テレビを見ていたら、民法だけではなくNHKのニュースさえも、トップニュースがASKA容疑者逮捕のニュースで驚きました。
カメラやビデオを抱えた大量のマスコミが、ASKA容疑者(そもそもこの呼び方も変なんだけども。容疑者とつけなくてもいい気が)の自宅に突撃し、我先にと逮捕の瞬間を撮影し、テレビに流している。捜査員のマスクも謎でしたけど(伝染病患者の回収に来たんですかね?)
そんなに大勢の人が撮影して、うなだれたASKA容疑者を撮影して、全国に流して、一体誰がそれを見たいのだろうと、なんだか不思議でなりませんでした。
イギリスやフランスのニュースでトップになるのは、経済問題やウクライナやシリアのことなのに、日本では、単なる歌い手が麻薬をやったことが、まるで地球の破滅のように騒がれている。シリア情勢は日本にだって大きな影響があるのに、テレビ局の人は、芸能人の方が大事だと思っているのでしょう。
欧州は麻薬大国です。麻薬というと日本の人がイメージするのはアメリカだと思いますけど、欧州も麻薬が社会問題です。麻薬と言っても、問題なのは大麻のようなソフトドラッグじゃなくて、ヘロインとかコカインに覚醒剤(英語だとクリスタルメスと呼びます)みたいなハードドラッグです。
欧州の麻薬の中心はイギリスです。特にロンドン。欧州におけるニューヨークみたいなところなので、世界中から様々な人がやって来て物や情報を交換するコスモポリタンな農協の直売所みたいな所です。
人が集まれば麻薬もやって来ます。だからイギリスは欧州一麻薬中毒患者が多い所です。アルコールも社会問題ですけど、ドラッグはそれ以上。
イタリアやスペインにフランス、北欧諸国だって麻薬は大問題です。イタリアは麻薬中毒患者が公園でハードドラッグをやって、注射針を砂場に落としたりするので、子供だけで公園で遊ばせないです。針が体に刺さってしまったら、麻薬中毒になってしまう可能性があるばかりか、感染症もうつってしまう。だから私がローマに住んでいた時、公園はガラガラでした。危なくて遊べないので。
だべっているのはアフリカから来てコピーDVD売ってる人、路上でガラクタをを売っている中国人、アル中のロシア人。彼らは縄張り争いがあって、時々殴り合いの喧嘩をしている。それはマンションの窓から見えました。
イタリアのマンションの窓には網戸がないので、公園のどす黒い池で湧いて飛んでくる蚊を叩き潰しながら、下半分を割ったビール瓶で、中国人を殴りつけようとしている上半身裸のロシア人を、真っ白な胸をしているなあと思いながら、ぼんやりを眺めていたのでした。
その横を、麻薬で頭がボロボロになってしまったホームレスのイタリア人がヨロヨロと歩いている。
そんなヨロヨロのイタリア人は、その辺にたくさんいるから、誰も目も向けないし、近寄りません。目を見たら最後で、麻薬欲しさに地元民も観光客も袋叩きにして金品を奪うこともあるし、時計なんて腕をナイフで切断して持っていってしまう。だから高価な時計やカバンは身につけないのが一番です。いつどこでそういう目に合うかわからないから。
イタリア生活では、毎朝毎朝地下鉄や通勤途中の道路で体当りしてくるスリ目的のジプシー集団も恐ろしかったけど、道をウロウロしている麻薬中毒も怖かった。脳がショートしているので、話が通じる相手ではないから、もう逃げる他ないので。だからヒールの靴なんて履くことはありません。履くなら車で移動です。
欧州の大都市の人々は、多かれ少なかれこういう光景を目にしています。だからホームレスには施しをしない人が多い。なぜなら恵んだお金は麻薬を買うのに使ってしまう。日本と違ってホームレスは老人や熟年ばかりではなく、若い人も多い。若い人はレゲエの様な髪型に、ボロボロの服装で、歯がむき出しになった犬を連れている事が多い。頭がショートしている彼らを相手にするのは犬しかいないからです。
こういう例をたくさん見ているので、麻薬中毒の人は、犯罪者というよりも、「病気の人」という印象を持っている人が多いのです。たくさん見ているから何をすべきかを知っています。どうやったらこの人達を治療して社会に危害を与えないようにし、どうやって麻薬の世界に戻らないようにするかです。
だから有名人が麻薬をやって捕まったことは、三面記事程度の扱いにしかなりません。報道されないこともあります。重要視されているのは医師による治療や更生プログラムです。
だからマスコミも誰さんが麻薬をやったと大げさには騒ぎません。麻薬中毒でリハーブ(更生施設)に入ったことは、単に治療に言っただけだと言う感じの扱いなので、リハーブに入っていた芸能人が、わりと普通にトークショーに出て、麻薬は最悪だと語っていたりします。犯罪だという点よりも、治療すべきだということを強調したほうが、中毒者の人が治療を受けやすくなるからです。
欧州はほとんどの国に公的健康保険があって、医療費は無料です。だから、政府も一般の人も、何をどうすれば医療費を削減することができるかを常に考えています。医療費が上がることは自分の健康保険の支払や税金が上がることを意味するので、税金の高い欧州ではこれは自分の生活のことなのです。
麻薬中毒は病気なので、治療は早ければ早いほど費用の削減に繋がります。だから治療を受けやすい雰囲気を作ります。
イギリスで今盛り上がっている議論は、麻薬中毒者向けに「fix room」という麻薬をやる場所を政府が提供する計画です。
麻薬中毒患者には、麻薬をやる清潔な部屋と、処方されたヘロインなどの麻薬と清潔な機器が提供され、看護婦の指導のもとで、麻薬をやります。スイス、ドイツ、オランダ、カナダやデンマークではすでに導入されている政策をモデルにしています。ウェールズのカーディフでは拒絶されましたが、スコットランドのグラスゴーでは実施されます。スコットランドでは麻薬による死が年間700人を越えていますが、交通事故死の三倍です。
中毒患者はギャングによって提供される質の悪い麻薬を打って死ぬことはありませんし、針の使い回しによる感染症の広がりを防ぐことも可能です。公園や公衆トイレを注射針などで汚染することもありません。麻薬欲しさに強盗やスリをやることも必要なくなるので、一般市民の安全も確保されます。ギャングの懐もうるおいません。ですから結果的に警察の仕事が減り税金の節約になります。
麻薬による死が減ることで、中毒患者の家族や友達の悲しみを減らすこともできます。中毒患者だって普通の人なので、両親や子供がいます。
通っているうちに、中毒患者と政府の担当者や看護婦側には人間関係ができるので、中毒患者の治療がやりやすくなります。中毒患者は何らかの理由で麻薬に手を出してしまうので、必要なのは手助けや治療であって、罰をいくら与えても、中毒から脱することはできません。
それに、犯罪だ、犯罪だと煽って、まるで、麻薬をやって人を、完全に別世界の人間だとして扱うのも、社会的には逆効果だということも、欧州の人達は知っています。
別世界の人だという認知を広めてしまったら、それは自分達の日常生活には関係がないと思ってしまうので、麻薬自体や中毒になる人のことを、真剣に考えなくなるからです。
麻薬はその辺に転がっているので、中学生や小学生でも入手が可能です。だからこそ、実際に中毒になった人の話をオープンに報道したり、犯罪だ、犯罪だと罪の部分を強調することなしに、麻薬のマイナスな点を客観的に伝えて考えさせるようになっています。
ASKA容疑者に必要なことは適切な治療とサポートであり、奇妙なブログをあざ笑うことではありません。