こんにちは。悪の組織です。
前回まではこちら。
ボスの思い付きでヒーロー襲撃訓練を行うことになりました。
日程を決めて、役割分担を行い、いよいよ訓練当日です。
当日ですが…。
「とはいえ、ウチの都合で他所様にご迷惑はかけられない。通常業務は滞りなく。」
とゆー矛盾したボスの命令により、参加者限定で行われることになりました。
企画から間が空くとテンションが下がる…。
あるあるですね。
・・・
ブーッ!ブーッ!
サイレンが鳴り響きます。
「A地区より侵入者!A地区担当の戦闘員は至急侵入者を排除せよ!」
ボス、訓練開始です。
A地区より侵入したヒーローがB地区まで進み、幹部を倒してボスの間まで辿りつきます。
間接部門のメンバーは予め決められた備品や書類を持ち出し、所定のルートを通って脱出します。
「待て。なぜ脱出する必要がある?」
いや、ボスがやられることも想定してますし…。
「余がやられるだと?!そんなことあるわけなかろう!」
す、すみません!
「で、状況はどうだ?」
…A地区担当、報告を。
「戦闘員全滅です。突破されました!」
「早すぎないか?」
まぁ、訓練ですからね。
「戦闘員の訓練参加人数は何名だ?」
…。
「…。課長…。」
仕方ない。答えろ。
「2名です。」
「なぜそんなに少ない!全く!大事な訓練だぞ!どうなっておる!」
…。
通常業務に出払っております。
ボスがそうしろって言いましたからね!
「…。ならよい。次は幹部だ。全員おるのか?」
ええ。幹部は全員おります。
他の組織の失敗事例を見習い、一部屋ずつ幹部を配置するのではなく、一部屋に全員配置しました。
幹部が1人やられてるのに部屋で待ってるなんて馬鹿なことはさせませんよ。
「ダメだ。1人、一部屋だ。」
え??
それでは各個撃破されてしまいますよ?
「他所はそうなんだろう?幹部が大勢など前例がない。」
ですから画期的な…。
「ダメだ。他所に笑われるわ!伝統を忘れたとな!」
でも…。
「1人、一部屋だ!余の前に来るまでにヒーローを消耗させるのだ!」
いやいやたどり着く前に始末する方向がベストでしょう?!
「我々は昔からこうしてきたのだ!そしてこれからもだ!」
…。だから悪の栄えた試し無しなんだよな…。
…分かりました。
B地区幹部へ。
フォーメーション変更。パターン3へ。
想定はしてたからね。。。
…。
1人一部屋だと間取りの関係でヒーローに会わない幹部も出るけどなぁ。
はい。じゃあ幹部全員倒されましたっと。
いよいよボスの間にヒーローが来ます。
「ウム。いよいよ余の出番だな。記録カメラは問題ないか?ウム。良いぞ!」
はい!ヒーロー!入ってこい!
バーン!
…。
「…。」
「お、お前は…。鬼ころし…。」
ど、どうしてお前がヒーロー役?!
「あ、はい。先輩に変わってくれと頼まれました!自分!精一杯やります!」
なんという運命のイタズラ。
組織で1番、悪役顔の鬼ころしがヒーロー役とは…。
ボスの何倍もボスのオーラが出てるな。
しかもちょっと大役に張り切ってるじゃないか…。
ニヤついた悪そうな顔がそれを物語ってる。
ボ、ボス…。
※画像はあくまでもイメージです
「ま、まぁ良い。続けよう。…フ、フハハハ!よくここまで来たな!ヒーローよ!」
お年寄りが精一杯、声を張り上げます。
「とうとうここまで追いつめたぞ!覚悟しろ!お前がボスだな!」
声は若い。
しかし顔が完全にラスボス級のヒーローが応えます。
「よし、鬼ころし。余を殴れ!これも訓練だぞ!」
「え?え?いいんですか!?課長?」
いいよ。いいって言ってるし。
「軽くな!軽くだぞっ!」
私が止めると思ったのか?
いけ!鬼ころし!
「はい!!」
「○ね!」
迫力だけは満点の鬼ころしが渾身のストレートを放ちます。
ポコッ!
ボスのおでこに拳が当たると実に可愛らしい音が鳴りました。
「グホベッ!ガハッ!グオオオォ!」
お年寄りから情けない声が上がります。
ボスの戦闘力は5しかないゴミだからな…。
でも鬼ころしも弱いんだけど。
「貴様っ!軽くと言っただろうが!○ねって言ったろ?!」
「言ってません!」
聞いてません!
「ふん!今度は余の戦闘訓練だ!余が殴る!」
「え?き、聞いてませんよ!?課長!」
ではボス。思いっきりどうぞ。
「ふん!食らうがよい!余の暗黒の技を!」
「ヒッ!」
気の小さい鬼ころしから悲鳴が漏れます。
「ダァァァクッ!カイザァァァッ!パァァァンチッ!」
間の抜けた必殺技名を叫びながらゆっくりと鬼ころしに近づいていくボス。
鬼ころしの頬にボスの拳が炸裂します。
ペチッ!
こちらも可愛らしい音が鳴りました。
「ギャヒッ!グウォォォ…。」
その人相も相まって人外の悲鳴をあげる鬼ころし。
双方ダメージは深刻のようです…。
弱い…。マジで弱いなコイツら…。
何だこの茶番は…。
これが訓練なのか…。
意味あるのか…。
私は脱出経路と持ち出すべき資料、壊滅後の転職先等に思いを馳せながら、2人の訓練をボーッと眺めていました。
「グハッッ!」
壊滅した場合、組織の残資産はどのように整理されるのだろうか…。
ベシィッ!
「ギャンッ!!」
倒産と同じ扱いなのか?給料の先取得権はあるのか…?
取引先より、先に差し押さえる手はずを整える必要があるな。
ゴンッ!
「き、貴様~」
この場合、国の未払い賃金立替払い制度は利用できるのか?
退職とは違うからなぁ。
あ、後は失業給付か。
ゴツンッ!
「ウッ!!か、課長…」
そもそも壊滅したら離職票出せないから失業給付が受けられない??
雇われ全員が困るな。。。
となると、何とかして実印を避難持ち出しリストに組み込みたいな…。
そうすれば最悪、こっちで発行できる。
しかし、実印は親族が手放さないだろうし難しいか…。
バタン!!
「ガハッッ!た、助け…」
途中、蹲ったボスの腹に鬼ころしが蹴りを入れたところで止めに入り、訓練は終了。
ボスが泣いていたので、鬼ころしはクビになるかもしれないな…。
1番の危機管理は転職先を確保する。
これだなきっと。