家の中にはIoTのニーズが山のように眠っている
「北米では5年ほど前からスマートホームの市場が盛り上がっています。日本でもそれを追随する形で市場が形成されていくでしょう」
こう語るのは、イッツ・コミュニケーションズ(イッツコム)の岡田和久氏(事業開発部部長代理 インテリジェントホーム全国推進 統括責任者)。同社では、2015年2月から「インテリジェントホーム」というスマートホームサービスを開始しており、契約世帯が伸長しているという。
また、イッツコムの関連会社でスマートホーム向けのデバイス開発を手がけるコネクティッド・デザイン社(CDI社)取締役副社長CSO(最高戦略責任者)の福西佐允氏は、「日本でも家庭の中のIoTデバイスはどんどん増えていき、例えば、10年ほどしたらスマートロックが当たり前のように使われているはずです」と展望する。
IoTは今後どのように日本の暮らしを変えていくのか。両氏に話を聞きながら、その現状と今後の可能性を考えてみたい。
離れた場所から高齢者や子どもを見守り
住宅にカメラやセンサー、リモコンをつけて遠隔操作を可能にし、家をオートメーション化するスマートホーム。北米で日本に先んじて市場が活性化している背景には、北米ならではの社会事情があった。
「アメリカでは犯罪が多いことから、防犯ニーズに応える形で市場が盛り上がり始めました。CATV事業者から機械警備会社、あるいはグーグルやアップルといった大手プレイヤーなど、さまざまな企業が市場参入しています」(イッツコム・岡田氏)
では、日本ではスマートホームはどのように普及していくのだろう。岡田氏は、日本では防犯対策以上に高齢者や子どもの見守りというニーズが大きいという。
インテリジェントホームを例に、その利用場面を考えてみよう。たとえばスマートロックをつけると、常に外から鍵の開閉状況が分かる。離れて暮らす親の家のカギが夜開いていないかチェックでき、ホームヘルパーなどが訪問する際も、実際のカギを渡すのではなく、日時限定の認証鍵をスマートフォン(ガラケーにも対応)にメールで送ることで、カギの紛失といった心配もない。誰かが立ち会う負担も減る。
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また、家に設置するモーションセンサーやIPカメラもある。これらは、遠隔からより細かな監視を実現するデバイスだ。たとえばトイレ前にセンサーをつけて、トイレのドアがどのくらいの頻度で開閉しているかをチェックする。あるいは、ベッド下につけて、高齢者がベッドから転落した際にセンサーが反応するようにしておく。
そして、センサーが反応したら、決められたアドレスへメール通知を行うようセットする。さらに細かく様子を見たい場合は、居間などにIPカメラを置いておく。こうすることで、場所を問わず遠くからの見守りが可能となる。
子どもの見守りについても同様だ。ドアにセンサーをつけておいて、子どもが帰宅するとセンサーが感知。写真を自動撮影し、両親のスマートフォンに送る。これらはインテリジェントホームの一例だが、こういった使い方が考えられるという。
「必要ない」と思っている家庭にもニーズがある
さらにインテリジェントホームでは、エアコンなどの既存の家電機器を遠隔操作することも可能だ。「室温が28℃以上になったらクーラーを入れる」などのルールを設定し「家電コントローラー」から赤外線信号を出して自動的にクーラーをつけることで、高齢者やペットの熱中症対策にもなる。
「一般家庭はもちろん、民泊や貸し会議室、介護施設や保育園などでも遠隔操作が可能です。カギ開閉の管理や、介護施設での使用など、利用シーンを選ばず広がっていくのではないでしょうか」(岡田氏)
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どんな家電をスマート化できるのか、どんな利用シーンが考えられるのか。可能性は無限大と言ってよい。「最初はインテリジェントホームに興味を示さない方でも、話を聞きながら生活の心配事を追っていくと、ニーズが見つかるのです」と岡田氏。
例えば、「なんとなく夜に家の裏でガサガサ物音がする」「夕方は西日が差して、部屋が夜まで暑くなる」といった心配事に対しては、センサーやカメラを家の裏につけたり、クーラーを遠隔操作して部屋の温度を保ったりすることで対応できる。IoTは使い方次第で、生活のあらゆる場面の問題解決に役立てられるというわけだ。
デバイス間の連携に欠かせないプラットフォーム
岡田氏、福西氏がともに、これからのスマートホームの実現、普及を左右するカギとして挙げるのが、「デバイス間の連携」と「拡張性」だ。
「たとえば、外出時にカギをかけると家電コントローラーによって電気やエアコンが消え、一方で外からの侵入者を察知するセンサーなどが起動する。こういった一連の動作をスムーズに行うには、さまざまなメーカーのデバイスが共通のプラットフォーム上で連携していなければなりません」(福西氏)
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市場が成熟する中で、各種デバイスのプラットフォーム技術も確立してきた。たとえば、アメリカのiControl Networks社のプラットフォームは、アメリカの3大ケーブルテレビ局をはじめ、いくつもの事業者で採用されており、カナダやオーストラリア、にも拡大している。
イッツコムのインテリジェントホームでも、このプラットフォームを採用している。同プラットフォームは、世界各国で数多くの事業者が採用しているが、最大の特徴はやはり「拡張性」と「連携」にある。オープンなプラットフォームで、デバイスの追加や、他社デバイスを組み込んだ際の連携がしやすいという。
実際、先述の「家電コントローラー」も他社のものが使われているが、インテリジェントホームのクラウドに組み込まれているため、同じアプリ内で一括操作や連携ルールの設定ができる。政府が推進するHEMSとの連携も、理論的に可能となっている。
「オープンなプラットフォームで、いろいろなAPIやサービスがつながっていくことが、ユーザーのために大切。私たちはそう考えています」(岡田氏)
スマートホームに使われるIoTデバイスは今後続々と“新製品”が出てくるだろう。それらを既存のデバイスとどこまで連携できるか。メーカーを横断できるか。スマートホームが発展し、人々の暮らしが変わるには、この部分がポイントになるだろう。
まずは、高齢者や子ども、ペットなどの見守りとして、需要が考えられるスマートホーム。IoTの最前線を行く市場として、今後の動向に注目したい。