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女性プログラマーに“熱視線”

14.2%”。これは、「プログラマー」や「システムエンジニア」の職に就いている人のうち女性の占める割合です。(平成27年国勢調査より)
圧倒的に男性が多い技術者の職場ですが、ここ数年、スマートフォンの急速な普及などで、女性向けのアプリなどが求められるようになり、企業も、女性プログラマーの育成に力を入れ始めています。
各地で開かれているプログラミング講座にも、女性の参加者が目立つようになってきました。かつては壁が高いと思われていたプログラマーの世界に、女性が次々に挑戦しています。

プログラミング講座に詰めかける女性たち

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今月、東京・新宿区で開かれた初心者向けのプログラミング講座。この日は、20代から30代の10人ほどが、2か月間講座で学んだ知識を基に開発した独自のWEBサービスを発表しました。目立ったのは女性の姿、半分が女性でした。

税金の控除額を計算するシステムを発表したのは、金融機関に勤める20代の女性。会社では、信託口座を扱う事務などをしていますが、会社のシステムが使いづらいと日ごろから感じていて、もっと使いやすいものを自分で作れないかと、参加しました。これまでプログラミングを書いた経験はありませんでしたが、仕事帰りに講座に通い、自宅でプログラミングを書き上げました。

女性は「1つの機能を実現するために100時間くらいかかり、大変でしたけど楽しかったです。仕事の幅が広がりました」と話していました。

また、医療機関で事務の仕事をしている20代の女性は、ダイエットの目標を立てて、毎日、体重などのデータを打ち込むと、計画どおりに体重の管理ができているか把握できるWEBサービスを発表しました。チャット機能もつけて、友人どうしで励まし合いながら、ダイエットに取り組めるよう工夫をこらしました。

この女性は「プログラミングは、男性のものというイメージがありましたが、つまずきながら先生に何度も質問したり試行錯誤したりして、自分の作ったものが動いたときはうれしかったです」と話していました。

主婦も学習 「将来のために」

プログラミング講座を受講するのは、会社員ばかりではありません。長崎県に住む、34歳の梅下理香子さん。3歳の子どもを抱える主婦です。梅下さんは、ことし10月、子育てのために勤めていた会社を退職しましたが、在宅でもできる仕事をしたいと、受講を始めました。

子育ての合間に、週に5時間から8時間、インターネットを通じてビデオチャットのマンツーマン授業を受け、JavaScriptやHTMLといった、ウェブプログラミングの基礎を学んでいます。

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「プログラミングの技術を身につけておけば、在宅など場所を選ばなくてもずっと仕事が続けられると思いました。将来の生活設計を考えて、今、学んでおくべきだと考えました」(梅下さん)

講座は、これまで3年間でおよそ1万5000人が受講しています。
講座を始めた3年前は、女性の受講者は1割にも満たないほどでしたが、去年の半ばごろから増え始め、最近では受講者の3分の1を女性が占めるまでになりました。

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講座を開いている「CodeCamp」取締役の米田昌悟さんは、「受講を希望する女性は10代から60代まで幅広く、ほとんどが初心者だが、多くは隙間時間を活用したいと考えて受講している。在宅でアプリ開発をやりたい主婦やフリーランスでプログラムの仕事をしたいと考えている女性も増えている」と話しています。

女性が開発したアプリが大注目 実用性に強みか

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女性が開発したアプリの中には大ヒットするものも出てきています。

ダウンロード数が600万を突破した家計簿アプリ「Zaim」。
レシートをカメラで撮影すると、出費の内容を簡単に記録できるほか、自分の金融機関の口座を登録すると、1か月の出費や収入の内訳を、グラフで簡単に表示できます。

ITベンチャーに勤めていた閑歳孝子さんが、5年前、会社の業務とは別に、趣味で制作して公開しました。すると、またたくまにヒット。会社を独立してこのサービスを運営する会社を立ち上げるまでになりました。

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「開発を始めた当時は、いまほどスマートフォンが普及していませんでしたが、そのうち、多くの女性が使うようになると思いました。そのころの家計簿アプリと言えば、ボタンや数字が多く並び、女性が直感的に使いづらいもので、だれが見ても使いやすいアプリの開発をしたいと考えました。姉や女性の親類、仲のいい友人から話しを聞いて、例えば支出の分類に、女性がよく使う“カフェ”の項目を設けるなどして、女性がより使いやすい工夫をしました」(閑歳さん)

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10代の若い世代が作ったアプリも人気です。
およそ10万ダウンロードされた「見えるプレゼンタイマー」というアプリは、開発当時、中学2年生だった角南萌さんがつくりました。
プレゼンテーションの発表内容ごとの時間配分を決めておくと、それに応じた残り時間が表示されます。

角南さんは、東京の中高生向けのプログラミング教室に通ってこのアプリを開発しました。教室を運営している「ライフイズテック」によりますと、教室には男子生徒のほうが多いにもかかわらず、卒業生が作ったアプリのダウンロード数を調べてみると、上位の6位までを女性が開発したアプリが独占していたということです。

1位の「見えるプレゼンタイマー」をはじめ、お弁当の献立を考える手助けをしてくれるアプリなど、実用的な視点で作られていることが、人気につながっているのではないかとしています。

「ライフイズテック」の広報の亀田奈津子さんは「男の子は、技術を試してみたいと考えて、アプリを作り始めるケースが比較的多いが、女の子は、どんなアプリを使いたいか、実用面を考える傾向が強い。日常生活で使うアプリの制作には、女の子はとてもあっているのではないか」と話しています。

商品開発に欠かせない存在に

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こうした女性プログラマーの力に、企業は大きな期待を寄せ始めています。

動画サービスやオンラインゲームなどを手がけるDMM。
これまで、女性向けのゲームはすべて、男性社員が中心となって開発に当たってきました。数少ない女性社員の意見は取り入れてきましたが、企画や開発の段階から女性に任せるとさらに女性にアピールするものが作れるのではないかと考えています。

ことし5月に、社内に立ち上げたのが「エンジニア女子会」です。2か月から、3か月に1回開いていて、東京と金沢の開発拠点を結んで、女性エンジニアだけが集まって、日ごろの悩み相談や仕事に関する意見交換を行っています。

また去年の年末には、若手の女性技術者11人が集まり、女性だけで試験的にゲームの立案、開発、製品化まですべてを行いました。
プレーヤーが職場にいるイケメン男性と会話をしながら、恋愛の駆け引きを楽しむウェブ上で遊ぶゲームで、社内でイケメンと言われている男性をモチーフに、キャラクターをつくりました。「体調が悪いのを気遣ってくれる優しいセリフ」を設定するなど、女性の目線からの「こうして欲しい感」が盛り込まれています。公開予定はないということですが、評価は上々だということです。

DMMグループ人事本部の沼野井伸拡さんは「新たな商品の開発には、女性の視点が欠かせなくなってきていていて、女性のエンジニアの育成には力を入れていきたい。また、プログラミングは、在宅勤務にも適応できる仕事で、欧米では女性が活用している例が多い。今後、こうした制度の導入も検討し、女性の力が大きくいかせる職場を目指したい」と話しています。

女性技術者の卵 青田買い

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開発現場でますます求められるようになっている女性の視点。若い優秀な女性を早い段階から確保しようと、企業も積極的に動いています。

今月、東京都内で開かれた女子学生のためのプログラミングコンテスト。ヤフーやぐるなび、サイボウズといったIT企業や、開発現場でプログラミングを必要としている製造業など10の企業が協賛し、技術者を送り込んで、学生たちをサポートしました。

コンテストは、理系だけでなく法学部や文学部など文系の学生も多く参加していました。

システム開発会社の「日本ビジネスシステムズ」の牧田和也副社長は「以前、偶然、女性だけのチームで医薬品の検査システムのソフトを開発したことがあるが、グラフやデータが、男性がかかわったソフトに比べてはるかに見やすいものができたことがあり、女性のプログラム開発には大きな可能性を感じている。ぜひ、優秀な女性エンジニアが欲しい」と話していました。

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また、不動産管理のシステム開発を手がける「いい生活」のエンジニアで、当日、学生の指導係をした布能菜穂美さんは、「いま、働いている職場には女性は自分1人しかいなく、困ったときに気軽に相談できる人がいない。多くの女子学生にエンジニアを目指して欲しい」と話していました。

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農学部の2年生は、「最初は全くわからなかったけど、教えてもらっているうちにどういう仕組みで動いているのかがわかってきて、アプリが動いたときには感動した。将来、プログラムを使う仕事につくのもいいかなと思いました」と話していました。

女性の活躍の場をどう広げていくか

女性はプログラム開発に向いているのか、今回の取材で、開発の最前線で働く人たちからは、男女問わず「女性の視点が必要だ」とか「女性が活躍できる場は多くある」といった声を多く聞きました。一方で、まだまだ現場では男性の割合が多く、女性ならではの提案がしづらいといった状況や、在宅勤務など女性の望む職場環境の整備がなかなか進まないといった課題を抱えている企業が多いと感じました。

まだ壁はあるものの、プログラミングへの注目の高まりで、より多くの女性プログラマーが開発の現場で活躍する日も遠くないのではと思います。

副島デスク
ネット報道部
副島晋 記者