首都圏マンション販売の落ち込みが続いている。今年1ー8月累計の契約販売戸数はバブル経済崩壊後の1992年以来の低水準を記録した。専門家の間では、高止まりするマンション価格に対し、購入者側の所得が伸び悩んでいることが背景との見方が浮上している。

  不動産経済研究所の調査によると、2016年1-8月の首都圏新築マンションの契約販売戸数は1万3303戸だった。企画調査部の松田忠司氏は「マンション施工費の上昇で、デベロッパーは高い価格で売らざるを得ない状況だ」と指摘した。

  みずほ証券の石沢卓志上級研究員は、新築マンションの動向について「マンション価格と比べて所得が伸び悩んでいるため、販売は減速している。この状況がしばらく続くだろう」と見通す。不動産経済研の松田氏も、日本銀行のマイナス金利政策で住宅ローン金利は低下傾向にあるが「その効果は小さ過ぎる」と述べた。

  不動産経済研がまとめた15年度の首都圏の新築マンションの平均発売価格は5617万円と4年連続の上昇だった。一方、総務省が発表した8月の家計調査によると、実質消費支出(2人以上の世帯)は1世帯当たり27万6338円で、前年同月比で4.6%減少した。

首都圏年収倍率は10倍超

  年収と対比した新築マンションの価格は92年当時を上回っている。不動産調査会社の東京カンテイの7月の発表によると、15年の新築マンションの年収倍率は全国平均で7.66倍と6年連続で拡大し、92年当時の水準(7.64倍)を上回った。

  東京都は平均年収627万円に対し、新築マンション価格(70平方メートル換算)7086万円で、倍率は11.30倍。首都圏の1都3県すべてで10倍の大台を突破し、90年代バブル期以来の状況となった。

  マンション価格を左右する大きな要因である東京の地価は値上がりを続けている。9月に国交省が発表した住宅地の地価上昇率は千代田区が10%、目黒区は6.1%と高い伸びを示した。ただ、東京圏全体でみると伸び率は横ばいとなっている。

ローン金利上昇も

  日本銀行は21日に公表した金融政策の総括的な検証で、「イールドカーブの過度な低下、フラット化は広い意味での金融機能の持続性に対する不安感をもたらす」と指摘し、金融機関の収益減や保険・年金の運用難などマイナス金利の弊害にも触れた。

  クレディスイス・グループのリポートによると、日銀の導入したイールドカーブ・コントロール政策は住宅ローン金利の上昇をもたらす可能性があるという。また年初来の円高進行で日本企業は賃上げに慎重になっていると、フランスの金融グループのナティクシスは指摘している。

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