岩手の高齢者施設で9人死亡 小本川が氾濫
久慈でも女性1人死亡、北海道で1人不明
大型の台風10号は30日、岩手県に上陸した後、東北地方を縦断して日本海に抜け、31日午前0時に温帯低気圧に変わった。国土交通省によると、北海道、岩手、青森両県の8水系17河川で堤防の決壊や浸水被害が出ている。岩手県警によると、岩泉町の小本(おもと)川が氾濫し、同町乙茂地区にある高齢者グループホーム「楽(ら)ん楽(ら)ん」で入所者とみられる高齢者9人が意識不明の状態で見つかり、全員の死亡が確認された。さらに、小本川の川岸で男性1人、同町に隣接する久慈市でも女性1人の死亡が確認された。また、北海道では清水、大樹、新得各町でそれぞれ男性1人が行方不明になっている。
岩泉町によると、「楽ん楽ん」は三陸鉄道岩泉小本駅から西に約10キロ離れた集落にある。平屋建てで認知症の高齢者ら9人が入居しており、職員は隣の別の高齢者施設「ふれんどりー岩泉」(3階建て)にいたとみられる。
町は30日午前9時から避難準備情報を出していた。町内は31日午前中も土砂崩れで各地の道路が寸断されており、多くの集落から「孤立した」との救助要請が消防に寄せられている。停電も起きており、電話が通じにくい状態という。国交省などによると、同日午前5時現在、町内で約2000人が孤立しているとみられ、ヘリコプターで順次、病院などに搬送している。
台風10号通過に伴い、東北や北海道では負傷者や家屋被害も相次いでいる。毎日新聞の調べでは同日午前9時現在、秋田、宮城両県での重傷2人を含め、負傷者は6人。北海道室蘭市で住宅1棟が全壊したほか、北海道、秋田、福島県などで建物計29棟が損壊した。【柳澤一男、川崎桂吾、内橋寿明】