韓国の朴槿恵(パククネ)大統領がきのう、検察の捜査を受け入れるという談話を発表した。親友の崔順実(チェスンシル)容疑者による国政介入疑惑によって引き起こされた混乱の収拾を狙ったものだが、国民に受け入れられるかは疑問だ。
朴大統領は一連の事件について謝罪したうえで、「特定の個人が違法行為を働いたことは残念だ」と述べた。自らが責任を負う覚悟は示したものの、その前提として罪を犯した人が相応の責任を取らねばならないと強調した。
これでは自らの責任を明確にしたとは言えない。
朴大統領の窮状は、過去の政権が任期末に苦しんだものとは異質だ。まったく専門性を持たない民間人である崔容疑者が国政に介入していたという疑惑が、財団設立を巡る金銭スキャンダルよりも強い反感を持たれている。
朴大統領は談話の中で、崔容疑者が青瓦台(大統領府)に出入りしていたと初めて認めた。先日は演説文を事前に見せたことを認めている。
崔容疑者との関係を小出しに認める対応は不信感を強めかねない。朴大統領には、もっと明確な説明が求められる。
韓国国民の不信感は高まっており、外交や対北朝鮮政策への介入まで疑う声が出ている。
慰安婦問題を巡る昨年末の日韓合意への反対論に利用されれば、在韓日本大使館前の少女像移転にも悪影響を及ぼしかねない。北朝鮮の核・ミサイル問題での日米韓連携に与える影響も心配だ。
今回の問題の根底には、独断専行という朴大統領のスタイルがある。以前から改善すべき課題だと指摘され続けてきたことだ。
事態収拾のため首相を交代させるという人事案を巡っても、その傾向は改まらなかった。事前の相談を要求していた野党に事後通告しかしなかったのだ。正式な任命には野党が過半数を握る国会の同意が必要なため、人事案は宙に浮いている。
独断専行を改めなければ、国政の停滞を解消することはできまい。
談話発表に当たっても記者の質問を受け付けなかった。国民に理解を求めるためには、もっと丁寧な説明が必要だ。
韓国では、政府批判の集会は土曜日に行われることが多い。きょうもソウル都心で大統領退陣を求める大規模集会が開かれる。
大統領支持率は10%以下に落ち込み、固い支持層だった保守派からも弾劾や下野の可能性を語る声が出始めた。今までの政権が直面した任期末の苦境と比べても、韓国世論の悪化ぶりは際立っている。
今のような対応では混乱の収拾を望むことは難しいだろう。