鵡川―様似 JRが廃止伝達 沿線8町長 怒りと失望

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 21日、JR北海道が高波被害で不通が続く日高線の鵡川―様似間を廃止しバスに切り替える方針を沿線8町に伝えた。8町長はJRの方針をどう受け止め、今後どんな対応していくのか。率直な思いを聞いた。

■むかわ 竹中喜之町長 あまりに乱暴すぎる

 日高の沿線自治体7町の過半数の4町長が欠席する中で説明会を開くのはおかしい。これまでJR側から具体的な相談はなく、21日の説明会でいきなり鵡川―様似間の復旧断念とバス転換を伝えられた。あまりに乱暴すぎる。

 日高線は苫小牧―様似の全体で一つのもので、今後も早期復旧と全線の存続を求める姿勢は一切変わらない。廃線ありきの協議なら今後、町として説明会に参加しない。早期復旧に向け東胆振1市4町でも結束して対応するとともに、沿線自治体協議会と連携し情報共有していきたい。

■日高 三輪茂町長 もっと違う方法ある

 鵡川駅以東にも被災していない区間はある。走れるところまで走らせてほしいし、少しでも復旧を前進させてほしいという思いは変わらない。鵡川―日高門別の復旧費試算を要求しているが、上下分離方式を検討しているわけではない。

 JRと意見のキャッチボールをしている中で返ってきた「廃線」というボールは暴投だ。JRが会合で言及した費用負担には期待もあるが、JRとしても自治体の案がのめないから即廃線というのではなく、もっと違う方法もあるだろう。会議の開き方も含め、自治体への配慮は必要だ。

■平取 川上満町長 地域の声聞いてない

 町内を走っていた旧国鉄富内線が1986年に廃線になり、地域の衰退に拍車がかかった。地方創生といううたい文句があるが、現状は本末転倒だ。

 JRの対応も乱暴だ。4町長が欠席する日を設定して無理矢理会議を開くとは。バス転換を説明する際、JR側は「地域の声を聞いた」と言ったが、何も聞いていないのは明白。ばかにしているとさえ感じる。誠実に向き合ってほしい。住民の足を確保しなければならないという思いは日高管内7町とも同じ。どういう手段を講じるかはこれから考えていく。

■新冠 小竹国昭町長 最後まで議論続ける

 これまで沿線自治体協議会で話し合ってきた。JRが協議会で答える番だと考えていたのに、別の場で返答を出された。乱暴という感じはある。

 廃線・バス転換という提案は残念だ。JRには公共交通の役割をしっかり果たしてほしい。具体的にバス転換について考えていないので、どんな問題があるのか正確には分からない。ただ、長距離なのでバスでは利用者に負担が掛かるのではないか。よく検討しないといけない。

 協議会が解散したわけではないので、最後まで議論を続けていきたい。

■新ひだか 酒井芳秀町長 弱い者いじめの姿勢

 JRの説明に対し返事をしてしまうと、廃止に向けた動きが進むことになるので返事はしない方がいい。他の維持困難路線にも、日高線の13億4千万円に匹敵する負担を求めるのか、日高だけが違う扱いを受けていないか見定めをしなければならない。今後はJRを入れず、7町長で話し合う必要があるだろう。

 JRがいきなりバス転換を提示するのは乱暴だ。時期も、道の「鉄道ネットワークワーキングチーム」で結論が出た後にすべきだった。「崩せるところから崩す」という弱い者いじめの姿勢が透けて見える。

■浦河 池田拓町長 あしき前例避けたい

 廃線し、バスに転換するとJRから示されても、軽々に「分かりました」と受け入れられない。日高線の沿線自治体が応じればあしき前例となってしまう。「単独では維持困難」とされた他路線の折衝にも、多大な影響が生じるからだ。

 これまで沿線自治体協議会で議論を続けてきたのだから、JRはこの協議会で提案するのが筋だ。それを別の場で一方的に行うのは到底容認できないので、今回は出席を見送った。今後も復旧を目指していく。与野党問わず国家議員や道議に要望し、政治の力で解決してもらいたい。

■様似 坂下一幸町長 道の導き方にも問題

 欠席したことで「JRの提案は受けない」というこちらの思いは多少は伝わったはずだ。出席した町長からも異論が噴出したと聞いている。協議を進める上でJRだけでなく、道の導き方にも問題があったのではないか。

 今後の正式な沿線自治体協議会では、もう一度復旧に向けた意見を7町で合わせる必要がある。どこかの町だけ「いち抜けた」となれば、ことはうまく進まない。その上で可能なら、東胆振の自治体と力を合わせ、国に日高線の復旧・存続を働きかけていきたい。長期戦は覚悟している。

■えりも 岩本溥叙町長 国は傍観せず働いて

 JRの一方的な提案を聞き、強い憤りを感じる。今まで時間をかけて沿線自治体協議会で議論してきたのは何だったのか。島田修社長には、そんな提案をするために来てもらうのではなく、協議会に入って一緒に話し合ってほしかった。JRには道民の足を守る責任感が欠けている。

 えりもにはJRの線路はないが、路線・都市間バスが少なく、大雨で陸の孤島になる。そのため、住民の交通整備に対する思いは強い。問題はJRにあるが、傍観している国側にこそ、国民の足を守る働きを望みたい。(JR問題取材班)

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