしなしたやつが好き」

くらいの違いが、大切だと思う。
 
 

要するに、

恋人は、「共通項を喜び合える人」がいい。

結婚相手は、「違いを讃え合える人」がいい。

マックのポテトは、ふたりの嫌いな部分を残して、あとは捨ててもいいかもしれない。
 
でも、結婚したら、捨てられないことが多い。

降りかかる困難を、全てふたりで、食べきらなければならない。
 

デートは、楽しければいい。

でも、生きること、共に人生を歩むことは、時に降りかかる苦労を乗り越えなければならない。
  
 

だから僕は、お互いが苦手とする部分を相手に委ねても、

ストレスなく完食できる関係が理想だと思っている。

 
長く同棲しているカップルは、「紙っぺら一枚で、何が違うんだ」と、結婚を揶揄することがある。
 
僕はこれに、「覚悟が違う」と答える。
  
 

彼がある日、罪を犯して帰ってくるかもしれない。

それをふたりで赦せるだろうか。
 

彼女がある日、罰を被って帰ってくるかもしれない。

それをふたりで分け合えるだろうか。
 

「ふたりでいること」を、どこまで諦めず、飽きられずに続けられるだろうか。
 

 

  

「わたしたち、結婚するのかなあ」
 
彼と彼女の結末は、僕にはわからない。
 
 

でも、

「お互いの痛みや苦労、罪や罰を生涯分け合ってもいい」と思えたなら、

それは結婚してみてもいいんじゃないかと思う。
 
 
そうは思えないのだったら、

無理に結婚しなくても、人生は豊かにできると思う。
 
あくまでも結婚は、人生の目標ではなく、手段に過ぎないのだから、

それに縛られすぎることはない。
 

でも、せっかく結婚するのなら、

貴方の悲しみを最小化できるような人と結ばれるのが、きっといい。

これからの苦労や困難を、笑って乗り越えられるふたりなら、きっといい。
 

貴方が、甘えず、寄り添うように歩ける人と、いつか結ばれますように。

関連する投稿


生涯未婚率上昇……ひとりで生きるなら「ソロで生きる力」を身につけよう

生涯未婚率上昇……ひとりで生きるなら「ソロで生きる力」を身につけよう

生涯未婚率とは、50歳時点における未婚者の割合を示す率。2015年の「国勢調査」によると、女性の生涯未婚率は14.1%。前回調査(5年前)と比べて3.4%上昇し、今後も生涯未婚率推移は上がる傾向にあると見られている。「ソロ社会」の到来に、私たちはどう備えると良いのか。


「私はこんな人」と明確に言えなくてもいい。曖昧なのが私たち【小島慶子 連載】

「私はこんな人」と明確に言えなくてもいい。曖昧なのが私たち【小島慶子 連載】

昨日と今日で考えていることが変わるのが人間。でも、SNSに縛られて「自分のキャラがブレていないか」「設定から逸脱していないか」と、疲れている人も少なくない。でも、とっ散らかって気まぐれなのが私たち。それでいいんじゃないか。


夫が育児・家事をしない問題、簡単な解決策は「心に余裕を持つこと」【小田桐あさぎ 連載 #5】

夫が育児・家事をしない問題、簡単な解決策は「心に余裕を持つこと」【小田桐あさぎ 連載 #5】

「夫が育児をしない」「夫が育児に非協力的」といった声は世の中少なくない。でも、元から育児に協力的な性格の夫はいないし、夫婦間のコミュニケーション次第で、夫は育児を率先してやるようになるもの。夫が自発的に育児、さらには家事に参加するようになる方法を、小田桐あさぎさんが提案する。


女性が婚活で成功する方法は「能天気力」

女性が婚活で成功する方法は「能天気力」

婚活で成功する方法。それは「能天気力」。婚活パーティーは言ってしまえば、この世で一番楽しくないパーティー。でも、その場を能天気に、自由にのびのびとふるまう女性こそ、パーティーでイイ男をさらっていくデキる女。いま、婚活女性がつけるべきは能天気力!


結婚願望が強い女性。婚活がうまくいかないときはやり方を見直そう

結婚願望が強い女性。婚活がうまくいかないときはやり方を見直そう

焦り――結婚願望が強い、婚活中の女性につきものの感情。結婚したいのに、結婚できない……そうやって悩んだあげく、つらくなり、心身のバランスを壊してしまう人がいる。行き詰ったと思ったら、やり方を見直すこと。全体を見ることが婚活成功のコツなのだ。


最新の投稿


綺麗な髪の人になる、簡単な5つの心がけ【長谷川朋美 連載 #10】

綺麗な髪の人になる、簡単な5つの心がけ【長谷川朋美 連載 #10】

髪の綺麗な人を見ると、素敵だなと感じるもの。いつも髪の毛を綺麗に保っている長谷川朋美さんに、髪やヘアスタイルへのこだわりやケア方法について、詳しく教えていただきました。


バレリーナにフォーカスした「プーマ スワンパック コレクション」が2月1日(水)より新発売

バレリーナにフォーカスした「プーマ スワンパック コレクション」が2月1日(水)より新発売

プーマが自己表現の自由を称えるウィメンズトレーニングコレクション「スワンパック」を2月1日(水)より発売予定。


萬田久子さんプロデュースのスペシャルコフレ「萬田セレクション」を1月23日(月)より限定発売

萬田久子さんプロデュースのスペシャルコフレ「萬田セレクション」を1月23日(月)より限定発売

ハーバー研究所は、1月23日(月)より、女優・萬田久子さんプロデュースのスペシャルコフレ「萬田セレクション」(12,525円/税込)を全国のショップハーバー、通信販売およびインターネットにて限定発売。


【部員さん募集】DRESSプロレス部、発足! プロレス観戦を楽しもう

【部員さん募集】DRESSプロレス部、発足! プロレス観戦を楽しもう

DRESSプロレス部が1月より発足しました。プ女子(女性のプロレスファン)が増えている昨今、プロレス観戦に興味のある女性もいるのでは? 観戦歴40年を超える、超プ女子な部長とプロレス観戦を楽しみ、プロレスで人生を楽しくしてみませんか?


夫と離婚したい。でも離婚後の将来が不安な人へ - 池田 園子の女を磨く離婚道 #1

夫と離婚したい。でも離婚後の将来が不安な人へ - 池田 園子の女を磨く離婚道 #1

夫との離婚後の将来が不安な方にお届けする、池田 園子の離婚道。「ホントに(離婚届を)出していいのかなぁ……」。ここは区役所。彼は直前になってモヤモヤし始めた様子だ。それでも、私はこの日を離婚記念日にしたかった。