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“眠った預金”が消える!?

転勤や引っ越しなどをきっかけに使わなくなって、長年、放置したままの預金口座はないでしょうか?

10年以上、預けっぱなしで取り引きのない口座のお金を“休眠預金”といいます。この眠ったお金を、公共性の高い民間事業に使えるようにする法律が12月2日に成立しました。“休眠預金”は毎年どれぐらい発生し、なぜ活用されることになったのでしょうか。今後の課題はどこにあるのでしょうか。(経済部 甲木智和記者)

眠った預金これまでは?

“休眠預金”とは、銀行や農協などの金融機関に10年以上、預けたまま取り引きがない口座のお金で、毎年およそ1000億円発生しているとされています。

このうち、顧客から払い戻しの要望があるのは400億円から500億円程度。半分以上は、金融機関が法人税も支払いながら利益として扱っていました。顧客の求めがあれば払い戻し、その分は損失として処理しています。

なぜ活用?

この“休眠預金”を公共性の高い民間事業に活用するための法律が2日、超党派で作る議員連盟の提案によって、賛成多数で可決・成立しました。

「国や地方の財政が厳しいからといって、私たちの財産が失われるのはけしからん!」と感じる方もいるかもしれません。ただ、休眠預金は国などの予算として扱われるわけではありません。金融機関から預金保険機構に移したうえで、政府が指定する指定活用団体などを通じて、NPOのような民間団体への助成金や出資金などに充てられます。指定活用団体は一般財団法人の形で全国で1つの団体と定められていますが、組織の構成など具体的な内容は、まだ明らかになっていません。

では、公共性の高い民間事業とは具体的にどんなものなのでしょうか。

法律が想定しているのは、大きく3つの分野です。

(1)子どもや若者の支援
(2)日常生活を営むうえで困難を有する人の支援
(3)地域活性化の支援

やや曖昧(あいまい)な文言にも見えますが、人口減少や高齢化が進む中、国や地方公共団体の事業からこぼれ落ちてしまうニーズをすくい上げるため、あえてこうした表現にとどめた側面もあるようです。法律の制定に携わった議員の1人は「国や地方公共団体の肩代わりではなく、公的な手助けが届いていない部分に手をさしのべる財源だ」と話しています。

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いつから使われる?

法律は成立ましたが、すぐに眠った預金が使われるわけではありません。金融機関から預金保険機構に休眠預金を移管するシステムの整備が必要なこともあり、法律の施行日は1年半ほど先になる見通しです。

また、対象となる休眠預金は、法律が施行されてから1年を経過した時点で、10年間取り引きがない預貯金です。つまり、法律の対象となる休眠預金が初めて発生するのは、平成31年以降になる見通しです。

また、休眠預金が1万円以上ある場合には、口座の名義人などに対し、事前に金融機関から通知が送られてきます。そして、休眠預金が預金保険機構に移管されたあとでも、払い戻しを申請すれば利子を含めた預貯金の全額が返済される仕組みになっています。

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海外では?

休眠預金の活用は海外でも進められています。金融庁によりますと、アメリカでは州ごとに仕組みが異なり、ニューヨーク州では取り引きの形跡がなくなってから3年をすぎると休眠預金として扱われ、州の予算に活用されています。

一方、イギリスでは、休眠預金になるのは15年をすぎた場合で、法律に基づいて設立された組織が管理や活用を担っています。韓国には自分の口座が休眠預金になっていないかを検索するシステムもあるということです。

これらの国と比べると、日本の対応は、むしろ遅れていたといえそうです。

透明性の確保を

政府は今後、内閣府に設ける審議会の議論などを通じて、休眠預金の活用に向けた方針や計画を策定します。そのうえで、指定活用団体などを通じて民間の団体に助成や出資などを行うことになります。

今回、成立した法律では、この組織の役員などの構成が、休眠預金を公正に活用する際に支障とならないことや、支援の対象となる民間団体は公募で選ぶことが定められていますが、一方で、国会の委員会の審議では、透明性の問題を指摘する声もありました。

活用される預貯金は、金融機関に“眠っている”とはいえ、国民の財産です。日本の将来を担う子どもや若者、社会的に弱い立場の人たちのためにきちんと役立てられるよう、選考過程の公開や成果報告を積極的に行うことが欠かせません。

甲木智和
経済部
甲木智和 記者
平成19年入局
大津局をへて経済部
現在 金融庁を担当