執筆:フリーライター 井上 猛雄
ドイツのインダストリー4.0の最新成果と標準化の取り組み
本場ドイツのインダストリー4.0の最新成果
デジタル化の波は製造業に大きな影響を与え始めた。シーメンスでは、これを「デジタルエンタープライズ」と表現している。インダストリー4.0を提唱し、国家レベルで推進するドイツの現状はどうなっているのだろうか。シーメンス・ジャパンの島田太郎 氏が最新状況を紹介した。
島田氏は「モノづくりの多くのプロセスがデジタル化されることで生産が効率化され、スマートな製品が登場し、サービスと融合したビジネスモデル(モノ・コト)の変革を起こす。それを支える技術がIoTだ」と強調する。
シーメンス・ジャパン
デジタルファクトリー事業本部
プロセス&ドライブ事業本部
専務執行役員
事業本部長
島田太郎 氏
2000年代からは、グローバリゼーションの進展により、多くの人々に多種類のモノを届けたり、一方でリージョナリゼーションによって地域ごとに適した製品や、個々人にマッチした製品をつくるための複雑性が高まってきた。そこでデリバリする力を獲得するためには、スピードと柔軟性に富んだインダストリー4.0の力が求められている。
「ドイツはインダストリー4.0の共通プラットフォームの確立を目指している。企業の勝負の土俵は、最終的にはビジネスモデルであったり、スマート製品を生み出す点にある。しかし、共通基盤がなければすべてが夢物語だ。そのプラットフォームは、企業がつながって共通で使えることで初めて真価を発揮できる。これは個々の企業の競争領域でなく、全企業が協力すべきものだ」(島田氏)
日本とドイツの標準化実現へ、リアルな進捗状況
そこでドイツでは、日本の経済産業省と文部科学省にあたる部門と、シーメンスのような大企業はもちろん中小企業の代表が集まり、全員で使える共通プラットフォームを検討しているところだ。この組織には、技術委員会、ポリシーメイキング、外部連携を行うグループの3本柱で構成される。このうちインダストリー4.0を主導しているのは、技術委員会のWG(ワーキンググループ)の活動が中心だ。
インダストリー4.0のプラットフォームを支える組織は技術委員会、ポリシーメイキング、外部連携を行うグループで構成。技術委員会のWGが主導している
WGは、標準化はもちろん、リサーチ&イノベーション、セキュリティ、リーガル・フレームワーク、人と教育などを検討するものが存在する。インダストリー4.0実現に欠かせない彼らの活動状況について、島田氏が進捗を紹介した。
まず標準化WGでは「RAMI4.0」(Reference Architecture Model Industrie 4.0)を策定しており、それを公開中だ。「RAMI4.0は3次元で表現されたリファレンスアーキテクチャだ。設計から製造までのプロセス、工場フィールドのレイヤー、コミュニケーションなどのITレイヤーという3軸で表現され、現在どんな話をしているのかという点が整理される」(島田氏)。
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RAMI4.0は、3次元で表現された、インダストリー4.0のためのリファレンスアーキテクチャだ。3軸で表現され、現在どんな話をしているのかも分かる
もう1つのWGであるリサーチ&イノベーションでは、インダストリー4.0の進展による新技術や課題の解決をまとめている。ここでは、工場、設計、サプライチェーンなどの異なる領域をコネクトし、新技術を導入することでイノベーションを加速させるリサーチを実施している。
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