入社試験の選考でも導入
入社試験での書類選考を人間の代わりに行う人工知能(AI)をNECが開発し、人材紹介会社など3社程度が導入したことが24日、分かった。過去に採用した社員の履歴書などをAIが学習し、企業が求める人材の傾向を分析、合致する志望者を選び出す仕組み。人事担当者の好みといったあいまいな採用基準を排除し、公正に評価する狙いがある。人事評価用のAIを開発する企業もあり、採用や人事の現場にAIの活用が広がってきた。
NECのシステムは昨年12月に開発。過去に入社試験を受けた約2000人分の履歴書データと合否結果があれば、その企業がどんな人材を採用してきたかをAIが学習する。AIはこれらのデータをもとに、入社志望者の履歴書の記載内容を分析し、採用方針に合致する人材を選び出す。
既に人材紹介会社が顧客企業と求職者をマッチングするために使うなど導入が始まっている。今後の改良で学習の精度が高まれば、AIによる採用候補者の絞り込みが一段と進み、事実上の1次面接までAIが担うことも可能になる。NECは「客観的な判断ができる点をアピールし、来年度中にさらに10社程度での導入を目指す」と話す。
ただ、志望者が採用に有利になりそうな虚偽の内容を履歴書に書いても、現時点でAIがそれを見抜くのは難しい。NECは「最終的には人間による面接が必要」と説明する。
一方、IT大手の日本オラクルは来年度から、AIが人事異動について助言するシステムの開発に乗り出す。社員の経歴や勤務実績などのデータを基に、最適な部署や役職を判定する。人材紹介のビズリーチ(東京都)も来年から、AIが人事評価をするシステムを販売。2019年6月までに2000社以上の導入を目指す。
採用や人事でのAIの活用は「感情を挟まずに評価できる」(ビズリーチ)利点があるが、千葉商科大の常見陽平専任講師(労働社会学)は「頼り過ぎると画一的な人材が増え、組織に多様性がなくなる可能性がある。最後は人間の目で評価すべきだ」と指摘する。【小川祐希】