米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は、米経済は金融当局の目標に近づいており、利上げの論拠は強まりつつあるとの認識を示した。

  議長は26日、ワイオミング州ジャクソンホールでの金融当局者やエコノミストらに向けた講演で、「労働市場の堅調さが続いていることや、経済活動とインフレに対する当局の見通しを考慮すると、フェデラルファンド(FF)金利引き上げの論拠はこの数カ月で強まったと考えられる」と述べた。

  また、米経済は完全雇用および物価安定という金融当局の目標に「近づきつつある」と指摘した。この日の講演では、利上げの具体的な時期への言及はなかった。

Stanley Fischer, Janet Yellen and William Dudley outside of the Jackson Lake Lodge in Moran, Wyoming on Aug. 26.
Stanley Fischer, Janet Yellen and William Dudley outside of the Jackson Lake Lodge in Moran, Wyoming on Aug. 26.
Photographer: David Paul Morris/Bloomberg

  BNPパリバのシニア米国エコノミスト、ローラ・ロスナー氏は「9月の利上げは確実に選択肢とされており、可能性がある」と指摘。「議長はその認識をしっかりと維持している。データと労働市場の展開を重視していると考えられることから、われわれもそこに注目するべきだ」と続けた。

  先物市場に織り込まれる9月の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ確率は約30%となっている。次回のFOMC会合は9月20ー21日に開催される。

  米労働省は9月2日に8月の雇用統計を発表する。ブルームバーグが実施した調査では、非農業部門雇用者数は18万5000人増(7月は25万5000人増)、失業率は4.8%への低下が見込まれている。

  カンザスシティー連銀の年次シンポジウムで講演したイエレン議長は、「経済成長のペースは速くはないものの、労働市場の一層の改善をもたらすのには十分だ」と語った。

  さらに「先を見通すと、FOMCは実質国内総生産(GDP)が緩やかに成長し、労働市場は一段と力強さを増し、インフレ率は今後数年間に2%に上昇すると予想している」と指摘。「こうした経済見通しに基づき、FOMCは引き続き、当局の2大責務に近い雇用とインフレを達成し維持するためFF金利を時間をかけて緩やかなペースで引き上げていくのが適切だと見込んでいる」と述べた。

  イエレン議長は金融当局の 「ツールキット」見直しについて、債券購入や長期にわたり低金利を維持する方針の確約といった金融危機時に活用した手段を強く擁護した。金融当局はそうした新たな手段を保持すべきだと明確に指摘。政策金利が景気回復時に通常見られる水準に上昇する前に次のリセッション(景気後退)が訪れる可能性があり、そうした手段が再び必要になり得るとの見解を示した。

原題:Yellen Says Rate-Hike Case ‘Strengthened in Recent Months’ (2)(抜粋)

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