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2016
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社長「厳しい状況来る」

近づく路線存廃論議、JR四国発足30年目

2016年12月8日(木)(愛媛新聞)

 

 国鉄分割民営化から30年目を迎え、JR四国が岐路に立っている。JR「三島会社」のうち、九州が10月に念願の株式上場を果たした一方、北海道は11月、路線の約半分が単独では維持困難と発表し、廃線を含めた沿線自治体との協議に入る。明暗が分かれる中、残る四国は経営基盤の弱さに加え、全国に先行する人口減少に直面し、将来的に路線存廃を巡る論議が不可避の様相だ。

 「長い目で見た時に人口の減少はおそらく避けられない。(四国の全路線)855キロを維持していくことが厳しい状況が来るのではないか」。北海道の窮状を踏まえ、JR四国の半井真司社長は先行きの厳しさを口にする。

 同社は1987年度の発足以降、国が設けた経営安定基金2082億円の運用益などで鉄道事業の赤字を補塡(ほてん)する経営構造。当初の想定利回りはバブル崩壊後に大きく下回り、97年度以降は独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」への貸付金利息で高利回りを確保してきた。この公的な運用下支え策は来年3月で終了。以降は、償還分を含め全額自主運用しなければならない。運用益は市況などに左右されるため「経営の生命維持装置であり、アキレス腱(けん)」(同社)となっている。

 高速道路延伸の影響も受けてきた。JR四国によると、四国の高速道整備率は86年度末の2%から30年間で80%に上昇。88年の瀬戸大橋開通後、ピーク時に370億円あった鉄道運輸収入は、マイカーや高速バスとの競合などで2015年度233億円まで減少した。

 JR四国は「伊予灘ものがたり」など観光列車を充実させるほか、一度は撤退したマンション事業に再参入するなど収益基盤の強化に努める。ただ、四国運輸局公表の試算では、増加する訪日客の利用を織り込んでも、幹線鉄道の輸送需要は約10年間で1割程度減少するとしており、苦境の色は濃くなるばかりだ。

 JR単独での路線維持が難しい場合、バスへの転換を選択するか、線路を沿線自治体などが保有し列車をJRが運行する「上下分離方式」などが想定されるが、財政難は自治体共通の課題でもある。

 これまでも存続が危ぶまれてきたのが愛媛の北宇和島駅と高知の若井駅を結ぶ予土線だ。同路線は1日1キロ当たり平均輸送人員が15年度307人とJR四国9路線の中で最少。半井社長は「(路線存廃について)具体的にどの部分がどうだと申し上げるわけにはいかないし、どうするという決定もしていない」と強調し、県境をまたぐ鉄道網の重要性も指摘する。

 地元政財界から「四国新幹線」を求める声が上がる中、足元で揺らぐ在来線の行方。半井社長は「10年先、15年先の四国の公共交通ネットワークをどうするか議論が必要」と述べ、今後の路線維持について行政など関係機関を交えた協議を始めたい意向だ。

 

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