JR東日本の輸送管理システムにトラブルが発生し、高崎線(東京-高崎)の全線と湘南新宿ラインの前橋-小田原間の上下線が4日、始発から約10時間にわたり不通となった。システムにデータを送信する北上尾駅(埼玉県上尾市)構内の配電盤に収納されている通信ケーブル(直径2センチ)が損傷したことが原因。このトラブルで、計66本が運休し、15万2000人に影響した。
同社によると、同日午前4時32分ごろ、東京圏輸送管理システム(ATOS)が管理する高崎線の一部区間で、列車の位置などが正確に表示されなくなった。約5時間後に通信ケーブルを修復したが、ATOSを再起動させた際に再びトラブルが起き、トラブルが拡大した。再起動時に処理能力を超えるデータが流れたためという。JR東は損傷理由を調査中としている。
一方、埼玉県警上尾署によると、北上尾駅事務所内の配電盤内にあるケーブルは切断された状態で、切断面にはかじられたような跡があった。配電盤には、小動物が入り込める隙間(すきま)があり、県警は小動物がケーブルをかじったことがトラブルの原因とみて調べている。【高橋昌紀、遠藤大志】
対策決め手欠く
トラブルが発生したATOSは、輸送管理業務の近代化のためJR東日本東京総合指令室が1996年に導入した。今回のようなトラブルは「初めての事例」(電気ネットワーク部)で、同社は原因調査と再発防止対策に乗り出す。
ATOSはダイヤ管理、旅客案内、保守作業管理など列車運行に関する機能を担っている。管轄は東京に加え、周辺8県の一部にまたがる。管理機能は各路線ごとに分割されており、今回のトラブルは高崎線を管理する部分で発生した。対策として、処理能力の強化などが考えられるという。
小動物によるケーブルの損傷を防ぐため鉄道各社は、ケーブルの外側を被膜で覆うなど材質を強化する▽ケーブルを地中に埋設するなど設置場所を工夫する--などの対策を実施している。
信号ケーブルメーカーもネズミなどが嫌がる唐辛子を被膜にすり込むなど、工夫を凝らしている。ただし「実際に効果があるかは分かりにくく、決め手に欠けている」(メーカー関係者)のが実情という。【高橋昌紀】