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滋賀国内最古級の日野駅守れ 近江鉄道が取り壊し検討
築百年を迎えた日野町の近江鉄道日野駅が生まれ変わろうとしている。老朽化した駅舎の取り壊しが検討される中、駅を「日野の宝」と位置付ける町や近隣の商店主らが、独自に改修や活性化事業を計画。町ににぎわいを呼ぶ核にしようと、駅舎再生に向けて走りだした。 日野駅は一九〇〇(明治三十三)年に開業。現駅舎は一六(大正五)年に建てられ、ほぼ当時の姿をとどめている国内最古級の現役駅舎とされる。 乗降客は一日約五百人。周囲を山に囲まれた町にとって通学、通勤、観光の玄関口として欠かせない存在だ。 駅舎解体への懸念が噴出したのは、今年三月の町議会定例会がきっかけ。近江鉄道が昨年末、老朽化を理由に駅舎取り壊しを検討する方針を示したと、町が明らかにしたためだ。 町企画振興課などによると、駅舎は雨漏りがあり、構造部分も劣化している。利用客の漸減傾向とともに外観面でも“さびれた駅”化が進んでいる。 町は四月、住民や日野まちなみ保全会、町観光協会などでつくる日野駅利用促進活性化懇話会を設置。古民家改修を手掛ける設計事務所に依頼し、現駅舎を可能な限り保存した上で、新たな機能を持たせる再生プランをまとめた。 大正モダンの雰囲気はそのままに、駅舎の損傷部分を修復。現在は開放されていない部分にコミュニティースペースを設け、カフェや物産コーナー、観光案内所などの“憩いの場”とする方針を盛り込んだ。 懇話会委員長で、近隣商店主らでつくる日野駅前通り共栄会の西塚和彦会長(58)は「駅は不特定多数の人が集まる社会的結節点。残せる部分はできる限り残し、利便性を高めて付加価値を付けたい」と強調する。
共栄会は五月、駅前で特産品販売やカフェなどのイベントを開催。レトロな駅舎を描いたステッカーを作り、今月から加盟店で「日野駅舎せんべい」も販売し始めた。路線開業日の十月一日には百周年記念イベントを開く。 町は近江鉄道と合意した上で秋に着工、本年度中に改修を終える方針。国の地方創生加速化交付金約二千万円を充てるほか、市民や鉄道ファンから出資を募るクラウドファンディングも検討する。 町の担当者は「駅舎を一度建て替えれば、百年の歴史はゼロになってしまう。乗る電車を一本遅らせてでも、駅で過ごしたくなるような駅舎にしたい」、近江鉄道の広報担当者は「行政側と協議中で、具体的なことをコメントできる段階にない」と話している。 ◆エラいところ日野駅は、二〇〇七年に放送されたテレビドラマでロケ地になった。 女優の仲間由紀恵さんが主演したその作品名は「エラいところに嫁いでしまった!」。エラいところを官民一体で再生させようという心意気があるのが、日野町のエラいところ。針路よし、あとは軌道に乗るか。 (杉浦正至) <日野駅> 1900(明治33)年開業。16(大正5)年に近江日野商人や住民が総工費の57%を出資して現在の姿に整備した。木造平屋瓦ぶきで、門柱は当時の流行を取り入れた古代ギリシャ風のエンタシス様式。国内で唯一現存するとされる車両移動機「タッグローダー」など貴重な機器も多い。日野町内池。 PR情報
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