■プロモーション担当の渋谷さん
『ゼーガペインADP』のプロモーションは、サンライズのライツ営業部の渋谷誠さんがメイン担当。優れた作品を多くの人に知ってもらうためにはプロモーションは必須ですし、近年多く開催されるイベントは作品世界の一部として非常に重要なものになっています。
多くのスタッフによって『ゼーガ』プロモーションは展開されています。ゼーガイベントの司会でおなじみ、バンダイビジュアルの廣岡祐次さんも、もちろん担当のお一人。特にVRイベントでは渋谷さんと廣岡さんのお二人が中心となって、みんなで面白くしていこうという雰囲気になっています。渋谷さんも、かなり前からゼーガ担当なんですよね?
「ライツ営業部は既存作品を扱う部署ですから、いつからということはないんですが、TV放送後に『ゼーガペイン』やりますと手を挙げて、メイン担当になりました。ゼーガ10周年は数年前から意識し始めましたね。毎年サンライズフェスティバルで劇場上映もしていましたし」
©サンライズ・プロジェクトゼーガ
ゼーガのデザインディレクターであるハタイケ・ヒロユキさんも、渋谷さんの敏腕ぶりには一目を置いています。ぼくも現場取材では渋谷さんに何かと手配をお願いしており、渋谷さんが駆るシャア専用の真っ赤な社用車に乗せていただいたこともありました。そんな渋谷さん、入社時点ではサンライズに補欠合格だったという噂を聞いたんですが。
「書類選考で『残念ながら』という連絡が来て、これはおかしい、どういうことなんだと思って、電話してみたんですよ。そうしたら『じゃあ明日運転試験があるから来るか?』となって、強引に入り込みました」
■『星界の紋章』と『ゼーガペイン』
渋谷さんは入社して初めての作品『DTエイトロン』の制作進行になり、翌1999年には『星界の紋章』を担当することに。以降、『星界の断章』『星界の戦旗』と、『星界』シリーズに関わることになります。『星界』ヒロインのラフィールを演じたのは、その後『ゼーガペイン』のダブルヒロインであるミサキ・シズノを演じることになる川澄綾子さんです。
原作である森岡浩之さん著の『星界』シリーズは、1996年からスタートしたスペースオペラ。人間の少年であるジントと、遺伝子を自ら組み替え続ける種族であるアーブの姫ラフィールを中心として、寿命が大きく異なる二人の運命と宇宙の支配権を巡る戦争の行方が描かれます。
『星界の戦旗Ⅴ ―宿命の調べ―』(ハヤカワ文庫JA)
それから渋谷さんはライツ営業部へ異動。『アルジェントソーマ』『スチームボーイ』『装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ』などの広報を担当し、現在は既存作品商品化窓口担当として『ゼーガペイン』のプロモーション担当に。ぼくは渋谷さんが関わっていた『星界』シリーズのファンで、今や『ゼーガ』スタッフとして、こうしてハヤカワSFマガジンcakes版でサンライズ現場レポートを連載しています。渋谷さんには連載の準備段階からお世話になっていて、十七年前からの運命のようなものを感じてしまいます。
■プロモーションの真髄
さて、『ゼーガペインADP』は10月15日劇場公開。そこに向けて様々なプロモーションが行われています。公式ホームページやtwitterでの告知はもちろん、ゼーガの舞台である舞浜で行われたファンイベント、ゼーガにとって重要な日付である8月31日に行われたTVシリーズの劇場上映など、様々なメディアで情報が発信されています。
「どうすればファンがよろこんでくれるのか、どうすればみんなが一番楽しくなるか、を考えます。そうすると、どういうタイミングでどういう情報を見せていくかは自ずと決まってきます」
ぼくがSF考証をしていることや、9月30日から小説『エンタングル:ガール 舞浜南高校映画研究部』を連載開始するということは、渋谷さんとタイミングを相談しながら情報公開をしていったのでした。
「ハタイケさんが連れてきた高島さんという謎の大型新人をVRイベントなどで紹介しながら、『ADP』のSF考証をしているということをみんなに知ってもらっていったんです。そして映画公開2週間前の9月30日には『エンタングル:ガール』のウェブ連載が始まると」
©サンライズ・プロジェクトゼーガ
『エンタングル:ガール』は、『ゼーガ』のヒロインであるカミナギ・リョーコを主人公とした青春群像劇です。ゼーガファンにはもちろん、ゼーガ未体験でも楽しめる作品にしていきますので、本連載ともどもよろしくお願いします。
■ゼーガ的プロモーション
ゼーガで世界初のVRアニメイベントをするなど、サンライズのプロモーションは現時点で業界最先端と言えるでしょう。しかし基本にあるのは「みんなに喜んでもらいたい、楽しんでもらいたい」という現場の共通認識です。
ゼーガであれば、ゼーガらしいSF的楽しさがあって、たとえば単にわかりやすいものにはせず、考えてもらえるような謎の要素を埋め込んだりしているわけです。こういう発想は、企画段階からプロモーションに至るまで、作品作りの全プロセスにおいて、ぼくも含めたゼーガチーム全員で共有されています。だからこそ、シナリオ中のセリフにも、映像にも、チラシの言葉一つにも、不思議さを楽しむゼーガらしさが練り込まれていくことになるのです。
■夜の舞浜にて
『エンタングル:ガール 舞浜南高校映画研究部』もまたゼーガ世界の一部。初稿から下田監督、ハタイケさん、そして渋谷さんにも読んでいただいており、アニメと同様にスタッフみんなで作っていく感じは新鮮です。TVシリーズのときロケハンが行われた舞浜には、ぼくも何度も足を運んでいます。
「その小説、アタクシは出るのかナ?」
©サンライズ・プロジェクトゼーガ カット;meta-a
今日は夜の舞浜に取材しに来たんですが、どうやら彼女はどこにでも出現できるみたいです。
「執筆支援AIとしては、アタクシを出したほうが面白くなりそうだとアドバイスします」
「出てくれるんだったらむしろこちらからお願いするよ」
「うん。いいでしょう。それで次回ですが、VRや現実空間でのイベントについて書いてみましょう。写真もたくさんあるのできっとみんな楽しんでくれるはずなんだナ」
(次回へ続く)