鈴木敏夫が明かす「宮崎駿と高畑勲の不思議な関係」とナウシカの幻の戦闘シーン
スタジオジブリのプロデューサーとして映画監督・宮崎駿、高畑勲と長きを共にしてきた鈴木敏夫さん。そんな鈴木さんが『手塚治虫文化賞20周年記念MOOK マンガのDNA―マンガの神様の意思を継ぐ者たち―』で、宮崎監督と、その師・高畑監督について語ってくれた。今回は特別にその一部を公開する。
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アニメーション制作で宮崎監督が強く影響を受けたのは、やはり高畑勲監督だ。スタジオジブリを立ち上げる前から現在まで約50年、その背中を追い続けてきた。
「宮さんって、実はしめきりをすごくきちんと守る人なんですよ。『ナウシカ』を連載していた時も、遅れたことは一度もない。それは、高畑さんの影響なんです」
「僕が出会う前、若い時に二人は組んで『太陽の王子ホルスの大冒険』っていうアニメーションを作ったんですけど、高畑さんは1年で完成させる予定を3年まで延ばした(笑)。会社と大喧嘩して、できないなら制作中断だ、って言われた時に、宮さんは泣いちゃったそうなんです」
「でも、高畑さんは『ここまで作ったんだから、絶対また再開するよ』って平気な顔で。宮さんは『この人は一体なんなんだ』って思ったそうです。その時にね、もし自分にしめきりのある仕事がきたら、絶対に守ろうって決めたらしいんですよ」
クオリティを追求するために、多くの人に迷惑をかけ続ける高畑監督の姿が、宮崎監督は「怖かった」のだという。
「だから宮さんは今でも、このままでは間に合わないとわかると、締め切りを守るために、壮大なシーンを削ってしまう。『ナウシカ』だって、絵コンテでは巨神兵と王蟲が戦うシーンがあったりしたんですよ!」
「後に『エヴァンゲリオン』を作り『シン・ゴジラ』を作った庵野秀明がスタッフのひとりとして『ナウシカ』に参加していたんですが、彼はいまだに『自分が描きたかった』と口惜しそうに当時を振り返ります」
「むろん、宮さんだって好んでそうした訳じゃない。熟慮の末の決断でした。高畑さんは、そういう意味では強い人ですよねえ。クオリティを保つことを優先させられる」
今現在、宮崎監督は高畑監督のことをどう見ているのだろう。
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