告白の仕方なんてどうでもいい。答えは前日には決まってる

好きな人に「付き合ってください」と告白するとき、どこでどんなタイミングで言おうか悩む人は多いと思います。でも、下田美咲さんは、そんな悩みはポイントがずれている、と断言します。それはなぜなのでしょうか? 10代の頃から身体をはって愛と契について研究してきた下田美咲さんが、男性に対して「一目置いた」「惚れた」と感じたエピソードを中心に、下田さんのユニークな持論を展開していく本連載。今回のテーマは「告白」です。

告白をする時に、いつ、何で、どのタイミングで、告白をすればいいのか、と悩む人は多い。そうして告白をして、振られた場合に、「電話じゃなくて、会って言うべきだった」とか「LINEで言ったのがまずかった」などと、告白の手段や状況のチョイスについて後悔している人も、わりとよく見かける。

何を言ってるんだろう、と思う。どう考えてもポイントはそこではない。

好きな人なら、いつどこで告白されてもOK

告白の仕方なんかで、結果は変わらない。変わるわけがない、と思う。

普通に、冷静に、自分のこととして考えてみればわかると思うのだけど、好きな人から「好きです」と言われたら、それがLINEであれ、電話であれ、手紙であれ、電報であれ、絶対に嬉しいし、好きな人から「付き合ってください」と言われたら、そんなのいつどこで言われても「OK」に決まっている。

そもそも、好きな人からそんな夢みたいな報告と提案をされたら、相当、舞い上がる。その方法やシチュエーションなど把握できないほど舞い上がる。「そんな大事なこと、LINEなんかで言わないでよ」とは思わない。

好きな人からの「好きです」とか「大好き」とか「愛してる」は、顔を見て言われても嬉しいけれど、LINEで言われるのも、すごく嬉しい。スクショして保管するし、眺めるとニヤける。全然「LINEなんか」って感じではない。

好きな人から告白をされて、手段がどうとか場所がどうとか台詞がどうというような、設定が理由で「ダメ」と言い出す可能性なんて、どう我が身を振り返ってもありえないだろうと思う。

私は朝方の布団で、たぶん今日告白をする気ではなかったんだろうけど今この人うっかり口から出ちゃった感じだよねっていうような告白を受けて付き合ったこともあるし、ロマンチックな夜景が見えるところでコレきっと凄くいろいろと考えて用意したんだろうなーというシチュエーションと長めの台詞で告白をされて断ったこともある。

「イエス」「ノー」はとっくに決まってる

大前提として、告白というのは、どう考えても、その時点での交渉ではない。

告白を受けた側は、その告白によって心を動かされたり、告白に対しての評価で「うーん、じゃあ、そうだな……今回の告白は総合的によくできていたから、よし、OK!」などと、その場で答えを出しているわけではない。

もうすでに「あなたならOK」と思っている所に「どうですか?」という確認としての「好きです、付き合ってください」が来て、心の中でスタンバイしてあった「OK」をそのまま渡しているだけだ。告白に対する「イエス」や「ノー」というのは、現場で生まれているわけではない。前日から、とっくに決まっている。

だから、すでに水面下で両想いになっている状況のみでしか「OK」はもらえない。「LINEで言ったのが、まずかったのかな」というのは、随分とピンぼけした反省で、問題のすり替えにも程があって「いや、そこじゃなくて、相手があなたのことを好きじゃないから付き合うのが無理なだけでしょ」としか言いようがない。

良くも悪くも、告白のやり方は決め手になどなり得ないから、そこに対して悩むのは無意味だし、両想いならどれだけチキンな方法を選んでも別にイケるから安心して好きな手段で告白に臨んでほしい。

なので当然、私は好きじゃない人から告白をされても付き合わない。

さらに言うと、好きな人であっても「付き合いたいほど好きではない」場合も、付き合わない。

付き合いたいほど好きではない、というのは、言い方を変えると、好き(だけど付き合いたくはない)、ということなのだけど、私にとってこの感情の位置づけは少し込み入っていて、決して、好きの度合いがショボいというわけではない。そうではなくて、私にとって、付き合うというのはハードルが尋常じゃなく高い行為なのだ。付き合うには、かなりの責任感と覚悟がいる。

好きだけど付き合いたくない理由

だって、付き合うということは、ただの両想いとは訳が違う。お互いを彼氏彼女に認定する、ということは、一緒にいない時間の過ごし方も全部、お互いに影響するようになる。その人に対してヒドいことを言ったりしたりしなくても、他の人としたことが、その人を傷つけたりする。それは、カップル独特の現象だ。その人に対して「嫌い!」と言わなくても、他の人に言った「好き♡」が、その人を傷つける。その人からのキスを拒まなくても、他の人としたキスがその人を傷つける。

「付き合いましょう」と口約束をした途端に、他の場所での他の人との過ごし方が影響してしまうようになるから、付き合うってことを、私は軽はずみに決められない。

付き合うというのは、自分の一挙一動でその人を傷つける可能性を背負うことだし、傷つけないようにアレもコレもしない人生を選ばないといけない立場になるということだ。

なので、定期的に会って性行為をしたいくらい好き、なんだけど、もうこの先の可能性は君の一択でいいやと思えるほど格別な存在ではない、という時に、好き(だけど付き合いたくはない)、という気持ちとなる。

そんな時は、なるべく告白をされないように配慮する。そういう空気になりかけたら話題を変え、そういうことを言いかけていたら唇を塞ぎ、寝たふりや酔ったふりや死んだふりや、仕事の状況的に今は交際をすることが難しいふりや、付き合わない主義のふりや、いろんなふりをする。

告白をされてしまうと、白黒つけなきゃいけなくなるけれど、悲しい現実を突きつける行為が私は苦手なので、グレーにしておける立ち振る舞いを心がける。

それに、今はまだ付き合いたいほど好きとは思えていないけれど、そのうちそう思える場合があるかもしれない。何も今、白黒ハッキリさせて、あえて悲しい顔をさせる必要がないし、私は人の悲しそうな顔を見るのが苦手だ。

そんな私が、一度だけ、付き合う気がなかったのに、告白によって気持ちが動かされ、まさかの告白のやり方こそが決め手となり付き合ったことがある。

すごいアイディアで告白してきた彼

その彼とは、その数ヶ月前から、定期的に会っては性行為をしていて、ほとんど付き合っているようなものだったのだけれども、私としては付き合うことは避けたかったため「ねえ、付き合いたい」と言い出されるたび、唇を塞いでごまかしていた(「付き合いたい」ってもうそれ告白じゃん、と思う人もいるかもしれないけれど、その彼は私が告白をしづらい空気をつくっても、その空気をぶち壊してでもぶっ込んでくる勇者で、それが日常茶飯事だったから、彼の「ねぇ、付き合いたい」は、白黒つけずに笑ってごまかすことができる範囲内だった)。

そんなある日、彼が、2通の手紙を手渡してきた。封筒には①と②という番号が振られていた。この順番で読んでね、とのこと。

①を読むと、彼の気持ちが綴られていた。びっしり3枚(それもワープロ文字で)に及んでいた。

そして②の封筒を開けた。入っている紙は一枚だけだった。開くとそこには、たった2行でこう書かれていた。


結婚を前提にお付き合いしてください。

□YES  □NO


まさかのチェックシート方式だった。

これ、どんな想いで渡してくれたんだろう、と思った。NOで返ってくる怖さを考えていないはずはない。すごくリスキーな告白だ。

面と向かって「付き合ってください」と言われたら「はい」ではなかった。でも、このチェックシートにチェックを付けて返さざるを得ないとなると……

「□NO」ではないんだよなぁ……。

(ちなみに「結婚を前提」という言葉に惹かれたわけではない。なぜかと言うと、私はこの当時、若い男の子たちに好かれることがすごく大事な立場で仕事をしていて、とても結婚できるような状況ではなかったし、この彼も20歳になりたてのフリーターで、結婚が現実的なプロフィールの人物ではなく、彼が発する「結婚」=あまりにも「いつか」「もしも」の話という認識だったので。
この告白をガチで婚約としての拘束力があるプロポーズとして受け取っていたら、私はさらに慎重になる必要があり、逆にまた「はい」のハードルが上がっていたけれど「そのくらい好きってことね!振り切った告白だね!」という受け取り方だったので、そこのプレッシャーは皆無であり、つまり「結婚」については真に受けていなかった。)

ていうか、このチェックシートを作ることをよく思いついたな、これ彼の実家のあのリビングの家族共有のパソコンで夜な夜な一人で印刷したのかな可愛いな、すごいアイディアで勝負かけてきたな、面白いな、才能出してきたな、プレゼンうまいな、この人と付き合ったら、普通の男の人の複数人と遊ぶよりもいろんな思い出ができそうだな。

この先の可能性は、彼の一択で十分、面白いのかもしれない。

私は「YES」の方の「□」に♡を付けて、彼に戻していたのだった。


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下田美咲の口説き方

下田美咲

下田美咲さんという女性をご存じでしょうか。13歳からモデルをしながらも事務所には所属せず、自宅の車を宣伝カーに改造してゲリラパフォーマンスを行ったり、「飲み会コール動画」などのオリジナル動画を180本以上手がけてYouTubeにアップ...もっと読む

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コメント

girliennes これすごく面白かった。『告白に対する「イエス」や「ノー」というのは、現場で生まれているわけではない』『 13分前 replyretweetfavorite

itotto0205 気持ちが決まっているときはそうなんだけど、どちらにも転ぶ可能性があるボーダーラインの関係だとタイミングや場所や方法は重要って言ういたって普通の話。最後のは書かないほうがおもしろかったと思う。 17分前 replyretweetfavorite

Echuiriel https://t.co/cL5m31ggXt すべてに通じる真理である気がする。 約1時間前 replyretweetfavorite