【ローマ福島良典】断交中のバチカン(ローマ法王庁)と中国がカトリック聖職者である司教の任命方法を巡って作業部会で合意草案をまとめたと10月31日付米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。フランシスコ・ローマ法王が内容に同意すれば、草案は中国指導部の了承を得る最終段階に移るという。
中国とバチカンは1951年に断交し、「どちらが司教の任命権限を握るか」が最大の対立点になってきた。中国のカトリック教会は政府公認の「中国天主教愛国会」と、法王に忠誠を誓う非公認の地下教会に分かれ、バチカンは教会統一を目指している。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、合意草案では中国側が司教候補者リストをバチカン側に提出し、法王がその中から適格者1人を選ぶか、全員を拒否して新たなリストの提出を中国側に求める選択権を持つ。
また、中国側は合意案受け入れの条件として、バチカンの了解を得ずに任命した愛国会の司教8人にフランシスコ法王が「お墨付き」を与えることを求めているという。
香港カトリック教会トップの湯漢・枢機卿も今年7月末、香港のカトリック系週刊紙・公教報(電子版)への寄稿で、ほぼ同様の任命方式を提唱し、双方が「了解に達するのに前向きになっている」と指摘していた。
フランシスコ法王は2013年3月の就任以来、推定約1200万人のカトリック信徒を擁する中国との関係改善に意欲を示し、中国との対話や文化交流に力を入れている。
だが、合意草案には、司教任命で中国側に裁量権を認める側面があり、地下教会やバチカン内の慎重派からの反発も予想される。