今泉ひーたむさんのりんご日和。を楽しみに読んでいるのですが、ひーたむさんに過剰な期待をする人が増えていることを危惧しています。
ひーたむさんのりんご日和。はご主人と二人のお嬢さんとの日常を描く子育て絵日記ブログです。淡くやさしい色合いの個性的な絵柄で、子供ならではのハッとする言葉や親子のすれ違いの妙を、まいかい短く印象に残る仕方でまとめられています。
わたしはひーたむさんのLINEスタンプを使わせていただいていますが、ひーたむさんのかわいくてちょっと毒のある犬のシリーズは使い勝手がいいです。一目で誰の作品なのかわかる、人真似でなくほかの誰にも似ていない、それでいて悪目立ちしない愛らしさ。こういう絵が描けたらいいなあとうらやましく思います。
お話も絵柄も一度見たら忘れられないひーたむさんの絵日記は少し前に書籍化され、先日あのね、わたしがねちゃってても、あとででいいからだっこして はkindle化もされました。そして書籍化と前後してりんご日和。はブックマークでいわれない、そして見るに堪えない中傷を受けるようになりました。
残念ながらこのような中傷は、これまではてなブログに登場して人気が急上昇した多くのブログにもなされてきたものです。中傷のパターンはよく似ています。内容がまるで違うブログであっても、中傷するパターンが非常によく似ているのは、そのセオリーに従えば何も考えなくてもあらゆることに文句がつけられて便利だからでしょう。これらのパターンを考察風、あるいは心を寄せている風に書いたコメントやエントリーに「良記事」「冷静な考察」と評価することも、すでにお約束化しているように思います。
以下に形骸化している誹謗中傷のパターンは以下の通りです。
・互助会
・つまらない
・病的である、異常性が見られる
互助会
これははてなブログを使っていない方にとっては耳慣れない使い方だと思いますが、実力ではなく、組織票によって人気を得たブログという意味です。
互いのブログを読みあってコメントをつけあうことがありますが、はてなブログではブックマークでコメントしあうことができます。ブックマークがつくと被リンクが増えるので検索されやすくなりますし、ブックマーク数の多いエントリーははてなブログランキングやはてなホットエントリーに掲載されます。
あらかじめブログ仲間を募って互いにブックマークしあえば人気のあるブログとしてランキングにのることができる。何も知らない人から見れば偶然面白いエントリーにブックマークが集まったように見えるけれど、これはインチキで卑怯なやり方だとものすごく怒る人が大勢います。
はてなは分析好きの人が多いので、実際それでランキング入りしたブログがあるか、誰と誰が繋がっているのかを組織的に調査した人が何人もいます。もはや脱税行為を調べるほどの勢いです。実際ブログ指南をする人の中にはそのような方法で人気を集めるよう指導している人もいるようで、こうしたことを表立って書く人は間違いなく糾弾されます。*1*2
面白くないブログがはてなブックマークランキングでトップページに並ぶのが嫌だという人がいますが、自分の感性とあわないものに人気が集まることはどの分野でもあることです。「書き手が意図的に周囲の人々を操作して、面白くない物を面白いと言わせている」と思うのは、自分だって同じことをすれば簡単に人気が集まるのだという勘違いからくるのではないでしょうか。
執拗に「互助会、互助会」と書き続ける人は面白くないとわたしは思いますが、その面白くないコメントに大量に星がつくのは互助会だからですか。
つまらない
内容がない、つまらない、どこが面白いのかわからない。自分の興味を引かない話、琴線にふれない話、面白くない話はいくらでもあります。しかしこれをわざわざ書き残す人が面白くないと思っているのはエントリーの中身ではなく、そのエントリーが注目を集めていることです。
どんなにすぐれた作品であっても個人的に評価が低いことはあります。けれども、ある人が口を開くたびに呼ばれもしないのに飛んできて「つまらない、面白くない」という人には問題があります。他人は自分を楽しませるために存在しているわけではないということが理解できていないからです。
「つまらない」には「望んだ展開と違う」というものもあります。大河ドラマに熱が入りすぎた人が、史実で亡くなった人物を「死なせないでくれ」と投書してきたという話があります。大河ドラマはエンターテイメントですが、個人が家族の様子を描いた絵日記ブログの家族関係にもっとこうあるべきだ、それは問題だという人を見ていると、フィクションと現実の区別はついているのだろうかと心配になります。「現実だからこそ意見したくなるのだ」と思う人もいるかもしれませんが、そういう方はいつも町中やご近所で見かけた人に家族の在り方を説いたりしているのでしょうか。
りんご日和。へのコメントで最近よく目にするのはパパの処遇が悪いというものですが、娘がパパに冷淡なのはひーたむさんの躾けがなっていないからだとぼやく人を見ていると、「こういう人を舅姑に持ったら大変だろうな」と思います。どんなに幼くても母と子は別々の人間です。親の躾けしだいで子供の好き嫌いを簡単に思うままにできるのなら、誰も苦労はしません。
長時間一緒にすごす母親に子供が懐くのはよくあることですが、それでも父親にべったりで母親にはわがままを通す子供もいます。子供が父親に悪意ある攻撃を日常的に向けるなら別ですが、親が望むほど子供が親を慕っていないことはむしろ自然なことです。それを母親の手で慕うように仕向けろというのは熱が入りすぎではないでしょうか。「うちの子はこうじゃない」と書く人もいますが、その違いを見るのが育児ブログを読む面白さではないでしょうか。
病的である、異常性が見られる
こういうコメントは一目で異常性が感じられるドグラマグラ的な記事にはあまりつきません。このタイプのコメントが意味するのは、書き手のある特徴が過剰で病気の域であるということ、また書き手が狂気にとらわれており、信頼できない人物であるということです。
誰にでも愛想がいいのは、承認欲求が強すぎるから。更新を続けるのは粘着質だから。自己開示度が高いのは自己顕示欲が強いから。コメントが承認制なのは支配欲が強いから。そのほか自分に気に入らない点はなんでも書き手の病的な精神性のあらわれと書くのが誹謗中傷の流行りです。
こうしたコメントは精神病の知識が不十分だというのも特徴です。よくあるのがうつ状態とうつ病の区別、精神疾患と非定型発達の区別がついていないこと。中途半端で不正確な知識に基づいた考察をしたがる人もいますが、どこから突っ込んでいいかわからない話にいわれた側は戸惑うしかありません。ちょっとしたことで虐待、トラウマと大騒ぎをしたり、書き手の家族に不自然な同情を寄せる人もよくいます。
メンタルヘルスを略してメンヘルと呼ぶこと、メンタルヘルスを受けている人をメンヘラと呼ぶことが定着してどのくらい経ったでしょう。風邪を引いて病院にいくことを揶揄する人はいないと思いますが、精神衛生を整えることを揶揄する点でいまだ戦後を脱していない人は大勢います。こういう人は自分自身に問題を感じることはないのかもしれませんが、精神疾患を忌み嫌い、侮蔑語として精神疾患だと赤の他人に公然と言い募ることを止められない自分の精神状態は、少し疑ってかかった方がいいのではないかと思います。
書き手の精神状態を露骨に疑うことで書き手を傷つけること、そして読み手に書き手の信頼を失わせること。そのために時間を割いてコメントをつけにいくこと。そこで精神疾患や非定型発達を侮蔑語として使うこと。どれも最悪です。
はてなブックマークの仕組みの問題
こうした陰湿な誹謗中傷が絶えないのは、はてなブックマークの仕組みの問題もあると思います。書き手はブックマークコメントを全面的に非表示にすることはできますが、表示するコメントを選択することはできません。悪意あるコメント、攻撃的なコメントを見たほかのユーザーはそのコメントに異を唱えることが難しく、論争になってもブクマタワーの形で表示されるので、どのような応酬があったのか外部から見えづらい。
エントリーそのものが物議を醸す内容であったり、誹謗中傷を含む攻撃的なものであったりする場合、ブックマークコメントが荒れるのはある程度理解できます。けれども個人の子育て絵日記のエントリーにこれほど長期間、判で押したような嫌味や悪口が続くような事態は異様です。ちょっと安易な流れに乗っかりすぎなんじゃないのかと思います。
書籍化されたブログやブロガーについてあれこれいう人はこれまでもいたし、これからもいると思います。読んだものにどんな感想を持つかは個人の自由です。けれども上記の三つは感想というより形骸化されたうっぷん晴らしになっているとわたしは思います。そのテンプレに沿って書けばどんなエントリーにもケチをつけられる。でも便利だからこそ、それにはまるとそれ以外の見方ができなくなる。
かつては意外な発想や独特の文章で楽しませてくれたブログやブックマークコメントの書き手が、特定の人を中傷したり、他人の人生が自分のエンターテイメントとして楽しめないと文句をいったりするのを見るのは残念です。
もちろんそうしたテンプレ攻撃に疲弊してはてなを去っていく人を見るのも。
*1:個人的には新しくはてなにやってきた人同志がブックマークでコメントしあうことと、古参と呼ばれるはてなブロガー、ダイアラーのエントリーに毎回似たようなメンバーのブックマークコメントが並ぶことのとどこが違うのかわかりません。長年はてなで書いてきた人につく、よく知られたブックマーカーのブックマークは信頼でき、ニューカマーにつく未知のブックマークは信頼できないというのは趣味の問題でしかないのではないでしょうか。
*2:ブックマークをつける仕事があるそうですが、本文とまったく関係ないブックマークが続けざまにつくことがあります。確かにあれは不気味です。ここでいうのは書き手が個人として見えるはてなユーザーのことです。