トランプ・ショックの新興国市場、通貨ボラティリティに明るい兆し
- 自国通貨建て債券は2008年の金融危機以来の大幅下落
- 通貨ボラティリティとヘッジコストにはパニックの兆候見られず
ドナルド・トランプ氏の米大統領当選を受け、先週の新興市場では激しい売り浴びせが広がった。しかし、その詳細を見てみると、事態はそれほど悪くないようだ。
トランプ氏の予想外の勝利の後、自国通貨建て債券は2008年以来の大幅下落となったが、途上国通貨のボラティリティ(変動性)指標は引き続き、2月の水準を16%下回っている。為替損失のヘッジコストは、中国の人民元実質切り下げで世界の投資家の間に混乱が広がった2015年8月時点と比べて38%割安だ。
トランプ氏が政府支出を増やすとの見通しを背景に世界的に債券が売り込まれたものの、新興市場トレーダーは落ち込んでいない。トレーダーらは保護主義政策のリスクに備えつつ、大半の途上国が成長加速と経常赤字縮小などにより現在の動揺を乗り切ると見込んでいる。
ユニオン・バンケール・プリベのストラテジスト、クーン・チャウ氏(ロンドン在勤)は最近の債券安は「買いの好機」だと指摘。「米国債利回りが安定し、それに伴い新興市場が回復するという状況に、向こう1、2週間で至る可能性がある」と説明した。同氏はまた、相場底入れと言うのは時期尚早であるが、コロンビアとペルー通貨と共に、ブラジルとロシアの自国通貨建て債券が投資対象として魅力的になり始めると述べた。アジアの為替レートについては引き続き圧力を受ける可能性が高いとした。
原題:In Trump Tantrum, Emerging Markets Are Down Hard But Not Yet Out(抜粋)
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