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2017/1/7 最新索道レポート Niseko Village Express |
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【ビレッジエクスプレス(ニセコビレッジ)】
今回は、北海道・ニセコ町で今シーズン(2016-17シーズン)から運行を開始した2つの索道をレポート。
一般に「ニセコ」というと、ニセコユナイテッド(ニセコ全山)と呼ばれるアンヌプリ山(標高:1,308m)の斜面に拡がる4つのスキー場(グランヒラフ、ビレッジ、アンヌプリ、花園)の総称で、今回の索道は2基ともにニセコビレッジスキーリゾートに新設されたもの。
ニセコビレッジ(旧・ニセコ東山スキー場)は1982年に西武グループのコクドによって開発されたスキーリゾートで、2006年に米国のシティグループに売却された後、2010年にマレーシアのYTLホテルズに買収されました。

国内初のハイブリッドリフト、ニセコビレッジエクスプレス。
ではまず、「ニセコビレッジエクスプレス」から。同索道はハイブリッド・リフト(Hybrid
Lift)という方式の索道で、同じ索道設備にゴンドラリフトと高速リフトを混在させるシステム。デタッチャブル同士を混在させようという、理にかなったシステムです。
ハイブリット・リフトはヨーロッパや北米のスノーリゾートでは既にかなり普及していて自分も何回か利用したことがありますが、国内でコイツを見るのは初めて。ご覧のとおり同じ支曳索にゴンドラとリフトが交互に架かっています。
この方式を最初にテレミックス(TeleMix)という名称で製品化したのはPOMAで、ドッペルマイヤーではテレコンビ(Telecombi)、コンドラ(Chondola)などの名称で組み合わせインストール型の設置方法を採用。その他、各社独自の名称をつけているようです。

このようにゴンドラとリフトが交互にやって来る。
ビレッジエクスプレスは、6人乗り高速リフトとドッペルマイヤー傘下のCWAの8人乗りのゴンドラとの組み合わせで、施工は日本ケーブル梶Bゴンドラにはスキーラックは無く、キャビンの床部分の穴に板を挿す方式。ちなみに6人乗りの高速リフトは、4人乗りのクワッドに対しシックス・パック(Six-Pack)と呼ばれ、国内での導入事例はこれまで一ヶ所(広島県)のみでした。
もうひとつの新設ゴンドラは「アッパービレッジ・ゴンドラ」。ヒルトンニセコと同じYTLホテルグループのグリーンリーフ・ニセコと、ビレッジエクスプレスの上部停留所間の移動用です。こちらはMGF(単線固定式)の索道で、MGFが国内のスキー場内に架設されるのは初めて。施工は同じく日本ケーブルです。

MGFP(単線固定循環式)のニセコ・アッパービレッジゴンドラ。
今回の2つのゴンドラはホテル側の最下部に、殆どフラットに近い緩斜面のビギナーコースを新設してそこに架けたというカンジですが、ハイブリッド・リフトはオールシーズン型のリゾートに架設される場合が多く、ビレッジエクスプレスの場合もスキー専用というわけではなく、リゾート内の移動手段を兼ねた通年運行。毎日午後10時まで営業運行(スキー場終了時間以降は法令によりゴンドラ部のみ乗車可)とのことです。
また、ゲレンデに直結しているホテル(ヒルトンニセコ:旧・東山プリンス)の宿泊客の8割以上が外国人で、そのほとんどが中国かアジア諸国からの旅行者なので新設された2基のゴンドラとコースには、スノーレジャーに馴染みが薄い彼らやビギナーにスキーやボードを体験できる施設を提供するという意図★注1もあるそうです。

ニセコビレッジのホテル側。2つの新設ゴンドラはともにビギナーエリアにある。
−ニセコビレッジ2016-2017ゲレンデ案内より。
国内でも「北海道でスキー」と言えばニセコ、というくらい人気のあるニセコですが、2000年前後からオージーを中心にその素晴らしさが海外にも伝わり、一気に外国人が多数訪れるようになりました。
ピステ部分の総滑走距離は全山あわせて約50Km・索道の総数30基と、規模としてはヨーロッパや北米のスノーリゾートと比べるとかなり小ぶりながらも人気が高い理由は極上の雪質だけではなく、新千歳国際空港から近く海外からのアクセスが良いことと、道の外国人観光客の受け入れ強化の効果。昨年(2016年)9月、道は道内の外国人観光客数の数値目標を300万人から500万人に上方修正★注2しました。
実際、北海道のリゾート系スキー場には、行く度に外国人(特に中国人)の割合が増えているような気がします。冬の北海道を訪れる外国人は、パウダーを求めて欧米や南半球からやって来るスキーヤー、スノーボーダーたち以上に大陸の富裕層が急増している、というのが実情のようですね。
★注1 ソース:Mountain Watch 2016年3月1日 記事
★注2 ソース:毎日新聞 2016年9月17日 記事
名称 |
Niseko Village Express |
Niseko Upper Village Gondola |
事業者 |
YTL Hotels |
YTL Hotels |
索道の方式 |
Hybrid |
MGF(MGFP) |
開業 |
2016年12月1日 |
2016年12月1日 |
キロ程 |
816m |
250m |
最大乗車人数 |
8人/6人 |
8人(16人) |
施工 |
日本ケーブル |
日本ケーブル |
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最新索道レポート 125ATW Plateau Rosa, Cervinia |
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【イタリア / プラトーローザ(チェルヴィニア)】
今回は、イタリア最北端のアオスタ(ヴァッレ・ダオスタ州)にあるスノーエリア、チェルヴィニア(Cervinia)の索道レポート。
ここを訪れたのは2013年の3月なので、利用からだいぶ時間が経ってしまいました
。
イタリアは20の州から成る国で、北部はアルプス山脈に沿ってフランス・スイス・オーストリア・スロベニアとの国境になっています。チェルヴィニアから3本のロープウェイを乗り継ぐとプラトー・ローザ(ロザ高原)という標高3458mのアルプスの高地に着き、そこはもうスイス領です。

Doppelmyar 125-ATWの精悍なフロントマスク。
今回レポートする索道はチェルヴィニアからプラトーローザまでの最後の区間であるラーゲ・チーメ・ビアンケ
− プラトーローザ間を結ぶ125人乗りの交走式ハイスピード・ロープウェイ。2011-12シーズンのドッペルマイヤーのプロダクト・リストの表紙を飾った最新鋭キャビン、125ATWが採用された索道です。
同区間に初めて索道が架設されたのは1939年。その後拡張、搬器や索条の架け替えなどを行いながら運行が続けられていましたが、近年は輸送力増強のためのリプレイスが求められていました。
しかし、一帯は冬から夏にかけてスキー客・登山客がヨーロッパ中から訪れるモンテローザ屈指の人気エリア。同期間中は索道の運行を止められないことから、施工を担当するドッペルマイヤー・イタリアは工事を秋に集中的に行うことにして20年間に亘るメンテナンス・スケジュールを立て、2011年10月、竣工を迎えました。
その「メンテナンス」の内容は、山麓・山頂駅舎の建て替え・動力装置とブルホイール、シェーブ、ループ、索条、搬器の全交換で、実質的には完全なリプレイスです。

モンテ・チェルビーノをバックに運行中の125-ATW。
ゴンドラの乗降場は完全なフラット。さらに鉄道のようにホームドアが採用されていて安全面とバリアフリーの配慮は万全。また、搬器の下部にはビデオカメラが搭載されていて山麓駅に設置された大型モニタで山頂付近の天候やピステの状態がリアルタイムで確認できます。
ブラックを基調としたゴンドラのフロントマスクはさすがイタリアという感じで、まるでスーパーカーのよう。索道って、どれも見た目はあまりパッとしない乗り物ですが、これとウィスラーのピーク2ピーク・ゴンドラ(3S)だけは、初めて見た時、普通に「かっこいい」と思いましたね。

プラトーローザ駅の乗降場は完全なフラットでホームドア設置。
なお、搬器の側面に書かれているCERVINO(チェルビーノ)とはイタリア語でマッターホルンのこと。アルプスの山は国境をまたいでいるものが多く、例えばモンブランはイタリアではモンテ・ビアンコと呼びます。
なので、イタリア側のスキー場とスイス側のスキー場を往復する場合は国境を越えることになります。実際、たまに抜き打ちのパスポートチェックがあるそうで、ホテルのスタッフが私たちのパスポートのコピーを取って持たせてくれました(パスポート本体は持たないようにと言われた)。
幸いチェックはなかったですが、行きは索道、帰りはスキーで国境超えというレアな体験ができました。どうせなら抜き打ちに引っかかって、ゴンドラに乗る時に「入出国手続き」をやらされていれば、もっとウケたんですけどね。

「あっちだ!」
チェルヴィニアの公式紹介ビデオ
名称 |
125-ATW Plateau Rosa |
事業者 |
Cervino S.p.A. |
索道の方式 |
ATW |
開業 |
2011年11月 |
キロ程 |
2,229m |
高低差 |
645m |
山頂駅標高 |
3,458m |
山麓駅標高 |
2,813m |
支柱 |
なし |
速度(毎秒) |
12m |
搬器 |
2 |
最大乗車人数 |
125人 |
最大輸送能力(毎時) |
最大3500人(両方向) |
施工 |
Doppelmayr Italia |
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2016/3/25 最新索道レポート Piz Nair ATW, St.Moritz |
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【スイス / サンモリッツ】
今回は、2016年3月に訪れたスイスのサンモリッツ(St.Moritz)からのレポート。
スイスには何回か来ていますが、スイスのスノーリゾートは、斜面に関しては素晴らしいのひと言に尽きる反面、ほとんどが19世紀に開発されたところなので、リゾートとしては正直いまいちアカ抜けない印象を否めません。
そんな中で、洗練された正統派ヨーロッパ高級アルペンリゾートとして知られているのがサンモリッツ。日本でもお馴染みの街ですね。

山頂から氷結した湖を超えて対岸の街を結ぶ、サンモリッツ・バッド・ロープウェイ。
サンモリッツ(エンガディン)は大小あわせて11のスキー場で構成され、60本のCPTが運行しています。
CPT(Cable Propelled Transportation)とは、外部にある動力を伝えるケーブルによって推進する交通システム。すべての曳索式索道やケーブルカー(ラック式を除く)などがこれに該当します。
索道のように曳索がキャビンの上にあるものがTS(Top Supported)CPTで、ケーブルカーのように下にあるものがBS(Bottom
Suported)CPT。スイスのスキー場はとにかくケーブルカーが多いです。

ケーブルカーはBSCPT。コルヴィリア・フニクラー(コルヴィリア)
サンモリッツの場合、ロープウェイやフニクラーなどの規模の大きなCPTはコルヴィリア(Corviglia)という、サンモリッツを代表するスノーエリアに集中しています。
今回紹介する索道はコルヴィリアから標高3024mのピッツネイル(Piz Nair)山頂までスキーヤー・スノーボーダーを運ぶピッツネイル・ロープウェイ。現在のシステムになったのは2002年なので、最新索道レポートのコーナーで紹介するのは微妙ですが。

ロープウェイはTSCPT。ピッツネイル・ロープウェイ(コルヴィリア)
同ロープウェイはガラベンタの100人乗り交走式ローウェイ。スペック的には今どきのリバーシブルそのもので特に大きな特長はないんですが、山頂駅の標高3024mは自分が今まで利用した普通索道では4番目に高いもの。
因みに利用した中で山頂駅の標高が一番高かったのはマッターホルン・ロープウェイの3883m。2番目は3458mで、次回その索道のレポートをアップする予定なので乞うご期待。3番目は以前ここでレポートしたシム・キャロン・ロープウェイの3161m。
なお、世界一高いロープウェイ山頂駅は、標高13000フィート(約3963m)のものが2014年に南米(ボリビア)にオープンしたようです。ミ・テレフェリコというMGDの都市型ロープウェイ★注ですが、まぁ自分が利用することは一生ないでしょうね。

FISワールドカップ2016・男子スーパーG決勝の様子。優勝は地元スイス。
サンモリッツでは、ちょうどFISワールドカップ2016が開催中で、街はライブイベントやエアーショーでおおいに盛り上がっていました。
2015-16シーズンのヨーロッパは雪不足でWCの会場の変更が相次ぎましたが、サンモリッツは雪たっぷりで全く問題なし。3月でもピステのコンディションは最高でした。
サンモリッツの公式紹介ビデオ
名称 |
Piz Nair AT, Corvigilia, St.Moritz |
事業者 |
St.Moritz Engadin Mountains |
索道の方式 |
ATW |
ゴンドラタイプ |
Gangloff Cabin1 |
開業 |
2002年 |
キロ程 |
2,418m |
高低差 |
543m |
山頂駅標高 |
3,024m |
山麓駅標高 |
2,490m |
速度(毎秒) |
10m |
搬器 |
2 |
最大乗車人数 |
100人 |
最大輸送(毎時) |
720人 |
施工 |
Garaventa |
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★注 都市型ロープウェイは、ヨーロッパや北米より、コロムビア・ベネズエラ・ブラジルなどの南米や北アフリカ、アジアに多い。
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2015/2/15 最新索道レポート 8-MGD Borest ,Badia |
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【イタリア / ドロミテスーパースキー】
今回は、2015年2月に訪れたイタリアのドロミテ・スーパースキー(Dolomiti Super
Ski)の索道レポート。
ドロミテ山塊は北イタリア東部のオーストリア国境付近に広がる総面積14万1903へクタール(千葉県・埼玉県・東京都・神奈川県の合計より大きい)の山岳地帯で、その独特な山容と美しい自然景観、地形・地質学的価値により世界遺産に登録されています。

独特な山容が連なるドロミテ山塊を往くラ・バレス・ロープウェイ (コルチナ)。
ドロミテ・スーパースキーは単体のスキー場の名称ではなく、ドロミテ山塊の12の広大なスノーエリアの総称。ここに架る索道の総数は450基以上。エリア内には大きな町も点在しているため、スキーと索道だけでなく山岳鉄道や登山バスでも移動できるという、スキー場の集合体という括りでは文句なく「世界最大」のスノーエリアです。
滞在したのは「ドロミテの真珠」と言われるアルペンリゾート、コルチナ・ダンペッツォ(Cortina
d'Ampezzo)。ここはこれまで紹介してきたスノーリゾートのように20世紀以降に開発された街ではなく、中世以前から人の営みがある街。1956年に開催された冬季オリンピックでは、日本人初のアルペン競技でのメダリスト★注が誕生したことから、日本にも馴染みのある街です。

セラロンダ(時計回り)のスタート地点のコルバラ。
今回紹介する最新索道は、今シーズン(14-15シーズン)から運行を開始したライトナーの8-MGD。これはドロミテ名物「セラロンダ」で利用しました。
セラロンダ(Sellaronda)とは「セラ一周」という意味で、ドロミテの中央にあるセラ山群を取り囲む山々の斜面をスキーと14本の索道で1日かけて一回りするツアーのこと。セラロンダは基本的にセラ山群を包囲するスノーエリアのどこからスタートしても良いのですが、一般的に起点とされているのがコルバラ(Corvara)というスノーエリア。
ここから時計回り・反時計回りのどちらかでスタートして同じ場所に戻ってくる、という行程になります。
時計回りの場合、最後の区間となるボレスト(Borest)のColfosco→Corvara間にオープンしたのが8-MGD。ライトナーの最新制御システム「LeitControl」が採用されたゴンドラです。

8-MGDのColfosco停留所。セラロンダ完走まであとわずか。
LeitControlの基本コンセプトは、ハードウェアに基づくシステムの一元管理。すべてのプロセスをモジュール化することにより、日々のオペレーションの効率化と障害発生時における迅速な原因の切り分けを可能にし、それらをすべて操作卓の直観的なグラフィカル・インタフェースにより集中制御することができます。
搬器はCWA製の円錐状の8人乗りタイプ。ご覧のようにスキー・スノーボードラックを設置せず、板をキャビン内に持ち込む方式になっており、Twist-Inという同社の特許であるキャビン外周をドアがスライドするメカニズムにより安全で迅速な乗降が可能になっています。また、運行装置もダイレクトドライブ方式の採用と4基のインバータにより駆動装置の速度を落とすことなく従来のリフトシステムから15dbもの騒音の低減に成功しています。
なお、コルチナからから車で約2時間のクロンプラッツ(Kronplatz /AKA:プラン・デ・コロネス:Plan de Corones)には、以前このコーナーで取り上げたライトナー・ポーマのWi-Fi対応索道「One」のシリーズ第2弾となる「Alpen」が先シーズン(13-14シーズン)から運行を開始しています。

イタリアアルプスに飛び込んでいくようなトファーナの斜面。
コルチナ周辺のスノーエリアはハードパックされたバーンが主体。どんな急斜面でもコース幅分きっちりと踏んであります。スーパースキーの名の通り、スキーとボードの比率が9対1くらいで圧倒的にスキーヤーが多く、スキーを楽しんでいるというよりスピードを楽しんでいるという感じで皆さんカリカリのアイスバーンをかっ飛んでます。子供の頃からこの環境で練習しているイタリアの選手が強い訳です。
今回のドロミテにも、国内では見られないユニークな索道がたくさんありました。そのへんのハナシは別の機会にまとめて特集する予定(未定 )です。
ドロミテスーパースキーの公式紹介ビデオ
名称 |
8-MGD Borest, Corviglia Badia |
事業者 |
Dolomiti Super Ski |
索道の方式 |
MGD |
開業 |
2014年12月 |
キロ程 |
1,294m |
高低差 |
58.8m |
山頂駅標高 |
1,604.8m |
山麓駅標高 |
1,545.9m |
速度(毎秒) |
6m |
搬器 |
63 |
最大乗車人数 |
8人 |
最大輸送能力(毎時) |
3000人 |
施工 |
Leitner |
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★注 猪谷千春選手(男子回転)の銀メダル。2014年のソチ大会での竹内智香選手(アルペンスノーボード女子パラレル大回転)の銀メダルまで58年間、日本人のアルペン競技唯一のメダルだった。 |
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2014/3/7 最新索道レポート Vail Mountain Gondola One |
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【アメリカ合衆国 / ベイル】
2013年3月31日より成田-デンバー間の直行便が就航し、ぐっと身近になった米国コロラド州。そこで今回(2014年3月)訪れたのは、コロラドにある米国最大のスノーリゾート、ベイル(Vail)。
Like Nothing on Earth − この世のものと思えない(ほど素晴らしい) −と言われるベイルの標高3400mのバックボウルと3500mのブルースカイ・ベイスンには、世界中のパウダー好きのスキーヤー・スノーボーダーが集まります。

まさに'Like Nothing on Earth'の、ベイルのブルースカイ・ベイスン。
1962年開業のベイルは、北米に於ける現代スノーリゾートのパイオニア的な存在。カナダのウィスラーもここをお手本として開発されました。
ベイルには開業50周年だった昨シーズン(12-13シーズン)に運行を開始したハイテクゴンドラがあります。その名もゴンドラ・ワン(Gondola
One)。
Oneという名には、このゴンドラが建設される前に同じ場所に通称・Express Oneと呼ばれた高速クワッド(Vista
Bahn Express)が架かっていたことに加え、One of a Kind(唯一無二の)という意味が込められており、設計・施工を担当したライトナー/ポーマ・オブ・アメリカの自信のほどが窺えます。
goゴゴンドラ・ワン(ベイル) 
ゴンドラ・ワンはシルバーを基調とした洗練されたデザイン。この搬器は、スキー場ではおなじみの4座の「タマゴンドラ」を今から50年前に初めて開発したフランスの車輌メーカー、シグマ社の製作です。
ご覧の通り、見た目にそれほど大きな特徴はなく、普通の自動循環式のゴンドラリフトのイメージで、山麓・山頂の停留所も小ぶりです。さっそく乗り込んでみると、おや?、シートが暖かい。シートはヒーター内蔵で快適。さらにキャビン内には「Free Wi-Fi」の文字が。
−なぜ、ゴンドラにWi-Fiか−
先シーズンあたりから、国内にもトロワバレーの記事で紹介したGPS機能を利用したスマホアプリを提供するスキー場が登場しましたが、欧米のスノーリゾートでは、スノーエリア内の位置情報だけでなく、専用のSNS的なコミュニケーション・ツールを加えた形のアプリが主流となりつつあります。

Wi-Fi使えます。
しかし、こういったデータ通信利用のアプリはその国の人は良いけれど、海外からの旅行者の場合は現地キャリアのローミングサービスを使うことになり、特に広大なスノーエリアの場合、うっかり契約キャリアと海外ローミング提携をしていない現地キャリア経由で接続したまま半日もネットをすれば、課金請求100万円なんてことも普通に起きてしまいます。
なので、ブログを書いたりSNSを覗いたりするのはセンターハウスやホテルに戻ってから、ということになり、ネットの持つリアルタイム性が半減です。
そこで、ゴンドラの中でタダでネットできるよ!というのが、この無料Wi-Fiサービスなのです。海外からの利用者が多いベイルならではサービス、これはありがたい。実はこの記事もゴンドラの中で書いてます(ウソ)。
また、ゴンドラには随所に工夫がなされており、スキー/スノーボード・ラックも様々な形状のマテリアルに対応していて、国内のゴンドラリフトの長板時代のままのスキーラックでは片方ずつしか入らなかった今の自分の板(ファット系のツインチップ)が、初めて「一台」として入りました。
その他、ゴンドラ・ワンについてはYoutubeのInFilms & Design Presents: Leitner-Poma of America - New Vail One Gondola
System, Vail, Colorado でその全貌を知ることが出来ます。
こういった新しいサービスを建設ブログやティーザーなどを効果的に使いながら予告し、オープンまでに広めていくというメディア戦略を始めたのもベイルが元祖。建設・営業・広報・サービスが一体となって進めるプロジェクトはそれだけでドラマになり、それをまた宣伝に使うという手法は、アスペンやウィスラー、ビーバークリークといった北米の後発スノーリゾートに受け継がれています。

バックボウル名物、Sun Down Bowl(サンダウン・ボウル)へGO!
来年(2015年)は1999年に続いて2度目の世界アルペンの会場となるベイル。森林限界の高いロッキー山脈では標高3430mのバックボウルにもツリーラン向きの森があります。
パウダー好きの人は、是非訪れてみて下さい、オススメです。
ベイルリゾートの公式紹介ビデオ
名称 |
Vail Gondola One |
事業者 |
VAIL Resorts (ベイルリゾート) |
索道の方式 |
MGD |
ゴンドラタイプ |
Sigma Diamond Cabin 10 |
開業 |
2012年 |
キロ程 |
2,757m |
高低差 |
603m |
山頂駅標高 |
3,109m |
山麓駅標高 |
2,506m |
速度(毎秒) |
6.1m |
搬器 |
111 |
最大乗車人数 |
10人 |
最大輸送(毎時) |
3600人 |
施工 |
Leitner-Poma |
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2012/3/24 最新索道レポート Cim de Caron Aerial Tramway |
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【フランス / バルトランス(トロワバレー)】
今回訪れたのは、フランスのトロワバレー。志賀高原全山の約50倍の面積を持ち、ピステ部分だけで総滑走距離600kmという、世界最大級のスノーエリアです。
「3つの谷」を意味するトロワバレー (Les 3 Vallees)には、ここを代表するスノーリゾートであるバルトランス(Val
Thorens)と、W杯やオリンピックでアルペン/フリースタイル競技がおこなわれたメリベル(Meribel)のほか、クーシュベル(Courchevel)、レ・メニュエール(Les
Menuires)など、全部で8つのスキー場があり、その間をスキーと索道で移動します。

トロワバレーから望むフレンチアルプスの山々。
滞在したバルトランスは、標高2300mの高地にあり、森林限界を超えているため、街には木が一本もありません。 圧巻なのは、ここではスキーイン/アウトが基本なので、街の建物の「軒先」を複数のリフトが通っていること。街なかをゴンドラ(舟)が通るヴェネチア(イタリア)が水の都なら、街なかをゴンドラならぬリフトが通るバルトランスは「雪の都」といったところ。

軒先をリフトが通るバルトランスの街。
地理的にはスイスに近いこの地方では、古くから山スキーが盛んだったそうですが、国によるリゾート開発が行なわれ、トロワバレーとして1枚の共通券で行き来ができるようになったのは1971年のこと。
現在トロワバレーに架かる索道は全部で200基以上、ロープウェイ・フニテル・ゴンドラ・リフト・Tバー/Jバー・ムービングベルトが駆使されています。ツェルマットやサンモリッツ、シャモニーといった欧州の古典的なスノーリゾートと比べると比較的最近開発されたところだけに、各ゲレンデやそれを結ぶ索道は非常に機能的に配置されていて、長時間漕いだり、板を担ぐことはほぼありません。
他のスノーエリアへの移動には何度も索道を利用することになる訳ですが、2連・3連フニテル、6人乗り・8人乗りデタッチャブルリフトなど国内では目にする機会が少ない(無い)索道のオンパレード。

3連フニテル。
バルトランスには標高3200mのフレンチアルプスの高峰、シム・キャロン(Cim
Caron)の頂上までスキーヤー・スノーボーダーを運ぶ、151人乗りの交走式のロープウェイがあります。ここの山頂駅の標高は3161m。山頂からはモンブランが見えます。キャロン自体の標高も、日本では富士山に次ぐ高さの山梨県・南アルプスの北岳(3193m)を上回っているため、ここからのダウンヒルは実に爽快。
今回利用したのは2010年に交換されたばかりの新造搬器。スイスの車輌メーカー、ガングロフ社製のこの最新鋭搬器は、キャビン内が3つの区画に仕切られ、両側の扉が同時に開くことにより、乗客が効率良く乗降出来るように設計されています。雪の重みとアルプスの強風に耐えられるように造られたフレームは強化軽量アルミ製、ボディは総アクリルガラス製のため剛性と展望に優れ、同社の工業デザイナーチームによる、メタリック・グレイとメタリック・レッドの搬器のデザインもヨーロッパらしくスマートで洗練されたものです。

シム・キャロンロープウェイ(バルトランス)
それにしても、ここは本当に広いです。トロワバレーのゲレンデマップはA3用紙の2倍くらいあるため、マップがわりに使えるトロワバレーとBMW社の共同開発による専用のiphoneアプリ(現在地・滑走距離・目的地へのナビ機能・パトロールの緊急呼び出し機能付:現地で無料ダウンロードできる)が有るほどです。
また、今回一番驚いたのは、これだけ広大なスノーエリアでありながら、どこへ行ってもかなり人が多く、人があまり行きそうもない氷河の上の方などのリフトでも「リフト待ち」があったこと。人気のピステなどでは30分待ちなんて当たり前。ヨーロッパのスキー・スノーボードの浸透度は「ブーム」とか「生涯スポーツとして奨励」とか、そんな次元ではないことを実感しました。
バルトランスの公式紹介ビデオ
名称 |
Cim de Caron Aerial Tramway |
索道の方式 |
ATW(1Propulslon/3Support) |
ゴンドラタイプ |
Gangloff Cabin2 |
開業 |
1982年 |
水平長 |
1,600m |
傾斜長 |
1,850m |
高低差 |
850m |
山頂駅標高 |
3,161m |
山麓駅標高 |
2,311m |
支柱(基) |
1 |
速度(毎秒) |
12m |
搬器 |
2 |
最大乗車人数 |
151人 |
最大輸送(毎時) |
1700人 |
施工 |
Poma |
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2010/3/6 最新索道レポート THE PEAK 2 PEAK GONDOLA |
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【カナダ/ ウィスラー】
3月の初めに、北米ナンバーワン・スノーリゾートとして、日本のスキー・スノーボードファンにもおなじみの、カナダのウィスラー/ブラッコムに行ってきました。
そこで今回は、同スキー場に昨シーズンオープンしたウワサのスーパーゴンドラ、PEAK
2 PEAK GONDOLA(ピーク・トゥ・ピーク・ゴンドラ)について、レポートします。
ピーク2ピーク・ゴンドラは、今年(2010年)のバンクーバー冬季五輪のアルペンスキーの会場にもなったウィスラーMt.と、隣接するブラッコムMt.を、その名の通りピーク側で結ぶという、画期的な索道。

ピーク2ピークゴンドラ (ドッペルマイヤー 3Sシステム)
この総工費43億円の壮大な索道建設プロジェクトは、2007年4月の起工から2008年12月の竣工までの20ヶ月間、公式サイト内のブログと、ビデオ(かっこいいティーザーあり)で工事の進捗の様子がリアルタイムでアップデートされ、世界中のスノーファン・索道ファンの注目を集めました。
ピーク2ピーク・ゴンドラで採用されているシステムは、世界最大の索道メーカー、Doppelmayr(ドッペルマイヤー)の「3Sシステム」。
トライケーブル・デタッチャブルの頂点に立つ同社のフラッグシップ・プロダクトで、ドッペルマイヤーの傘下にあるCWAの洗練されたデザインの搬器(3Sキャビン)が目印。
3Sのノウハウは1996年にドッペルマイヤーによって開発され、デビューは2002年のバルディゼール(フランス)。現在、キッツビューエル(オーストリア)、ウィスラー、ボルツァーノ(イタリア)などのスノーリゾート(マウンテンリゾート)を中心に、世界6カ国9箇所で運行中。

雄大なカナディアンロッキーをバックに運行する、ピーク2ピーク・ゴンドラ。
ゴンドラの乗り心地は、とても静かで速い、という印象で、走行中の振動もほとんど無く、フニテルのような安定感がありました。ゴンドラは全部で28機あり、1機が28人乗りと自動循環式としては大きく、キャビンには24席のシートがあるので、「運の悪い4人」以外は、板を持ったまま11分間立っている必要はありません。
ウィスラーは、オールシーズンのマウンテンリゾートなので、ピーク2ピーク・ゴンドラは通年で運行します。そのため、バリアフリーも徹底していて、駅舎も階段や段差を極力排除した設計になっていました。

シンフォニー・エクスプレス(ウィスラー)
ヨーロッパや北米の、ハイエンドなスノーリゾートが最新テクノロジーの索道の導入に莫大な投資を惜しまない理由は、索道の性能が彼らの収益に直結するから。
ウィスラーでは、06-07シーズンにも総工費9億円以上をかけ、ウィスラーMt.の森林限界を超えるBCエリアまで(ピッコロ・サミット)スキーヤー・スノーボーダーを一気に運ぶ高速リフトSymphony
Express(シンフォニー・エクスプレス)を新設しています。
ウィスラー/ブラッコムの公式紹介ビデオ
名称 |
The Peak 2 Peak Gondola |
事業者 |
INTRAWEST (イントラウエスト) |
索道の方式 |
28-TGD/3S |
ゴンドラタイプ |
Doppelmayr 3s bahn (ドッペルマイヤー 3S ) |
総延長 |
4,400m |
最高所 |
地上436m ★ |
搬器の数 |
28 |
支柱(基) |
4 |
支柱の最大径間 |
3,024m ★ |
支柱の高さ |
35-65m |
速度(毎秒) |
7.5m |
発車周期 |
49秒に1台 |
乗車時間 |
11分 |
最大乗車人数 |
28人 |
最大輸送(毎時) |
4,100人(片道2,050人) |
施工 |
Doppelmayr |
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★印は世界記録。また、連続的に接続されているリフトシステム(Whistler Village
Gondola - Peak 2 Peak Gondola - Solar Coaster Express - Wizard Express)の総延長も世界一。
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