2016年度総合商社上期決算レビュー【unistyle業界研究ニュース】
2016年度上期の総合商社の決算状況が出揃いました。
2015年度決算に続き、上期実績および年間見通しでも伊藤忠商事が総合商社首位の座を守っています。そこでunistyle独自の視点から2016年度の総合商社の上期決算を振り返ってみたいと思います。
2016年度も伊藤忠商事が首位を堅守
2016年度上期実績および年間見通しは下記の通りとなり、伊藤忠商事が上期実績でも年間見通しでも首位となりました。三菱商事は昨年度の大幅赤字からV字回復を果たしています。一方で、2年連続の減損をしたにも関わらず、住友商事は資源分野で上期でまだ赤字を出すなど苦戦を強いられています。
【2016年度上期実績】
三菱商事 | 三井物産 | 住友商事 | 伊藤忠商事 | 丸紅 | |
資源分野 | 590 | 522 | ▲107 | 282 | ▲116 |
非資源分野 | 1,195 | 709 | 653 | 1,242 | 935 |
その他修正 | 13 | ▲11 | 111 | 498 | ▲13 |
合計 | 1,798 | 1,220 | 658 | 2,022 | 805 |
※各社IR資料よりunistyleが独自作成
【2016年度年間見通し】
三菱商事 | 三井物産 | 住友商事 | 伊藤忠商事 | 丸紅 | |
資源分野 | 1,210 | 900 | 20 | 510 | ▲90 |
非資源分野 | 2,080 | 1,100 | 1,450 | 2,460 | 1,620 |
その他修正 | 10 | 200 | ▲170 | 530 | ▲230 |
合計 | 3,300 | 2,200 | 1,300 | 3,500 | 1,300 |
※各社IR資料よりunistyleが独自作成
三菱商事:資源価格の上昇を見込み、32%上方修正
三菱商事は資源価格の上昇を踏まえて、年間の純利益見通しを2500億円から3300億円に上方修正しました。昨期大幅に減損を行った効果が早くも出ています。その他非資源分野も堅調に推移しており、業績予想は3300億円と、伊藤忠商事に迫っています。期末までこのデッドヒートが続くことが予想されます。
2016年度上期 | 年間見通し | ||
資源分野 | エネルギー事業 | 259 | 410 |
金属 | 331 | 800 | |
非資源分野 | 地球環境インフラ | 154 | 210 |
新産業金融 | 157 | 330 | |
機械 | 255 | 250 | |
化学品 | 162 | 250 | |
生活産業 | 467 | 1,040 | |
その他・調整 | 13 | 10 | |
合計 | 1,798 | 3,300 |
三井物産:資源価格の上昇を見込み、10%上方修正
三井物産も三菱商事同様に、昨年大幅な減損をしたことおよび資源価格が上昇したことから、年間の見通しを2000億円から2200億円に上方修正を行いました。一方で、年間の見通しでも非資源分野の純利益合計が1100億円と総合商社5社の中で最も低いなど、これまで資源分野に偏ったポートフォリオを築いてきた影響が響き、三菱商事および伊藤忠商事とは1000億円以上純利益で差がつく見通しとなっています。
2016年度上期 | 年間見通し | ||
資源分野 | エネルギー | 9 | 150 |
金属 | 513 | 750 | |
非資源 | 機械・インフラ | 342 | 550 |
化学品 | 72 | 150 | |
生活産業 | 206 | 250 | |
次世代・機能推進 | 69 | 100 | |
鉄鋼製品 | 20 | 50 | |
海外 | 266 | 550 | |
その他調整 | ▲277 | ▲350 | |
合計 | 1,220 | 2,200 |
住友商事:2期連続減損にも関わらず資源分野は苦戦傾向
住友商事は2014年度、2015年度と二年連続で資源価格の下落を受け、未だ資源分野で大幅な利益を出すには至っていません。非資源分野についても、5大総合商社の中で4位と低迷しており、2016年度の最終利益の見通しも丸紅と同じ1300億円となっています。財閥系総合商社として三菱商事、三井物産に続く第三位の座を堅持していましたが、近年は伊藤忠商事に完全に水を開けられた形となってしまっています。
2016年度上期 | 年間見通し | ||
資源分野 | 金属 | 20 | 80 |
資源・化学品 | ▲127 | ▲60 | |
非資源分野 | 輸送機・建機 | 230 | 470 |
環境・インフラ | 102 | 260 | |
メディア・生活関連 | 321 | 720 | |
非営業等 | 111 | ▲170 | |
合計 | 658 | 1,300 |
伊藤忠商事:2年連続純利益首位の見通し
昨年度、創業以来初めて総合商社首位の座を奪った伊藤忠商事は2016年度の上期実績および年間見通しでも首位の座につきそうです。三菱商事、三井物産に比べて資源分野は及ばないものの、非資源分野では首位を守っています。特に食料分野が非資源分野を牽引し、非資源分野合計で2460億円の純利益予想となっています。
2016年度上期 | 年間見通し | ||
資源分野 | 金属 | 148 | 300 |
エネルギー・化学品 | 134 | 210 | |
非資源分野 | 繊維 | 120 | 330 |
機械 | 260 | 600 | |
食料 | 494 | 700 | |
住生活 | 192 | 430 | |
情報・金融 | 176 | 400 | |
その他および修正消去 | 498 | 530 | |
合計 | 2,022 | 3,500 |
丸紅:すっかり総合商社5番手が定着してしまった丸紅
ここ10年間、総合商社5番手が定着してしまった感のある丸紅は今期の業績見通しも住友商事と並んで総合商社ビリとなってしまっています。非資源分野の見通しは、得意の紙パルプ、電力・プラント事業の貢献から1620億円と3番手となるものの、唯一、年間見通しで赤字となっている資源事業が足を引っ張る形となっています。
2016年度上期 | 年間見通し | ||
資源分野 | エネルギー・金属 | ▲116 | ▲90 |
非資源分野 | 生活産業 | 301 | 550 |
素材 | 159 | 270 | |
電力・プラント | 291 | 500 | |
輸送機 | 184 | 300 | |
全社および消去等 | ▲13 | ▲230 | |
合計 | 805 | 1,300 |
最後に
資源価格を落とせるときにしっかりと落としてきた、三菱商事・三井物産が資源価格の回復とともに浮上してきたとともに、伊藤忠商事が首位をキープした上期決算となりました。今後、資源価格がさらに上昇を続けると、伊藤忠商事の首位を三菱商事が脅かすことになると考えられます。
photo by Dave Dugdale
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