会社社長ら逮捕 113億円集め、警視庁
運用実態のない投資話をもちかけて金をだまし取ったとして、警視庁生活経済課は25日、東京都世田谷区の投資会社「クエストキャピタルマネージメント」社長、松井直幸容疑者(47)=世田谷区尾山台1=ら5人を詐欺容疑などで逮捕したと発表した。独自のシステムによる資金運用をうたった「AR2」というファンドへの出資を募り、約113億円を集めたとみられ、同課が被害の実態解明を進める。
松井容疑者の逮捕容疑は、運用実態のないAR2への出資を持ちかけて、2013年2月中旬ごろから14年7月24日ごろの間、茨城県の自営業の男性(52)ら3人から計3億7000万円をだまし取ったとしている。松井容疑者は「弁護士に相談してから話します」と認否を留保しているという。
同課によると、同社は09年ごろから、「独自の取引システムを使い、ほとんどリスクはない」「毎月3%の配当がある」などとPRしてAR2の出資者を集めていた。
今年1月に同課が同社を家宅捜索するなどして捜査を進めた結果、12年8月末にシステムの開発・管理を委託していた会社が閉鎖されたがその後も勧誘を続けていたことが判明。集めた金はほとんど運用されていないことも分かった。
同課によると、同社は09年9月〜15年2月、東京や神奈川など15都府県の出資者63人から約113億7000万円を集めていた。うち約85億5000万円が詐欺でだまし取った金とみられる。
システムはコンピューターが市場動向を判断して自動で株などを売買するとされるが、捜査関係者によると、開発は始めたものの完成していなかったとみられる。松井容疑者は他に複数のファンドを設立しており、AR2で集めた金を他のファンドの出資者への配当などに充てていたという。
同社を巡っては、証券取引等監視委員会が昨年3月、「資金運用をほとんど行わず収益が発生していないのに配当金を支払っているなど、投資者保護上、重大な問題がある」とする調査結果を公表している。【斎川瞳】
「老後の蓄え全額失った」
「元本保証で必ずもうかる」。松井容疑者はAR2を含む複数のファンドを開設し、甘いうたい文句で出資を募っていた。金を集めたまま昨年春に連絡が取れなくなり、多くの人が被害を訴えていた。
東京都内の40代の男性会社員は2007年春、同社に勤務する友人の紹介で投資を始めた。AR2とは別のファンドに600万円を投資すると、約束通り配当が入金された。フェラーリなど高級外車を複数所有する松井容疑者の羽振りの良さに、運用は順調だと信じ込んだという。
14年6月に「リスクは少なく損はしない」とAR2を紹介され、800万円を投資した。しかし配当は一度もなく、問い合わせをしても松井容疑者は「少し待ってほしい」とあいまいな返事を繰り返した。やがて音信不通になり、投資を回収するめどは立っていない。
男性の紹介で、母親も老後の蓄えから1000万円以上をファンドに投じ、ほぼ全額を失った。「母の人生まで狂わせてしまったのが一番つらく、許せない。お金を返してほしい」【斎川瞳】