信じる思いの強さ、3つのレベル
「心から信じれば、願いはかなう」
「強く思い描くと現実になる」
僕は、そんな考え方に肯定的です。世界で戦うアスリートの中にも、自分が置かれている状況以上のものを望み、そして信じ込める人が多いように思います。
ですが、信じること自体がいちばんむずかしい。
信じれば願いはかなうと思う一方で、信じるとは誰にでもできるものではないと思っています。
僕は、何かを信じる思いの強さには、3つのレベルがあると考えています。それは、低いほうから順に、
① 「そうなってほしい」
② 「そうしてみせる」
③ 「そうなることが決まっている」
①と②の下から2つのレベルは、「なりたい」と願う一方で、そうなれていない現状に対する認識が強く残っています。信じている状態というよりも、信じようとしている状態です。
なんとかしてそうしたいという力みがうかがえますし、自分にはなれないかもしれないという不安を完全にはぬぐいきれていないため、かえってパフォーマンスを落としてしまうことさえあります。
それに比べて、③「そうなることが決まっている」は、何の疑いもなく受け入れている状態です。この状態は、とても自然で、力みがありません。なぜならそうなることがわかっているからです。
心から信じれば、願いはかなうという場合の信じる強さとは、③の状態にまで至ることです。多くの人は、信じようとしている状態(①と②)のことを、信じている状態だと思い込んでいる気がします。
信じようとしている状態には、願いをかなえるほどの力はありません。
地球が丸いことを信じるのと同じくらいに、当たり前のこととして自然に思えるようになったとき、はじめて願いがかなうのではないでしょうか。
「心から信じる」ためにはどうするか
カール・ルイスを見たとき、僕は、「自分が、100メートルで世界一になることが決まっている」と信じることはできませんでした。9秒台を簡単に出してしまう人間を前にして、勝つことが決まっていると本気で信じることができなかったのです。
ハードルに転向してからも、「金メダルがほしい」「獲ってみせる」と思うことはできましたが(①と②の状態)、「金メダルを獲ることが決まっている」と信じきることまではできませんでした。頭の中で思い描いてはみるものの、浮かんでくるイメージは、白黒で、音もなく、どこかぼんやりとしていました。
フェリックス・サンチェス選手は僕にとって、距離が遠すぎたのでしょう。
ですが、銅メダルを獲っている自分は、ありありと、実感をともなって思い描くことができました。色や、音付きで、自分が銅メダリストになっていることを信じることができたのです。
僕が、銅メダルを獲ることが決まっていると信じることができたのは、それまでの経験の積み重ねがあったからです。
ハードルに転向したばかりのころは、メダリストになる自分を信じることができませんでした。
成功を望んでも無理がないと思えるまでに、日々を積み重ねてきたからこそ、心の底から信じることができたのです。